【鍼灸EBM】麦粒腫

2017年2月コクラン・システマティックレビュー
Acupuncture for acute hordeolum.
「急性麦粒腫の鍼」
Cheng K et al.
Cochrane Database Syst Rev. 2017 Feb 9;2:CD011075. doi: 10.1002/14651858.CD011075.pub2.

以下、引用。

【著者の結論】
低確度の証拠により、従来の単独治療と比較して鍼および鍼と従来の併用治療は急性麦粒腫に短期的な効果をもたらすかもしれない。

証拠のレベルは『低い』あるいは『非常に低い』です。

わたしの経験からの実感としては、麦粒腫に対しては合谷の知熱灸の多壮灸で十分効果があります。

麦粒腫は中医学古典で針眼(しんがん) 、土疳(どかん)、土瘍(どよう)、愉針(ゆしん)として論じられています。

隋代、『諸病源候論』では針眼と呼び、熱証とみなしています。

人有眼內眥頭忽結成皰,三五日間便生膿汁,世呼為偷針。此由熱氣客在眥間,熱搏於津液所成。但其熱勢輕者,故止小小結聚,汁潰熱歇乃瘥。

明代、『証治准縄』では土疳と呼び、辛熱燥、風邪を病因として太陽経結熱であると論じています。鍼灸では麦粒腫に対して背中の膀胱経を挑刺する方法がありますが、これは太陽経の熱をとる方法だと思います。

《证治准绳·杂病》目疮疡【土疳证】谓睥上生毒,俗呼偷针眼是也。有一目生又一目者,有止生一目者,有邪微不出脓血而愈者,有犯触辛热燥腻、风沙烟火,为漏为吊败者,有窍未实,因风乘虚而入,头脑俱肿,目亦赤痛者。其病不一,当随宜治之。巢氏曰∶凡眼内 头忽结成 ,三五日间便生脓汁,世呼为偷针。此由热气客在 间,热搏于津液所成。但其势轻者,小小结聚,汁溃热歇乃瘥。谨按世传眼 初生小 ,视其背上即有细红点如疮,以针刺破,眼时即瘥,故名偷针,实解太阳经结热也。人每试之有验。然巢氏但具所因,而不更分经络,其诸名实所过者多矣。

清代、『目経大成』では愉針、土瘍都呼び、血瘀が痰火を生むという病因を論じています。

土疡俗号包珍珠,血瘀生痰火剥肤。莫谓疾微无用治,到成溃漏费神机。此症世又呼偷针眼,生外睑弦上,初得但痒而肿,次则结一小核,乃作痛,屡屡不药自消。若病形俱实,必至核大溃脓始愈。有一核溃,一核又结,一日罢,一日又起,乃窍虚外风袭入,头面悉肿,目亦赤痛。如再犯燥烈,决为腐漏吊败,改形换相者。些须小恙,而祸害一至于此,患者幸毋忽。始以泻黄散、竹叶石膏汤,次归芍六君、金水六君。若目赤痛,面微肿,亟进清胃散、二术胜湿汤,或于疡顶上重砭一针,血出气泄,万万不致溃腐。

現代中医学では、風邪、熱毒熾盛、脾胃湿熱などが病因とされています。

[病因病机]
素体虚弱,或有不良卫生习惯者,常易罹病。亦有因风热外袭,或热毒炽盛,或脾虚湿热上攻于目,热毒塞阻于胞睑而发本病者。
1.风热外袭 风为阳邪,热后火性,风热之邪客于胞睑,火烁津液,变生疖肿。
2.热毒炽盛 过食辛辣炙烤之物,脾胃积热,或心肝之火循经上炎,热毒结聚于胞睑,营卫失调,局部酿脓。
3.脾虚湿热 脾气虚弱,健运无权,湿浊化热,气血不和,反复为患。

【辩证治疗】
1.风热外袭
症状和体征 针眼初起,痒痛微作,局部硬结微红肿,触痛明显,或伴有头痛发热、全身不适,苔薄黄,脉浮数。
征候分析 风热之邪客于胞脸,气血变阻,故胞睑红肿痒痛、生小硬结。所见全身症状及舌苦、脉象,均为风热袭表之象。
治法疏风 清热,调和营卫。以手阳明大肠经、手少阳三焦经穴为主。
处方 合谷 天井 风池 少泽
随证配穴 头痛重者,加太阳。麦粒肿若在上睑内毗部,加睛明、攒竹;在外毗部加瞳子(骨谬)、丝竹空;在两毗之间,加鱼腰;在下睑者加承泣、四白。
刺灸方法 针用泻法。少泽可点刺出血。
方义 合谷疏风清热,调和营卫。天井通达三焦气机,以助解表清热。配风池流风解表,以治目疾。刺少泽出血,可清热解毒。

2.热毒炽盛
症状和体征 胞睑红肿,硬结较大,灼热疼痛,有黄白色脓点,或见白睛壅肿、口渴喜饮、便秘渡赤,舌红,苔黄或腻,脉数。
证候分析 心、肝、脾胃积热,上攻手胞睑,阻滞脉络,故现局部红肿掀痛,进而可腐熟酿脓。白睛壅肿,系火乘其肺。内蕴热毒,故见口渴喜饮、便秘溲赤、舌红苦黄、脉数等。
治法 清热解毒,消肿止痛。以手阳明大肠经、足阳明胃经穴为主。
处方 曲池 内庭 行间 支沟 少泽
随证配穴 根据患病部位,其配穴参照本病“风热外袭”型。伴有发热者,加大椎。
刺灸方法 针用泻法。少冲点刺出血。
方义 取手阳明经合穴曲池,足阳明经荣穴内庭,足厥阴经荣穴行间,旨在泻热解毒。支沟通腑祛实以泻胃肠实热。刺少冲出租,以泻心火。

3.脾虚湿热
症状和体征 麦粒肿反复发作,但症状不重,多见于儿童,面色少华,好偏食,腹胀便结,舌红,苔薄黄,脉细数。
证候分析 宿患麦粒肿,余邪内伏,或脾虚生湿,湿法化热,不时上攻胞睑,阻滞脉络,故麦粒肿屡发。脾失健运,化源不足,故面色少华。偏食积滞,则腹胀便结。舌红、苦费、脉细数,皆为阵虚湿热之象。
治法 健脾利湿,清热解毒。以足太阳牌经、足阳明胃经穴为主。
处方 阴陵泉 曲池 足三里 大横
随证配穴 兼有腹胀、府征者,加四缝。
刺灸方法 针用补泻兼施法。足三里施以补法,余穴施以泻法。四缝用三棱针点刺,挤出粘液或血水。
方义 阴陵泉、足三里为足太阳、足阳明经合穴,健运脾胃而利湿。泻曲池清热解毒。大横调脾胃治疗大便秘结。

しかし、これらの弁証論治では合谷の多壮灸の知熱灸で麦粒腫が治るという機序を説明できません。灸の臨床的現実から考えると、中医学鍼灸の理論には大穴があいていると感じます。
これは関西中医鍼灸研究会でも発表しました。

麦粒腫は、合谷の知熱灸や透熱灸の多壮灸で劇的に改善します。
麦粒腫は実熱証であり、熱証可灸です。

また、ノロウイルス感染症による下痢・腹痛も実熱証ですが、裏内庭の透熱灸で劇的に改善します。

これは陽明経の通経絡で説明できます。

灸は八綱弁証の理論とあわないのです。
確かに高血圧の赤ら顔の人にお灸はあわないなどの事例はありますが、少なくとも急性感染症の実熱証にお灸はたいへん効果があります。

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