原発性開放隅角緑内障

2018年7月19日ドイツ・ドレスデン大学
「原発性開放隅角緑内障の患者の眼血流量パラメータの差異における鍼の短期的効果」
The short-term effect of acupuncture on different ocular blood flow parameters in patients with primary open-angle glaucoma: a randomized, clinical study
Anna Leszczynska,et al.
Clin Ophthalmol. 2018; 12: 1285–1291.
Published online 2018 Jul 19. doi: 10.2147/OPTH.S170396

以下、引用。

【結論】眼に特化した鍼治療は原発性開放隅角緑内障患者の眼血流量に影響するかもしれない

56人の緑内障患者を「眼に特化した鍼治療」28人と「眼に特化していない鍼治療」28人にわけて眼血流量計やハイデルベルク網膜血流計で調べました。論文のツボ表記はドイツ語表記です。

「眼に特化した鍼治療」

攅竹(BL2)、魚腰(EX-HN4)、糸竹空(TE23)、瞳子髎(GB1)、養老(SI6)、光明(GB37)

「眼に特化していない鍼治療の配穴」

気海(CV6)、内関(PC6)、足三里(ST36)、三陰交(SP6)

西洋医学の緑内障は、現代中国語で青光眼です。中医学古典の唐代『外台秘要方』に「緑翳青盲」として初出し、宋代の『太平聖恵方』や『秘伝眼科龍木論』で五風変内障が緑風内障、青風内障、黄風内障、烏風内障、黒風内障として分類されています。これが現代日本語の緑内障の語源です。

内障とは瞳から眼底の部分の病気の総称であり、外障とは白目や眼瞼や結膜や角膜などの病気の総称です。

明代、傅仁宇著、『審視瑶函』 は内障について詳しく論じ、陰虚血少や憂慮・思慮過度や痰を病因として論じています。

青风内障肝胆病,精液亏兮气不正,哭泣忧郁风气痰,几般难使阳光静,莫教绿色上瞳神,散失光华休怨命。此症专言视瞳神内有气色昏朦,如青山笼淡烟也。然自视尚见,但比平时光华则昏朦日进,急宜治之,免变绿色,则病甚而光没。阴虚血少之人,及竭劳心思,忧郁忿恚,用意太过者,每有此患。
绿风内障其色绿,重是青风轻是黄,视物昏冥浓雾密,头旋风痰火气伤,瞳神甚大害尤速,少失调治散渐黄,目病若到如此际,看看渐失本来光。
此症专言瞳神气色浊而不清,其色如黄云之笼翠岫,似蓝靛之合藤黄,乃青风炎重之症久则变为黄风。虽曰头风所致,亦由痰湿所攻,火郁忧思忿急之故。
『審視瑶函』 内障

現代中医学では、2017年5月に北京の王蕊先生が「緑内障患者の眼圧への鍼刺の影響」という論文を書かれています。使ったツボは太陽、風池、百会、球後、睛明、承泣、攅竹、足三里、三陰交です。

2017年7月
「针刺对青光眼眼压控制及患者眼功能的影响」
王蕊『国際眼科雑誌(国际眼科杂志)』2017年5期 958-960

日本では、眼科分野では「白内障の鍼術」で有名な日本眼科の祖、南北朝時代の馬島清眼がいます。現代も馬島家の37代目が馬島流眼科を継承しています。

馬島清眼の白内障の鍼は墜下法とよばれる眼球の水晶体を鍼で刺して硝子体内に落とす方法です。これはインドのアーユルヴェーダの『スシュルタ』が出典であり、中国の『龍樹眼論』から『太平聖恵方』、明代、呉崑の『鍼方六集』「針内障秘訣歌」として伝わりました。

「中国における内障に対する外科的治療について」
宮川隆弘『日本医史学会』第52巻 第1号102-103p 2006年

馬島清眼の「白内障の鍼」の技術は以下の文献に詳細が書かれています。

「日本眼科史稿(第三)」
小川 劍三郎『岡山醫學會雜誌』1903 年 15 巻 167 号 p. 526-558

資料:緑内障の2013年コクラン・システマティックレビュー

「緑内障の鍼」
Acupuncture for glaucoma
Simon K Law et al.Cochrane Database Syst Rev. 2013; 5: CD006030. Published online 2013 May 31.

現時点で、緑内障の治療に鍼を用いることをサポートするような信頼できる結論をデータから導き出すのは不可能である。 倫理的観点から鍼単独と標準的な緑内障治療、またはプラセボと比較するのは、標準的な治療が既に確立されている国々においては正当化できないためである。なぜなら、ほとんどの緑内障患者は非伝統医学を用いない眼科医によって治療されており、臨床においては治療者と患者の好みに基づいた臨床的決断が行われるであろう。七つの中国における臨床試験が将来、このわれわれの結論を変える可能性もある。

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