2015年『遼寧中医雑誌』
「最近10年の機能性便秘の鍼灸治療の研究概況」
近十年针灸治疗功能性便秘的临床研究概况
杨乐 毕萌 王锐 杨佃会 王健
《辽宁中医杂志》2015年 第4期 890-892页
お勧めは天枢穴の電気鍼30分です。
そして支溝の電気鍼で便秘に有効率が94.4%だそうです。本当でしょうか。
天枢ー上巨虚がこの論文みたいに効くなんて夢のようです…。
以下は2016年に北京中医薬大学、中国中医科学基礎研究所がアメリカの世界五大医学雑誌に発表した論文です。
2016年9月13日『アナルス・オブ・インターナル・メディスン』
「深刻な慢性機能性便秘に対する鍼：ランダム化比較試験」
Acupuncture for Chronic Severe Functional Constipation: A Randomized, Controlled Trial
Zhishun Liu, et al.
Ann Intern Med. Published online 13 September 2016 doi:10.7326/M15-3118
※「EA電気鍼治療群では両側のツボ（天枢、腹結、上巨虚）へ針を刺し、腹壁の筋層に届くように垂直に30～70mm挿入した。」
※「1075人の難治性便秘患者を無作為に2つのグループに分け、半数に腹壁の内側の筋肉層に鍼を刺す正しい治療を、残りの半数に効果がないと考えられる場所に鍼を刺すニセ治療を行なった。鍼師が両グループに1回30分の正しい治療とニセ治療を8週間にわたり計28回行なった。 その結果、正しい治療を受けたグループでは31％の便秘が治り、ニセ治療グループでは便秘が治ったのは12％だった。この効果はさらに続き、12週間後に追跡調査すると、正しい治療グループでは便秘が治った人は38％に増えていた（ニセ治療グループでは14％）。対照群に比べて治った人が約2.6～2.7倍多く、統計学的に効果があることが立証された。」
中医学では便秘の分類として、弁証では、一般的には熱秘、冷秘（=寒秘）、気秘、虚秘が知られています。気秘は気滞便秘です。虚秘には気虚秘、血虚秘、陽虚秘、陰虚秘があります。
1. 热秘
主症：①大便干结；②大便臭秽和（或）口干口臭和（或）小便短赤。
次症：①腹胀或腹痛；②面红心烦或有身热。
舌脉：舌红，苔黄，脉滑数。
治则：清热润肠。
方药：麻子仁丸加减2. 寒秘
主症：①大便艰涩；②腹痛拘急、得温痛减，或腹满拒按。
次症：①手足不温；②畏寒。
舌脉：舌质淡暗，苔薄白腻，脉弦紧。
治则：温通散积。
方药：温脾汤加减
治则：顺气导滞。
方药：六磨汤（《世医得效方》）3. 气滞秘
主症：①大便干结或不甚干结，排便不爽；②腹胀或伴腹痛。
次症：①肠鸣矢气；②情绪不畅时加重胸胁痞满，嗳气频作。
舌脉：舌红，苔薄，脉弦。
治则：滋阴养血，润燥通便。
方药：润肠丸（《沈氏尊生书》）加减4. 气虚秘
主症：①大便不硬，虽有便意，但排便费力；②用力努挣则汗出短气。
次症：①便后乏力；②神疲懒言。
舌脉：舌淡，苔白，脉弱。
治则：益气润肠。
方药：黄芪汤（《金匮翼》）加减5. 血虚秘
主症：①大便干结；②面色少华，头晕目眩。
次症：①心悸气短；②口唇色淡。
舌脉：舌质淡，脉细弱。
治则：滋阴养血，润燥通便。
方药：润肠丸（《沈氏尊生书》）加减6. 阴虚秘
主症：①大便干结如羊屎状；②潮热盗汗和（或）手足心热和（或）两颧红赤。
次症：①口干少津；②形体消瘦，头晕耳鸣心烦少眠腰膝酸软。
舌脉：舌质红，有裂纹，少苔，脉细数。
治则：滋阴润燥。
方药：增液汤（《温病条辨》）加减7. 阳虚秘
主症：①大便干或不干，排出困难；②面色咣白，小便清长。
次症：①腹中冷痛；②腰膝酸冷四肢不温或畏寒怕冷。
舌脉：舌淡，苔白，脉沉迟。
治则：温润通便。
方药：济川煎（《景岳全书》加减针灸治疗：针灸是治疗FC的可选择治法。FC的针灸取穴，常采用主穴加辨证取穴的思路。治疗FC的针刺常用取穴有：天枢、大肠俞、足三里、支沟、上巨虚、腹结穴、八髎穴。
以上、李军祥，陈誩，柯晓.
