中国で引用された日本の痰飲研究

2009年『国際中医中薬雑誌』
「日本と中国の学者の痰飲の弁証論治の理解」
中日学者对痰饮辨证论治的认识
杨芳『国际中医中药杂志』 2009,31(01):13-14
DOI:10.3760/cma.j.issn.1673-4246.2009.01.003

痰飲(たんいん)について非常によくまとまっています。ほとんど日本の中医学研究である『東医学研究』が引用されています。

病因

(1)風痰証:半夏白朮天麻湯
(2)寒痰証:苓甘五味姜辛湯
(3)熱痰証:麻杏甘石湯、小陥胸湯
(4)燥痰証:貝母瓜荽散
(5)湿痰証:二陳湯、三子養親湯

部位
(1)飲留胃腸(痰飲):甘遂半夏湯
(2)飲邪留胸肋(懸飲):十棗湯
(3)飲溢肌膚(支飲):小青竜湯および大青竜湯
(4)飲停滞胸肺(溢飲):小青竜湯および苓桂朮甘湯

日本の臨床家の処方
(1)二陳湯:燥湿化痰
(2)六君子湯:脾胃気虚兼痰湿
(3)温胆湯:胆胃不和
(4)半夏白朮天麻湯:風痰上擾
(5)参蘇飲:痰阻気欝
(6)抑肝散加陳皮半夏:肝鬱化火肝陽化風

日本の臨床の鍼灸処方
(1)痰飲壅肺(たんいんようはい):定喘、風門、肺兪、合谷、中かん、豊隆。
(2)痰飲凌心(たんいんりょうしん):内関、足三里、豊隆、隠白、三陰交、脾兪、胃兪。

鍼灸では、日本の岩淵浩司先生の『痰飲の配穴』『東医学研究』2005年、116号23-28が引用されています。

化痰作用のある穴としては足陽明胃経(人迎・水突・気舎・欠盆・気戸・庫房・屋翳・膺窓・梁門・帰来・足三里・豊隆・内庭)が多く、足太陽膀胱経(膈兪・脾兪・胃兪・三焦兪・委中)がその次に多く、痰飲の治療では心経の症状が多く、心経・胃経・肺経・子宮に重点をとり、化痰行気降逆を主にするということが書かれていました。この日本の痰飲研究は学問的にものすごくレベルが高いと感じました。

昔、弁証論治を学生向けに解説した際に一番しんどかったのは気血津液弁証でした。しかし、痰飲を講義することでより深い理解ができたと思います。

痰飲は『金匱要略』の痰飲の4分類である四飲があります。

「痰飲(たんいん)」、
「懸飲(けんいん」、
「溢飲(いついん」、
「支飲(しいん」

が四飲です。

特に、胸肋の少陽経の痰飲停滞である懸飲が脇下の懸癖となり、痃癖となり、日本で肩こりの肩癖からけんびきになったと思います。

後世に臓腑弁証で、

「胆鬱痰擾(たんうつたんじょう」
「痰迷心竅(たんめいしんきょう」
「痰蒙心包(たんもうしんぽう」
「痰火擾心(たんかじょうしん」
「痰湿阻肺(たんしつそはい」

などができました。

個人的には、痃癖(げんぺき)、積聚(しゃくじゅ)、癥瘕(ちょうか)、疝気(せんき)をより研究していきたいです。

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