温病

2005年『天津中医薬』発表
「衛気営血弁証と鍼の選穴ルールの研究」
卫气营血证遣针选穴规律探索
张炳立
『天津中医药』2005, 22(2)131-133

衛気営血弁証の衛分証として、この論文では発散表邪、宣肺疏衛の治則で、大椎(GV14)、風池(GB20)、曲池(LI11)、合谷(LI4)の瀉法を提示しています。

気分証として、この論文では大椎(GV14)を主として、三焦経を中心に配穴します。関衝(TE1)の点刺、少商(LU11)や商陽(LI1)、少沢(SI1)や少衝(HT9)の点刺などです。

営分証や血分証の配穴として、この論文に書かれている曲沢(PC3)、委中(BL40)、少衝(HT9)、中衝(PC9)の瀉血や曲池(LI11)、足三里(ST36)というのは、正直、微妙だと感じました。

世界保健機構(WHO)のICD-11の弁証論治では、なんと!Triple energizer stage patterns(三焦ステージ・パターン)、つまり三焦弁証が含まれています!

(1)“Upper energizer stage patterns(上焦ステージ・パターン)”

【上焦証】
温病の邪気が肺と心包に入った機能不全から成り立つ。すなわち横隔膜より上の心臓と肺の臓器システムの部分である。

ざっくりし過ぎです。これでは臨床で使えないです。

(2)“Middle energizer stage patterns(中焦ステージ・パターン)”

【中焦証】
温病の邪気が上腹部の中腔臓器(=腑)に侵入した機能障害から構成される。すなわち横隔膜から臍までの脾臓・胃・肝胆である。

(3)“Lower energizer stage patterns(下焦ステージ・パターン)”

【下焦証】
湿熱の要素が臍から下腹部に侵入した機能障害から構成される。すなわち腎臓・膀胱・大腸・小腸である。肝臓と腎臓の陰が損傷される。

やはり、肝臓が中焦証と下焦証の両方に入っています・・・。

葉天士先生の『温熱論』の衛気営血弁証と呉鞠通先生の『温病条弁』の三焦弁証こそが中国伝統医学の最も深い部分だと考えています。

特に現代日本では慢性病に湿熱病が多いので、慢性病の分析には温病学の知識が必要だと感じています。『中医臨床』2015年12月号の「温病学を慢性病に活かす」でも論じられているように、温病学や傷寒論の分析は慢性病でこそ活きると思います。

また、風邪の急性期を診ることは家族以外には少ないですが、「カゼが治りきらない」または「誤った治療による壊病(えびょう)」は結構、日本の鍼灸師は診ると思います。

西洋医学の発熱のレッドフラッグス徴候はかなり難しいです。問診に「海外渡航歴」が入っているのは急性肝炎などです。鍼灸院で風邪だと思って治療したらA型肝炎だったという例も聞いたことがあります。意外なところではライム病もあります。

「大人の発熱:レッドフラッグ徴候」
Fever in adults – red flag symptoms

小児科の発熱のレッドフラッグ徴候はまさに悪夢です。子どもの髄膜炎や白血病の初期の徴候を見逃したら、ものすごく恨まれるとしか言えません。

「子どもの発熱:レッドフラッグ徴候」
Fever in children – red flag symptoms

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする