病の正体は「腹の虫」

2018年8月5日『朝日新聞』
『(文化の扉 歴史編)病の正体、描く探る 悩む姿や「腹の虫」、まとうユーモア』

以下、引用。

日本人の宗教的な病気観と医学的な知識が融合したものとして注目される書物が、戦国時代に摂津国上郡(現大阪府茨木市付近)の針師、茨木元行が記した「針聞書」(九州国立博物館所蔵)だ。

人体内で様々な病気を引き起こす63種の「腹の虫」が色鮮やかに描かれ、ヘビのようなもの、羽のあるものと多様な姿形に、つぶらな瞳。まるでゲームのモンスターのようだ。なぜ、こんな不思議な姿をしているのだろうか。

平安時代、60日に1度の庚申の日、体内の虫が抜け出して閻魔大王に告げ口するという「庚申信仰」が中国から伝わって日本でも広まった。続く南北朝時代にはこうした「腹の虫」があらゆる病気の原因と考えられるようになった。

鍼灸の歴史に詳しい森ノ宮医療大学大学院の長野仁教授は「想像で描かれたものだが、赤い虫は熱、青い虫は痛みに関係し、尾が二股のものは治療が難しいなど、特徴の一つ一つに理由がある」と説明する。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする