恐れと驚き

東洋医学では「五志」の理論があります。

五つの感情である「怒」「喜」「思」「憂」「恐」は『黄帝内経素問』の陰陽応象大論篇第五では、
「怒りは肝を傷つける(怒伤肝)」、
「喜びは心を傷つける(喜伤心)」、
「思い過ぎると脾を傷つける(思伤脾)」、
「憂いは肺を傷つける(忧伤肺)」、
「恐れは腎を傷つける(恐伤肾)」
とあります。

思い過ぎると消化器(脾胃)を傷つけ、ストレス性胃潰瘍になります。
憂いは免疫力を弱めます。
子どもは東洋医学の腎が弱いですが、恐い話をするとオネショをします。

東洋医学では感情が病気を引き起こすと考えています。「七情」です。

『黄帝内経素問・挙痛論篇』では「怒れば気が上がる」とあり、怒ると肝陽上亢から頭痛などが出ます。

「喜べば、気が緩む」とあり、喜べば気血はなめらかに流れます。痛みを笑いでとる「笑い療法」もあります。

「思えば気は結ぼれる」と言います。思い詰めると、胸に気が詰まって溜息となり、気詰まりになります。お腹で詰まる気滞ではストレスで胃が詰まって痛くなります。

「悲しめば気は消える」とあります。奥さんを亡くした旦那さんは免疫力が落ちる気虚となり、病気になります。

「恐れると気は下がる」「驚けば気乱れる」とあり、第一次世界大戦ではシェルショックと言って塹壕の近くに砲弾が落ちると気が下がって顔面蒼白となり、身体がブルブルと震える「気が乱れる」状態となりました。

また、心胆気虚(しんたんききょ)と呼ばれる状態になると、驚きやすく、恐怖しやすい状態になります。

恐れや驚きの感情は五臓の腎臓を傷つけ、腎が納気できなくなり、奔豚気(ほんとんき)となります。恐ろしかったことを思い出すと、何かがお腹から突き上がって来て胸に達すると心臓がドキドキして、ノドに詰まると窒息しそうに感じる梅核気(ばいかくき)となります。

『難経』では腎の積聚を「奔豚」と呼びました。衝脈気逆証であり、公孫ー内関など衝脈の治療が著効する場合があります。

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