韓国伝統医学の便秘の鍼治療

2018年9月6日『トップヘルスジャーナル』
「鍼は便秘を治療できると研究は述べている」
Acupuncture can treat constipation, says research

以下、引用。

過剰に便秘薬を使用すると問題を悪化させ、ネガティブな副作用を引き起こす。それは大腸の損傷と大腸黒皮症である。

鍼は機能性便秘の症状を治療するのに有意な改善ができると結論づけている。

韓国が2018年6月15日に発表した研究です。

30人の機能性便秘患者を真鍼と偽鍼に分けて天枢(ST25)、大巨(ST27)、大腸兪(BL25)、志室(BL52)を基本穴として、さらに舎岩鍼法の4穴を加えました。

以下、原著論文から引用。

真鍼グループは天枢・大巨・大腸兪・志室の両側合計8穴の固定したツボと4穴の舎岩鍼法のツボの鍼を受けた。舎岩鍼法は弁証鍼であり、韓国伝統医学の原則に従っている。

臓腑の実証の場合、自経の子穴と子経の子穴を瀉法されるべきであり、臓腑の実証の舎岩鍼法の4穴のセットを勝格と呼ぶ。この研究では、大腸の(虚証である)正格を大腸虚証に、胃の正格を胃虚証に、肝の勝格を肝実証に用いた。

韓国伝統医学の舎岩鍼法(サアムチム)では『難経・六十九難』を根拠に手足の経絡の五兪穴を「虚すれば、その母を補う」「実すれば、その子を瀉す」原則で配穴します。

以下が論文で使われた『舎岩鍼法』のツボの4穴の組み合わせと推測されます。

《大腸虚:大腸経の虚証(金経の虚)=大腸の正格》
曲池(金経の土穴)の補法
足三里(土経の土穴)の補法
陽谷(火経の火穴)の瀉法
陽溪(金経の火穴)の瀉法

《胃虚:胃経の虚証(土経の虚)=胃の正格》
解溪(土経の火穴)の補法
陽谷(火経の火穴)の補法
足臨泣(木経の木穴)の瀉法
陥谷(土経の木穴)の瀉法

《肝実:肝経の実証(木経の実)=肝の勝格》
行間(木経の火穴)の瀉法
少府(火経の火穴)の瀉法
経渠(金経の金穴)の補法
中封(木経の金穴)の補法

韓国の舎岩鍼法では基本的に『難経六十九難』を根拠に上記のような4穴で五行のバランスを調整します。

韓国伝統医学の便秘へのアプローチは中国伝統医学とかなり違うようです。

原著論文2018年6月15日
「機能性便秘の鍼の効果と安全性:ランダム化プラセボ・コントロール・パイロット試験」
Efficacy and safety of acupuncture for functional constipation: a randomised, sham-controlled pilot trial
Hye-Yoon Lee,et al.
BMC Complement Altern Med. 2018; 18: 186.
Published online 2018 Jun 15. doi: 10.1186/s12906-018-2243-4

【中医学の便秘】

中医学では便秘の分類として、弁証では熱秘、冷秘=寒秘、気秘、虚秘などがあります。

2016年に中国の劉保延先生率いる研究グループが発表した鍼の臨床研究が有名です。

2016年9月13日『アナルス・オブ・インターナル・メディスン』
北京中医薬大学、中国中医科学基礎研究所発表の論文
「深刻な慢性機能性便秘に対する鍼:ランダム化比較試験」
Acupuncture for Chronic Severe Functional Constipation: A Randomized, Controlled Trial
Zhishun Liu, et al.
Ann Intern Med. Published online 13 September 2016 doi:10.7326/M15-3118

※EA電気鍼治療群では両側のツボ(天枢、腹結、上巨虚)へ針を刺し、腹壁の筋層に届くように垂直に30~70mm挿入した。

※1,075人の難治性便秘患者を無作為に2つのグループに分け、半数に腹壁の内側の筋肉層に鍼を刺す正しい治療を、残りの半数に効果がないと考えられる場所に鍼を刺すニセ治療を行なった。鍼師が両グループに1回30分の「正しい治療」「ニセ治療」を8週間にわたり計28回行なった。 その結果、正しい治療を受けたグループでは31%の便秘が治り、ニセ治療グループでは便秘が治ったのは12%だった。この効果はさらに続き、12週間後に追跡調査すると、正しい治療グループでは便秘が治った人は38%に増えていた(ニセ治療グループでは14%)。対照群に比べ、治った人が約2.6~2.7倍多いわけで、統計学的に効果があることが立証された。

2013年アメリカ中医学雑誌の北京・中国中医研究所の論文
「慢性便秘への鍼の効果:システマティックレビュー」
Efficacy of acupuncture for chronic constipation: a systematic review.
Zhang T, et al.
The American Journal of Chinese Medicine. 2013;41(4):717-42.

※結論として、鍼は慢性機能性便秘に対して安全であり、週間の自発的な大腸運動を促し、QOLを改善し、症状をやわらげるかも知れない。

2014年4月の『鍼と推拿の科学雑誌』に発表された南京中医大学の論文
「機能性便秘の鍼のシステマティックレビュー」
Systematic review of acupuncture for functional constipation
Wei Zhang,et al.
Journal of Acupuncture and Tuina Science
April 2014, Volume 12, Issue 2, pp 89–95

※このシステマティックレビューは天枢への深い鍼が西洋薬治療よりも良い臨床効果があるとしているが、証拠の質と量が貧弱であり、より質の高いランダム化比較試験が求められる。

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