米国の戦場鍼の歴史

「戦場鍼(バトルフィールド・アキュパンクチャー)」はアメリカ空軍の軍医リチャード・ニムツォウが開発した5つの耳穴を用いた治療法です。

5つの耳ツボはオメガ2、神門、ポイントゼロ、視床、帯状回で、使用する鍼はポール・ノジェ博士が開発した半永久鍼(ASP)です。

中国式耳鍼にはオメガ2やポイントゼロという耳ツボは存在しません。

戦場鍼の創案者、リチャード・ニムツォウの盟友であるUCLA医学部のジョゼフ・ヘルムズの著作『鍼のエネルギー論(Acupuncture Energetics)』によると、ヘルムズは鎮痛に耳のポイントゼロと神門と視床を用いていました。

ヘルムズによれば、「ポイントゼロは身体のホメオスタシスのバランスを取る」「神門は不安と痛みと精神の活性化」「視床は痛みの緩和」に用いるそうです。これは戦場鍼のヒントになっているようです。

『鍼のエネルギー論:医師のための臨床アプローチ』
Acupuncture Energetics a Clinical Approach for Physicians
Joseph M., M.D. Helms 2007/8/4

戦場鍼の耳穴、オメガ2はノジェのフランス式耳介療法の耳穴です。

ノジェのオメガ・ポイントには「オメガ・マスター・ポイント」と「オメガ1」と「オメガ2」があります。いずれもメンタルプロブレムのポイントです。「オメガ2」は対人関係に関するメンタルプロブレムに使われます。

帯状回もノジェのフランス式耳鍼療法の耳穴です。

もともとリチャード・ニムツォウはフランスでノジェの耳鍼を学びました。 リチャード・ニムツォウはUCLA医学部のジョゼフ・ヘルムズの鍼灸コースで学び、フランスでダヴィッド・アリミという神経科医にASPという耳鍼用半永久鍼を用いた神経学的な方法を学んだ直後のことです。

2001年、 ニムツォウ はフランスから帰国直後にアメリカにおける耳鍼の権威テリー・オルセン医師に誘われ、カリフォルニア大学アーバイン校で研究していた韓国人の趙長熙教授に紹介されました。趙教授はfMRIを用いて鍼の研究を行い、『ニューズウィーク』で取り上げられ時の人でした。この時、趙教授は「真の鍼と偽の鍼の違いは、fMRIでは帯状回で判別できる」とニムソウ氏に伝えました。ニムソウは早速、帯状回を用いて劇的な効果を得ましたが、そこでニムソウが開発したのが金銀という異種金属のASP鍼と5穴を用いる戦場鍼です。

リチャード・ニムツォウは西洋式のウエスタン・メディカル・アキュパンクチャーの思想に基づいた『メディカル・アキュパンクチャー』という医学雑誌の編集長を務めており、昔は論文のほとんどがオープンアクセスでした。

フランスのノジェの思想とアメリカのメディカル・アキュパンクチャーを学ぶことは私の鍼灸技術向上に大きなベネフィットとなりました。

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