Erectile Dysfunction(勃起障害)

2016年1月17日 中国、北京中医薬大学の研究
「EDの鍼:システマティックレビュー」
Acupuncture for Erectile Dysfunction: A Systematic Review.
Cui X,et al.
Biomed Res Int. 2016;2016:2171923.
Epub 2016 Jan 17.

以下、引用。

【結論】
現在の利用できる証拠から鍼は単独では勃起障害(ED)を改善するかは不十分であり、鍼の特異的効果は以前の研究では証明するのに失敗している。未来においてはよりデザインされ、厳格で、サンプルサイズの大きなランダム化比較試験が必要である。

臨床家は自信をもってEDの鍼治療を行っていますが、エビデンスはまだ不十分なようです。
現状では3つのランダム化比較試験があり、2003年のオーストリアの研究者エンゲルハートによるものが最良です。

「心因性勃起不全の鍼治療:最初のプラセボ対照前向きランダム化比較研究の結果」
Acupuncture in the treatment of psychogenic erectile dysfunction: first results of a prospective randomized placebo-controlled study.
Engelhardt PF
Int J Impot Res. 2003 Oct;15(5):343-6.

鍼はプラセボ群と比較して顕著な効果を示しました。
使用した経穴はN6、N27、KG4、KG6、LG4、MP6、B23とWHO表記ではなく、ドイツ語ツボ表記です。
N6は照海(KI6)、N27は兪府(KI27)、KG4は関元(CV4)、KG6は気海(CV6)、LG4は命門(GV4)、MP6は三陰交(SP6)、B23は腎兪(BL23)。
全体の配穴として照海、兪府、関元、気海、命門、三陰交、腎兪を使っているようです。補腎です。

中国伝統医学で勃起不全は陽痿(ようい)、陰痿(いんい)と呼ばれます。

現代中医学での弁証類型は以下が代表的です。

(1)腎陽虚・命門火衰
※張介賓(1563-1640)『景岳全書』「凡男子陽痿不起、多命門火衰、精氣虚冷」

(2)心脾両虚
※『黄帝内経素問・陰陽別論篇第七』「二陽之病発心脾、有不得陰曲」

(3)恐驚傷腎
※張介賓(1563-1640)『景岳全書』「凡驚恐不者、亦致陽痿。経曰恐傷腎、即此謂也」

(4)湿熱下注
※『黄帝内経素問・生気通天論篇』「湿熱不攘,大筋短,小筋弛長, 短為拘,弛長為痿。」

弁証では、文献によっては肝欝気滞や肝胆湿熱も挙げられています。また、古典の中では心血虚も指摘されています。

うろ覚えですが、深谷灸法の入江先生は膏肓の灸を使われていたと思います。腎虚よりも五臓の心との関連が深い印象があります。

経絡としては、足厥陰肝経や足陽明胃経、督脈や任脈、衝脈などが関係しています。

日本語の鍼の論文としては以下があります。

「直腸癌術後の インポテンスに対する鍼治療の一症例」
辻本 考司 et al.
『全日本鍼灸学会雑誌』Vol. 45 (1995) No. 3 P 208-213

直腸癌手術は手術後60~70%の確率でEDになるそうです。
また、高血圧の降圧剤やうつ病のSSRIなどの副作用による薬剤性EDは結構多いようです。

【付録:西洋におけるEDの鍼治療の研究の歴史】

1994年トルコ、アンカラ、イブンシーナ大学
「心因性インポテンスのマネージメントにおける鍼の位置」
The place of acupuncture in the management of psychogenic impotence.
Yaman LS1, Kiliç S, Sarica K, Bayar M, Saygin B.
Eur Urol. 1994;26(1):52-5.

1997年トルコ、イスタンブールのユズンチュ・ユル大学のアイディンの研究。
「非器質的な男性性機能障害への鍼と催眠暗示」
Acupuncture and hypnotic suggestions in the treatment of non-organic male sexual dysfunction.
Aydin S et al.
Scand J Urol Nephrol. 1997 Jun;31(3):271-4.

1999年オランダ
「勃起障害への鍼治療の使用」
The use of acupuncture in the treatment of erectile dysfunction.
Kho HG,et al.
Int J Impot Res. 1999 Feb;11(1):41-6.

2001年アメリカ、カルフォルニア州パシフィック・カレッジ
「涸れた陽(陽萎):中国伝統医学の男性不妊および勃起障害のレビュー」
Withered Yang: a review of traditional Chinese medical treatment of male infertility and erectile dysfunction.
Crimmel AS et al.
J Androl. 2001 Mar-Apr;22(2):173-82.

「心因性勃起障害の鍼治療:最初のプラセボ対照前向きランダム化比較研究の結果」
Acupuncture in the treatment of psychogenic erectile dysfunction: first results of a prospective randomized placebo-controlled study.
Engelhardt PF
Int J Impot Res. 2003 Oct;15(5):343-6.

Acupuncture Treatment of Psychogenic Erectile Dysfunction: A Four-Year Follow-Up Study
Daha L.K.a · Lazar D.a · Engelhardt P.F.b ·
Current Urology Vol. 1, No. 1, 2007

「勃起障害治療の鍼:システマティックレビュー」
Acupuncture for treating erectile dysfunction: a systematic review.
Lee MS, Shin BC, Ernst E.
BJU Int. 2009 Aug;104(3):366-70. doi: 10.1111/j.1464-410X.2009.08422.x. Epub 2009 Feb 23.

2014年『ブリティッシュメディカルジャーナル』台湾、中国中医大学
「現在の文献にみられる男性性機能障害における鍼の可能性のオーバービュー」
Overview of the relevant literature on the possible role of acupuncture in treating male sexual dysfunction.
Tsai MY
Acupunct Med. 2014 Oct;32(5):406-10. doi: 10.1136/acupmed-2014-010592. Epub 2014 Jul 21.

2016年1月17日 中国、北京中医薬大学の論文
「EDの鍼:システマティックレビュー」
Acupuncture for Erectile Dysfunction: A Systematic Review.
Cui X,et al.
Biomed Res Int. 2016;2016:2171923.
Epub 2016 Jan 17.

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする