抗ヒスタミン剤と認知機能障害

2018年4月25日
ニューヨークのアルツハイマー薬発見財団『コグニティブ・バイタリティ』に理事のユーコ・ハラ博士によって書かれた記事
「アレルギー薬はあなたの脳を傷つけるの?」
CAN ALLERGY MEDICATIONS HARM YOUR BRAIN?


鍼灸学校で臨床医学各論を教えてくれたのは、若い大学院で研究されている医師でした。論理的な方で、その合理的な思考法に影響を受けました。その先生がアレルギー性鼻炎と抗ヒスタミン剤について講義してくれた内容は20年以上たった今でも覚えています。

「アレルギー性鼻炎には抗ヒスタミン剤が処方されます。抗ヒスタミン剤はアレルギー性鼻炎を治せませんが、夜に眠れるようになるからです。世間では誤解している人が多いですが、抗ヒスタミン剤は『眠れるようにする』だけで、鼻炎の症状は改善しません」と断言されていました。

私は当時、ひどいアレルギー性鼻炎と花粉症だったため、抗ヒスタミン剤を常用していました。しかし、この講義を聞いて抗ヒスタミン剤の脳への作用を知り、完全に薬を止めました。本当にこの先生には感謝しています。私はそれ以来、抗ヒスタミン剤と認知機能障害に関する論文を読んできましたが、この記事は最もまとまっています。

以下、引用。

アレルギーの季節となり、我々の多くはキャビネットにアレルギー薬を取りに行くだろう。しかし、賢く選ぶことが重要である。アレルギー薬は脳の健康を損ない、認知症リスクを高めるからである。

ジフェンヒドラミン(日本では商品名レスタミン®) は第1世代抗ヒスタミン剤であり、アレルギー、風邪、クシャミ、涙で処方されるがアセチルコリンをブロックする。

アセチルコリンは学習と記憶における重要な神経伝達物質である。ジフェンヒドラミンは抗コリン薬に分類され、抗コリン薬は認知症のリスクを54パーセント高める。

短期的なジフェンヒドラミンの副作用は眩暈、眠気、混乱、目のカスミ、鎮静、排尿困難、便秘、そして低血圧である。

多目的高品質なヒトでの臨床試験ではジフェンヒドラミンは警戒性、注意力、記憶、作業の実行機能、反応時間、用心などの認知機能の障害が起こった。

これらの研究で、ジフェンヒドラミンは疲労と眠気を増やし、やる気を減らした。

老人病院での観察研究では、ジフェンヒドラミン治療は顕著に譫妄症状と不注意、わけのわからない発言、変性意識状態を増やした。肝機能や腎機能の障害のある高齢者は特に副作用を被る。

抗ヒスタミン剤は第1世代と第2世代で副作用の程度が違うことが指摘されています。第2世代のロラタジン(商品名クラリチン®︎)やフェキソフェナジン(商品名アレグラ®︎)が比較的、認知機能障害が少ないという研究は発表されています。

2014年『日本で販売されている第2世代ヒスタミンの中枢神経システムへの影響:PIRを使用した内服薬間の差異のレビュー』
Central Nervous System Effects of the Second-Generation Antihistamines Marketed in Japan -Review of Inter-Drug Differences Using the Proportional Impairment Ratio (PIR)-
Tatsuya Isomura,et al.
PLOS ONE

しかし、商品名、アレグラ®︎の添付文書に、副作用として「神経過敏・悪夢・睡眠障害」が書かれているように、第2世代抗ヒスタミン剤は血液脳関門を通過して人間の認知機能や精神機能に確実に影響を与えます。だから、抗ヒスタミン剤を服用しての自動車の運転について注意喚起があります。

私は20年以上前に聞いた講義のお蔭で抗ヒスタミン剤をやめて、鍼灸治療でアレルギー性鼻炎の症状がなくなったので、本当にラッキーだったと感じています。

以下論文に、認知機能障害を起こす薬剤が掲載されています。

「薬剤による認知機能障害」
水上勝義
『精神神経学雑誌』2009年111巻8号
第105回日本精神神経学会総会2010-11-01

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