功能性便秘中西医结合诊疗共识意见(2017年)
中国中西医结合消化杂志, 2018(1).より引用
熱秘や冷秘（寒秘）は中医学の古典に多数の記載があります。
漢方の中にセンノサイドの大黄やマグネシウムの芒硝（ぼうしょう）が配合された処方は沢山あり、現実的にも日本の鍼灸臨床では便秘は多くのケースで主訴にはならず、愁訴や付随した症状です。しかし、過敏性腸症候群（IBS）が増えているので研究はしておいた方がよいです。ほとんどの患者は既に西洋医学の便秘薬を使っており、むしろ便秘薬の減量の方が現実的です。
中医学の文献には気滞の気秘について古典に記述があります。
《症因脉治·大便秘结论》：“气秘便结之症，心腹胀满，胁肋刺痛，欲便而不得便，此气实壅滞之症也。若质弱形弱，言语力怯，神思倦怠，大便不出，此气虚不振之症也。”
■気秘についての鍼灸処方
治法：调理气机，通腑利便。
选穴：以任脉、足厥阴肝经穴为主。取中脘、阳陵泉、气海、行间、天枢穴。
随证配穴：胸胁胀满疼痛者，加期门、支沟。腹胀甚者，加大横。
刺灸方法：针用泻法。
方义：腑会中脘、大肠募穴天枢配气海以疏通腑气。行间配阳陵泉疏肝理气，使疏泄复常。
■気虚便秘の鍼灸処方
治法：健脾益气，兼以通便。
选穴：以背俞穴、足太阴脾经穴为主。取脾俞、胃俞、大肠俞、三阴交、足三里、关元、天枢穴。
随证配穴：多汗者，加复溜。心悸者，加内关。
刺灸方法：针用补法，并可加灸。
方义：脾俞、三阴交、胃俞、足三里健脾胃益中气，以资生化之源。关元补下焦元气，以益脾气。大肠俞、天枢以助大肠传导之力
■血虚便秘の鍼灸処方
治则：健脾益气，温阳通便
选穴：大肠俞、天枢、支沟、上巨虚
方义：大肠俞乃大肠腑气转输之处，配其募穴天枢，调理气血，疏通腑气；支沟宣导三焦气机，通调腑气；上巨虚是大肠下合穴，有“合治内腑”之意，调理腑气，恢复大肠传导功能。
随证配穴：气血虚—足三里。
操作：毫针刺，平补平泻法，每日1次，每次留针30min，10次为一疗程。
■陰虚便秘の鍼灸処方
治法：滋阴润燥。
选穴：以背俞穴、足少阴肾经穴为主。取脾俞、三阴交、太溪、足三里、照海、大肠俞、天枢穴。
随证配穴：口干少津甚者，加金津、玉液。心烦少寐者，加神门、行间。
刺灸方法：针用补法。
方义：照海、太溪以滋肾阴。脾俞、三阴交、足三里益气血之源，滋阴润燥。大肠俞增强大肠传导功能。
■陽虚便秘の鍼灸処方
治法：补肾健脾，助阳温通。
选穴：以足少阴肾经、足太阴脾经穴为主。取气海、照海、石关、肾俞、脾俞、三阴交、天枢穴。
随证配穴：脱肛者，加长强、百会。腰冷痛者，加委中、命门。
刺灸方法：针用补法，并可灸。
方义：气海、照海、石关、肾俞补益肾气，助阳驱寒，温煦下焦以散凝结。三阴交、脾俞可温补脾阳，以利健运之功。更配天枢疏调大肠气机。
漢方はかなり弁証によって処方が変わりますが、教科書の鍼灸処方はそれほど変わりません。また、腹診をしていれば虚実寒熱の弁別は必要とは思いますが、全部が天枢で治療できるとは思えません。便秘の弁証なのに、腹診を真面目にやっていないのではないかと思えてしまいます。S状結腸近くに滞留を感じることもあれば、下行結腸や横行結腸の形で反応があることもあります。
また、日本では澤田流神門を使い、合谷や手三里などの大腸経を遠隔で使うこともあります。中国では支溝や承山など遠隔のツボが使われています。これらの遠隔と局所の使い分けは研究されていません。
手の大腸経や小腸経や三焦経の使い方と足の上巨虚や下巨虚の使い方など、便秘の鍼灸弁証論治は問題が山積みであるのが現状だと個人的には思います。