迎随補瀉の謎:推拿と鍼灸

2013年6月17日
「推拿按摩方向不同效果不同」

この小論は推拿における手技の方向性の問題を論じています。

清代の1691年、骆如龙著、『幼科推拿全書』は「左転は補法で右転は瀉法」としていますが、これは腹部の摩法の時計回りと反時計回りの意味のようです。

1676年、熊応雄著、『小児推拿広意』は、太陽穴を揉む際に目の方向は補で耳の方向は瀉法と述べています。さらに、捏脊法は背中を「下から上は補法で、上から下は瀉法」と論じています。

2012年上海中医薬大学の「浅析小儿推拿直推五经方向补泻」では、手掌の推法ですが、さまざまな流派の補瀉の考え方を紹介し、指根側から指尖側を瀉法、指尖側から指根側の方向を補法とという見解を論じました。この論文を読むと、推拿の方向による補瀉は「流派・学説はあるが定説がない」のが理解できます。

推拿を研究した際に、推法ではやはり鍼灸の迎随補瀉のように「経絡の方向に随うのが補法で経絡の方向に逆らうのが瀉法」と書いてある文献もありました。

しかし、手掌で推法すると、陰経も陽経もいっしょに触ることになります。物理的に陰経と陽経で方向を分けられないのです。

個人的には「末梢側の井穴に響きが向かうのが瀉法、体幹部の臓腑に響きが向かうのが補法」という暫定的な解釈で手技をおこなっています。

『難経』の七十二難では、迎随について営気と衛気の流れ、経脈の気の流れを知り、その逆順にしたがって取るのが迎随と論じています。個人的には、この『難経・七十二難』の論述が迎随補瀉の本質を論じていると思います。

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