捻転補瀉

捻転補瀉(ねんてんほしゃ)の補法の動画です。
右手の親指を前に出し、時計回りの動きをします。このような中国の鍼の補瀉手技は理論的に間違っているわけではないですが、日本の臨床では「使えない」と思います。

現在、世界中で得気の科学的研究が盛んです。

中国的な得気は、酸、脹、重、鈍、麻です。

この定義は鍼麻酔の際に有名になりました。確かに合谷で鍼麻酔をかけるには、
酸:痛み、またはヒリヒリ感→中国語では『だるい感じ』
脹:充満感・膨張感・圧力感
重:重い感じ
鈍:鈍い感じ
麻:しびれた感じ、またはチクチク感
が技術的に必要になります。

これは針刺麻酔の研究者だった武重千冬先生やブルース・ポメランツ先生が共通して述べていることです。西洋医学的な鍼麻酔研究ではその通りです。特に鍼麻酔には捻転(日本の旋撚)の手技が必要になります。

しかし、これらは患者の主観の得気であり、個人によって痛覚が違うので臨床ではまったく信頼できません。中国共産党の文化大革命以降の得気です。

実際には、得気とは刺し手の手の感覚(手の下感)です。

明代1575年、李梃著、『医学入門』では以下のように論じています。

鍼の下が重く脹満して沈んでいるなら、気はすでに至っている。もし患者が痛みを覚えれば実であり、だるさを覚えれば虚である。鍼の下が軽く浮いて虚のものは、気がいまだに至っていない。

金代、トウ漢卿著、『針経指南』の『標幽賦』では以下のように論じています。

(鍼の下が)軽くて、すべすべで、ゆるゆるしていれば、気は未だに至っていない。気が至ったら魚が釣りえさを飲み込んだようであり、気が未だに至っていないなら、お堂の奥に静かにしているかのようである。

鍼の補瀉を言う場合は手の下感の得気が重要であり、鍉鍼で得気を感じて補法や瀉法の操作をしたほうが良い印象があります。

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