浙江省の熱敏灸論文と電気鍼と変形性膝関節症

浙江省には浙江中医薬大学があり、1956年創刊の『浙江中医雑誌』と1977年創刊の『浙江中医薬大学学報』があります。『浙江中医薬大学学報(に熱敏灸は2本の論文ですが、『浙江中医雑誌』には12本の熱敏灸論文がありました。

ユニークなのは、以下の変形性膝関節症に対する電気鍼と熱敏灸の組み合わせ治療の2013年浙江省論文です。

2013年「高頻度電気鍼と熱敏灸による変形性膝関節症35例の治療効果観察」
高频电针配合热敏灸法治疗膝骨性关节炎35例疗效观察
陈顺喜 王延武 《浙江中医杂志》 2013年11期

高頻度電気鍼というのが浙江省らしいです。電気鍼と熱敏灸はちょっと思いつかないですが、変形性膝関節症への灸頭鍼を考えれば効果は高そうな気がします。

『中医臨床』2018年12月号第39巻4号132ページに、浙江省の方剣僑先生のインタビューがありました。方剣僑先生は日本の昭和大学で武重千冬先生に学ばれて、浙江省でも大量の電気鍼論文を発表されており、2015年にはまさに電気鍼の周波数の論文も書かれ、電気鍼の周波数にこだわりがあります。

浙江省の論文は鍼麻酔の電気鍼だらけでした。三叉神経痛では合谷(LI4)・外関(TE5)に鍼麻酔。脳卒中後遺症、顔面神経麻痺には断続波、腰椎椎間板ヘルニアには疎密波、ひどい頭痛には100Hz以上の高周波は脊髄に到達して早く作用し、持続的な痛みには１～２Hz低周波という記述が『中医臨床』インタビュー記事にありました。

2015年
「違う電気鍼刺激による鎮痛反応の実験研究発展」
不同电针刺激参数对镇痛效应的实验研究进展
方剑乔 《浙江中医药大学学报》 2015年12期

このような電気鍼の周波数研究は、鍼麻酔の韓済生先生も述べており、2Hz／100Hzの混合波(疎密波)をよく使うようです。2Hzの電気鍼はエンケファリンとエンドルフィンをリリースし、100Hzの電気鍼はダイノルフィンをリリースします。

神経障害性疼痛には100Hz電気鍼より2Hz電気鍼、または10－15Hz電気鍼が効果的という実験結果をアメリカのメリーランド医科大学が2010年代に発表しています。

2011年メリーランド医科大学
「抗がん剤パクリタキセルによって引き起こされた末梢性神経障害のネズミの電気鍼療法で生産したアロディニア・痛覚過敏に関するオピオイド受容体拮抗剤の作用」
The effects of opioid receptor antagonists on electroacupuncture-produced anti-allodynia/hyperalgesia in rats with paclitaxel-evoked peripheral neuropathy.
Meng X
Brain Res. 2011 Sep 26;1414:58-65. doi: 10.1016/j.brainres.2011.08.004. Epub 2011 Aug 7.

以下、引用。

同様に、以前の研究では2Hz電気鍼は100Hz電気鍼と比較して強く長いアロディニアを抑制した。

2Hz電気鍼は100Hz電気鍼よりも器械的アロディニアと温度感覚の痛覚過敏についても神経障害性疼痛ネズミについて大きくてより長い影響を及ぼすこともわかった。

このように、低周波の電気鍼は代謝性・毒性・外傷性の局所神経の傷によるアロディニアや痛覚過敏を長期間抑制する効果がある。

2014年メリーランド医科大学
「鍼・電気鍼による持続性疼痛へのメカニズム」
Mechanisms of acupuncture-electroacupuncture on persistent pain.
Zhang R
Anesthesiology. 2014 Feb;120(2):482-503. doi: 10.1097/ALN.0000000000000101.

以下、引用。

これらの研究は電気鍼が痛みの状況と健康な状況では異なっていることを示し、電気鍼が感覚と炎症性の痛みに働きかけ、100ヘルツよりも２ヘルツまたは10ヘルツがより炎症と神経因性疼痛を阻害することを示している。電気鍼は生物活性化学物質の活動を通して局所レベル・脊髄レベル・上脊髄＝中枢神経レベルのメカニズムの活動によって痛みをブロックする。

『熱敏灸の棒灸療法(腧穴热敏化:艾灸新疗法2006)』では、変形性膝関節症には
(１)局部の圧痛点
(２)膝関節周囲の穴位
(３)腎兪から膝に響かせる。

ですが、『実践・熱敏灸(热敏灸实用读本2009)』では、変形性膝関節症には
(１)局部の圧痛点
(２)内膝眼・外膝眼
(３)梁丘・陰陵泉
(４)血海・陽陵泉