中西医結合の活血化瘀研究

2018年12月19日
「中国の学者が『心気虚血瘀』と補気活血の処方の中薬の作用機序を提示した」
我学者揭示心气虚血瘀和补气活血复方中药作用机理

芪参益气滴丸は黄芪、丹参、三七などの活血薬が成分の中成薬です。

論文の著者である北京大学医学部中西医結合教室の韓晶岩教授は日本にも留学され、中医学の文献を日本語で出版されたり、全日本鍼灸学会雑誌に論文を投稿されています。

韓 晶岩 『中医診断学』 日本僑報社 (2005/1/1)

韓 晶岩「微小循環障害に対する中医薬と鍼の改善効果とそのメカニズム
『全日本鍼灸学会雑誌』2004 年 54 巻 4 号 p. 592-603

上記の論文では田七(三七)などの活血薬と足三里の捻鍼の虚血後再潅流の効果を比較しており、ものすごくユニークです。

こういった中西医結合の活血化瘀研究といえば、陳可翼先生です。

狭心症の特効的漢方製剤、冠心Ⅱ号を秘密プロジェクトで開発されました。

狭心症・気管支喘息に苦しむ毛沢東主席のために、周恩来首相の肝いりで1970-1971年に始まりました。

老中医、郭士魁先生と陳可翼先生が、1978年に丹参を主薬とした注射薬、「冠心2号」を開発しました。1980年には「精製冠心片」となり、10年後の1990年には様々な経緯をへて「冠元顆粒」として日本のイスクラ産業から発売されています。

陳可翼先生は1981年に『中西医結合雑誌』を創刊し、1990年には「血瘀証与活血化瘀研究」(上海科学技術出版社)を出版した中西医結合派の代表です。1990年から2002年には『中西医結合雑誌日本語版』も日本でも翻訳出版されて、たまに中国書店の店頭で見かけました。

2015年にノーベル医学賞を受賞した中国中医研究院の屠呦呦先生は、プロジェクト523という中国人民解放軍のヴェトナム戦争のための秘密軍事プロジェクトで働いている時に、中薬「青蒿」からアルテミシニンを分離しました。

この秘密軍事プロジェクトは1967年の文化大革命の真っ最中にヴェトナム政府のホーチミンの依頼と毛沢東の命令で始まり、1973年に屠先生と山東省の中国伝統医学者たちが臨床試験を行って発見しました。

ヴェトナム戦争が終結したあとの1981年に、この秘密の軍事プロジェクト、プロジェクト523は終了しています。

屠呦呦先生は「三無科学者」と呼ばれていました。

まず、文化大革命の1960年代から1981年まで中国に大学院は存在しませんでした。また、海外留学経験も職歴もなく、1980年まで中国中医研究院の研究員にさえなれず、なったのは1981年です。

屠呦呦先生は学歴なし、海外留学経験なし、職歴なしで、お金もなくて、2007年の時点では賃貸アパートにあった電化製品は電話と冷蔵庫だけだったのは有名な話です。高校の同級生だった夫は工場労働者で、文化大革命中は思想改造のための労動改造所で強制労働させられていました。

屠呦呦先生は、この環境の中ですべての中医学古典を調査し、全国の漢方医をたずねあるき、中医学古典の葛洪の『肘後備急方』から青蒿を候補として見つけ出してアルテミシニンを分離しました。最初の人体実験の被験者も屠呦呦先生ご自身で、その論文は1977年に匿名で発表されました。本当の実力の持ち主は学歴も海外留学歴も職歴も関係ありません。

屠呦呦先生の中薬、青蒿からアルテミシニンを発見したという歴史も中西医結合の一面なのだと思います。歴史的に、日本も長井長義が麻黄湯の麻黄からエフェドリンを発見しており、このような東洋医学を還元主義で分析するアプローチは、中国では屠呦呦先生のノーベル医学賞受賞という実績から、今後さらに強くなると予測できます。

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