立春と春困

2019年2月3日『香港文匯報』
「立春は陽気を養うのが宜しい、朝は早起きして昼寝して『春困』を防ぎましょう」
立春宜養陽氣 晨起午睡防春困

春に湿気によって体が重くなる症状のことを広東語では「春困」と言うそうです。香港は湿気が強いので、春に身体がだるく、胃腸の症状も出やすいそうです。
韓国語にも春の倦怠感を表現する「춘곤증 (チュンゴンチュン :春困症)」という表現があるそうです。

以下、引用。

飲食方面ではニラやダイコンなど辛味や甘味で発散の性質の食物が宜しい。陽気が生発し、肝の気の疏泄も有利となる。酸味の収斂の味を進んで食べない方が良い。酸味は陽気の昇発を阻害する。

いつも思うのですが、「春は酸味を少なく食べる」という食養生の基本は、日本で定着しないです。これは季節の気の流れが理解されていないからだと思います。

春は陽を養う季節であり、昇発の季節であり、春に頭部に陽気が上昇するのが健康な状態です。

春の陽気は「少陽」といって弱々しいので、「賞して罰するなかれ」、つまり肝胆経の少陽の気は「誉めて育てる」べきであって瀉法をしてはいけません。

酸っぱい酸棗仁湯は不眠と寝汗の漢方であり、酸味で収歛し、気を下に降ろして不眠を治します。酸味の働きは収歛と降気ですから、春の気の流れと真逆です。春は陽気が上昇すべき時であって、春に肝胆の陽気を瀉法すれば夏に病気になるかも知れません。

そこで五行の関係を利用して、木克土の関係から五味なら甘味、経絡なら胃経から発散するなどの工夫が必要となります。

肝の色は青色であり、甘味を食するのがよい。粳米、牛肉、棗、葵はみな甘味である。

肝は春を主る。足厥陰肝経と足少陽胆経の主治である。その日は甲乙である。肝は急に苦しむ。急に甘味を食して、これを緩める。

『黄帝内経素問』蔵気法時諭篇第22

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