日本中医学会第9回学術総会『次世代につなぐ中医学』

2019年10月5日、6日にタワーホール船堀で開催された日本中医学会第9回学術総会に出席させていただきました。『次世代につなぐ中医学』を総合テーマに大変興味深いプログラムが目白押しでした。

東京医科歯科大学の別府正志先生の会頭講演、『傷寒論の三陽三陰編について ~初学者の時にこそ押さえておきたい”混乱しない”傷寒論~」はめちゃくちゃ面白く、『宋以前傷寒論考』を読んだ方ならすごく楽しめたと思います。最後、時間がなくて少陰病、厥陰病が省略になったのが残念です。『中医臨床』にあるそうなので、これは必ず読むつもりです。

シンポジウム①の小野直哉先生の「世界の統合医療の現状と動向」も素晴らしい講義でした。アメリカNIHやアメリカ国防総省と陸軍・海軍・空軍・海兵隊での鍼灸研究、インドのミニストリー・オブ・アーユシュ(伝統医療省)の動向、キューバの統合医療の紹介です。

「どうすればキューバのようになれるのか」という質問に「初等教育から統合医療を子どもに根付かせる」と答えられ、その通りだと思いました。キューバではそれで鍼灸やハーブが根付きました。今、中国では小中高生に中医学を教え始めています。

中医学会なのに「中国のことは皆さん、ご存知なので…」と、あえてインドやキューバの紹介に徹したのが素晴らしいと感じました。外部からの視点でしか分からないことの方が多いからです。

岡田研吉先生の「『宋以前傷寒論考』六経不伝論」は今回のメインイベントでした。名著の『宋以前傷寒論考』(東洋学術出版社)も凄い内容でしたが、今回の岡田先生の発表は革命的です。

『傷寒論』の太陽病「針足陽明、使経不伝則癒」という記述から鍼灸古典を徹底調査されます。『脈経』『諸病源候論』『銅人シュ穴鍼経図経』『鍼灸節要』『鍼灸問対』などの鍼灸古典の傷寒論に関する記述を全て調べ直すと、太陽病が陽明経に伝経するのを防ぐのに、古典によって陽明胃経の補瀉が逆になることが明確になりました。

『常用シュ穴臨床発揮』の李世珍先生や『杉山真伝流』の名前まで出てきて驚きました。傷寒論の鍼灸の記述から東洋医学の歴史全体を見直す内容です。長年の疑問が氷解しました。

傷寒論の鍼灸記述から金元時代の医学革命を分析しなおしています。これは東洋医学の歴史全体の見直しにつながるものであり、この講義を聞く前と聞いた後では全く東洋医学の歴史の見方が変わるパラダイム・シフトを起こすような内容でした。「鍼灸と漢方の関係」「六経弁証や弁証論治」など全ての認識が変わります。

ブースを出展していた中国のAI中医診断ソフトはまだ英語と中国語だけですが、まもなく日本語版も出るそうです。中国の病院でAI弁証論治として既に使われており、膨大なビッグデータから3カ月ごとにアップデートするそうです。

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