【BOOK】「うつ」は炎症で起きる

エドワード・ブルモア著
「うつ」は炎症で起きる
草思社2019年5月31日

ケンブリッジ大学医学部・精神医学学科長のエドワード・ブルモア教授の著作です。

以下、引用。

(1999年にケンブリッジ大学医学部精神医学教授となり)2005年に思いがけない縁を頼りにイギリス最大手の製薬会社グラクソスミスクライン(GSK)で半週勤務を始めることにしたのだ。

(グラクソスミスクラインの臨床試験の指揮をとっていたが)2010年、グラクソスミスクラインは突然、精神医療に関する研究開発計画を全て中止したのだ。その時私は、自分がもう精神医学はやりたくないと思っている企業で働いている50歳の精神科医だということに気づいた。GSKほどの大企業が「精神医学の治療が進歩する見込みはない」と思っているなら、私がこの20年間信じきっていた治療の革命的進歩を目の当たりにするという展望はどうなるのか?その瞬間、私は本書が取り扱う見解について本気で考え始めたのだ。

この本は著者が経験した「リウマチで鬱になった」「歯医者で治療を受けて鬱になった」例から始まります。

多くは「いかにしてセロトニン仮説(化学的不均衡原因説)は崩壊したか」の記述です。

ベテランの鍼灸師なら古傷治療で難しい謎の症状が治った経験があると思いますし、戸ヶ崎先生や松本岐子先生が実際に典型症例を報告されています。

私はむしろ西洋医学の理論に「慢性炎症やサイトカインが鬱を起こす」という理論が今まで存在しなかったことに驚きました。なぜなら、肝炎のインターフェロン治療中の患者がうつ状態になって自殺したり、インフルエンザにかかってうつや慢性疲労になることは普通にあるからです。膠原病の方もよくうつになります。この本には「ワクチンを打ったあと、抗体ができることでうつになる」のも普通のこととして紹介されていました。

どれも普通の観察力と思考力があれば、普通の臨床家なら気づきます。どれだけ先入見や時代のパラダイムは強力なのかと他山の石としたいと思いました。

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