秋のぼせと秋うつ

2018年10月22日『新华网黑龙江频道』
「霜降になった!伝統的な養生の教え防寒宝典」
霜降来临#专家教你养生防寒宝典

この季節は急に冷え込んできて、手足の末梢の冷え、気分の落ち込み、疲労倦怠感を感じる方が多いようです。中国の医療関係の新聞報道には「秋うつ」という言葉がよくみられますが、中国語辞書には載っておらず、造語のようです。

西洋伝統医学では秋と対応したメランコリーの概念があります。このメランコリーに金元四大家、朱丹渓の「鬱」の漢字があてられて、明治時代に翻訳されて日本語の「うつ病」が誕生しました。

西洋伝統医学では秋はウツの季節です。同時に感じるのは、秋のぼせの方も多いということです。

関西中医鍼灸研究会では、10年以上前から「秋の肝陽上亢」「秋の肝欝気滞」があると議論になってきました。これは秋に冷房が切れると体が勘違いをして春の肝陽上亢・肝欝気滞のような症状が出るというものです。

さらに秋は太陰の季節であり、陰虚の患者さんは陰虚症状が出やすくなります。

800年前の張従正が指摘したように、五行の金が木を相克して起こるという側面もあるようです。秋はなぜか中年女性の気逆や往来寒熱の症状は出やすいです。西洋医学では自律神経失調症です。

金元四大家、張従正著『儒門事親』五之気では以下のように論じられています。

以下、引用。

【秋分以降の五之気】9月23日の秋分から11月23日の小雪の間の五之気の病では、喘息が多発し、嘔逆し、咳嗽や婦人の往来寒熱が起こり、小児は皮膚病となる。五之気の病では表裏双解・理気の小柴胡湯で半表半裏を治療するのが良い。

秋にできる食べ物は梨や柿のように寒性・涼性のものが意外に多いです。これは秋に生津補陰して気を落ち着かせるためではないでしょうか。

また、いつも思うのですが、秋ナシや秋柿の生津とアヒル肉やナマコの滋陰は、同じ補陰でも体への作用が違います。

滋陰の生薬の代表は、ロバの皮を煮たらできるゼラチンである阿膠や魚の煮こごりゼラチンである魚膠やコラーゲンたっぷりのスッポン亀の甲羅のスープである鼈甲などです。 滋陰はネットリしています。補腎や補血の生薬と重なることが多いです。

秋梨や秋柿の生津はサラサラしています。どちらにしても秋は補陰の季節だと思います。

秋ウツについて、中世ヨーロッパ医学には四体液体質があり、五行色体表みたいな表もあります。

多血質(Sanguine):少年:春:朝:木星:喜びや楽観的
胆汁質(Choleric) :青年:夏:昼:火星:怒り
憂鬱質(Melancholic):中年:秋:午後:土星:憂鬱(ゆううつ=メランコリー)
粘液質(Phlegmatic):老年:冬:夜:月:無感動

『土星とメランコリー』という本に詳しいのですが、人生でも中年は人生の秋であり、メランコリーと土星と秋は結びついていました。この星に支配された4つの体液と性格を持つ人間の繰りなす悲喜劇がコメディー・オブ・ヒューモアとなり、現在の英語の「ヒューモア=ユーモア」という英語になりました。

春夏は発散・昇発の季節ですが、秋は収歛の季節です。秋は太陰の季節であり、補陰するのが原則です。

中医学の理論では、肺は気の粛降を主り、肝は気の昇発を主ります。肺気を降ろし、肝は気を昇らせ、全身の気をグルグルと回しています。

秋に急に冷えると、肝の気の昇発が弱い人は秋の肺の気の粛降作用だけが強くなり、気が沈みこんでしまったり、逆に肺の粛降が弱いと肝の陽気が昇り過ぎて、気が頭にのぼせたりするのだと思います。

秋は乾燥すると同時に台風が来たり、湿邪も強いです。冷えて気が沈み込むこともあれば、逆に気がのぼせることも多いです。秋は治療が難しい季節だと思います。

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