過敏性腸症候群診療ガイドラインの代替医療

「過敏性腸症候群診療ガイドラインの心身医学的インパクト」
福土 審『心身医学』2016 年 56 巻 10 号 p. 969-976

以下、引用。

漢方薬では桂枝加芍薬湯をIBS‒Dに使うことが多く、一定の効果が示されているが本格的な大規模RCTは今後の課題である。

「IBSに心理療法が必要な場合もある」というステートメントから「IBSには心理療法が有効である」という文言が適切になったと思われる。また、心理療法には催眠療法や認知行動療法だけでなく自律訓練法とマインドフルネスストレス低減療法が含まれており、これらはわが国の臨床場面により適している。

日本消化器学会の過敏性腸症候群診療ガイドラインは興味深いです。

例えば、心理療法についてはプラセボ効果の高さを認め、「催眠療法は他の療法よりも効果が高かった」「催眠療法で効果があった患者の83パーセントが5年後でも効果が持続していた」など、西洋医学のガイドラインとしては例外的に催眠療法の効果を正直に認めています。5年後、83パーセントに効果が持続しているというのはすごいことです。

その一方で「認知行動療法は3ヵ月後には効果があったが、プラセボ効果以上の効果は認められなかった」としています。しかし、患者さんは認知行動療法を受けることになると思います。

鍼について「鍼はIBSの症状やQOLにプラセボ以上の改善をもたらさなかった」と2012年コクラン・システマティックレビューを引用しています。しかし、これは認知行動療法と同じです。なのに心理療法はエビデンスレベルBで推奨、鍼など代替医療はエビデンスレベルCで受けないことを強く推奨です。どういうことでしょうか。

2012年コクランシステマティックレビュー「過敏性腸症候群の鍼」
Acupuncture for treatment of irritable bowel syndrome.
Manheimer E,et al.Cochrane Database Syst Rev. 2012 May 16;5:CD005111.

ランダム化比較試験では、真鍼と偽鍼の間で過敏性腸症候群の症状やQOLにおいて効果の違いは発見できなかった。

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