肩こりのツボの解剖学的研究

2015年6月5日、東海大学
Multi-Acupuncture Point Injections and Their Anatomical Study in Relation to Neck and Shoulder Pain Syndrome (So-Called Katakori) in Japan
「日本の頸肩痛症候群(いわゆる肩こり)と関連した複数のツボの解剖学的研究」
PLoS One. 2015; 10(6): e0129006.
Published online 2015 Jun 5. doi: 10.1371/journal.pone.0129006

これはペインクリニックの医師たちが行っている「経穴ブロック注射」の研究です。
間中喜雄先生のご子息、間中信也先生は天柱穴のツボ・ブロック注射で頭痛の名医として知られています。

■間中信也 「頭痛診療ツールとしての鍼灸技法の応用」『臨床神経学』Vol. 52 (2012) No. 11 p. 1299-1302

もともと大阪医大ペインクリニックの兵頭正義先生が麻酔薬による天柱ブロック注射、肩こりへの肩井ブロック注射、肩外兪ブロック注射、膏肓ブロック注射、翳風ブロック、天牖ブロック、扶突ブロック、天鼎ブロックを開発されていました。
東洋医学のツボに西洋医学の麻酔薬を注射する治療法で中国や韓国にもあります。

兵頭正義 「ツボの概念を利用した痛みの治療」『日本良導絡自律神経学会雑誌』Vol. 36 (1991) No. 8 P 190-194

この実験では、ご遺体の以下の肩こりのツボに注射器でインキを入れて着色をみました。

風池(ふうち:GB20)
肩井(けんせい:GB21)
巨骨(ここつ:LI16)
肩外兪(けんがいゆ:SI14)
膏肓(こうこう:BL43)

風池は僧帽筋ではインキが確認できず、頭半棘筋でインキがみられ、最も濃かったのは大後頭直筋と小後頭直筋でした。

肩井は僧帽筋ではインキが確認できず、肩甲挙筋と棘上筋の深部の筋膜でインキが確認できました。

巨骨は僧帽筋ではインキが確認できず、棘上筋の深部筋膜でインキが確認できました。

肩外兪は僧帽筋ではインキが確認できず、小菱形筋でインキが確認できました。

膏肓は僧帽筋ではインキが確認できず、大菱形筋でインキが確認できました。

これらはいずれも頸神経叢の後枝と関連しています。

以下、引用。

天柱、肩井、巨骨、肩外兪、膏肓のツボは、いずれも脊髄神経ではC1-C6の頸髄神経の前枝または後枝に含まれることを示した。

これはデルマトームから考えると興味深いです。
デルマトームではC1-C6は肩こりの部分になります。

この論文ではトリガーポイントと筋筋膜性疼痛症候群という考え方を採用せずに、麻酔薬のツボ治療の考え方で研究をされています。
麻酔薬が浸潤しているのは僧帽筋よりも深部の筋膜です。
これは肩こりを治療する際の鍼の深さについて参考になります。

私自身は円皮鍼や長鍼による横刺など皮膚の刺激も使いますが、深部まで刺さないと効果がない場合も経験します。非常に考えさせられる研究です。

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