認知機能の鍼

2016年8月4日UPI通信
「鍼は、認知症前の記憶の喪失を遅らせるかも知れない」
Acupuncture may slow pre-dementia memory loss

以下、引用。

鍼は記憶を失う人々にとって有益であるかもしれない。しかし、それは認知症ではないと5つの最近の研究をレビューした(武漢大学の)中国人研究者は示唆している。

2016年8月4日原著論文『英国医師会雑誌』の『アキュパンクチャー・イン・メディスン』
「健忘・軽度認知障害のための鍼:ランダム化比較試験のメタ・アナリシス」
Acupuncture for amnestic mild cognitive impairment: a meta-analysis of randomised controlled trials
Min Deng, Xu-Feng Wang
Acupuncture in Medicine
Published Online First 4 August 2016

以下、引用。

認知症が進行するヒトの進行を止めることは証明されてなどいない。しかし、鍼は単独またはニモジピン薬物療法などの他の治療法と併用して記憶機能を保持することは助けられるかも知れないと研究者は言っている。

しかし、数名の医師たちはこのレビューは、鍼が認知症に効果があるかも知れないとは言うには早すぎる状態であり、そのようなことはレビューに含まれていないと言及している。

現状は科学的な判断が難しいです。現状を調べると、動物実験では可能性が示されています。

「鍼治療により行動・心理症状が改善したと考えられたアルツハイマー型認知症の3症例」
『老年精神医学雑誌』 21(4), 456-463, 2010-04

有名なのは、神戸大学の研究者が発表した上記の3症例です。鍼で認知症の周辺症状とよばれるBPSD(行動・心理障害)である不眠・不安・イライラ・抑うつなどは改善するというのが、世界中の臨床家の共通認識かと思います。

中核症状について、日本語では以下の論文があります。

「鍼治療および生活習慣改善による認知機能の向上についてのランダム化比較試験」
山崎 翼,et al.
『日本東洋医学雑誌』 Vol. 63 (2012) No. 4 p. 229-237

以下は、いままで発表された認知症の鍼のシステマティックレビューです。

2007年4月コクラン・システマティック・レビュー
「血管性認知症の鍼」
Acupuncture for vascular dementia.
Peng WN et al.
Cochrane Database Syst Rev. 2007 Apr 18;(2):CD004987.

※「血管性認知症への鍼の効果は未確定である」

2009年エッアート・エルンストのシステマティック・レビュー
「アルツハイマー病への鍼:システマティックレビュー」
Acupuncture for Alzheimer’s disease: a systematic review.
Ernst E.et al.
Int J Clin Pract. 2009 Jun;63(6):874-9.

※研究サイズが小さすぎて効果を示すことはできない。

2013年香港の研究者たちの動物実験のレビュー
「鍼は認知機能を改善する:システマティックレビュー」
Acupuncture improves cognitive function: A systematic review.
Leung MC,et al.
Neural Regen Res. 2013 Jun 25;8(18):1673-84.

2016年3月「血管性認知症の鍼治療の効果と安全性のアップデート・メタ・アナリシス」
An Updated Meta-Analysis of the Efficacy and Safety of Acupuncture Treatment for Vascular Cognitive Impairment Without Dementia.
Min D, Xu-Feng W.
Current Neurovascular Research
Volume 13, 4 Issues, 2016 Page230 – 238

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