グローブ手袋は感染症のリスクを増やすか

2014年9月19日『ナーシング・タイムス(看護師新聞)』
「グローブ手袋は、感染症のリスクを増やすの?」
Does glove use increase the risk of infection?

以下、引用。

グローブ使用は臨床現場では拡がっているが、研究は不適切な使用により、グローブ使用が患者を感染させるリスクを増大させることを示唆している。

グローブ手袋の臨床現場での誤った使用はしばしば患者を感染させるリスクを増大させるという明白な証拠が存在する。新たな証拠は、グローブをはめるというヘルス・プロフェショナルの決定が2つの影響、社会化および仲間からの期待を反映しており、感情的な嫌悪感や自己防衛の感覚を反映していることを示唆している。

食品衛生の分野でも米国では2007年ぐらいに「寿司を握るときにグローブをはめなくても良い」という指針が出ています。外科手術でも、外科医のグローブは手術中の感染症の原因の1位です。アメリカのすし屋のプラスティック・グローブも、外科医のサージカル・グローブもはめて数時間すれば密閉されて湿度が高くなり、雑菌が繁殖します。そして、グローブをはめることで手洗いが雑になります。寿司を握る時にグローブをはめて、その上から手洗いする人はいません。肘まで覆うグローブでなければ、グローブを手洗いしても水が入るはずです。

以下、2007年アメリカCDC論文「食品産業労働者の手の消毒プラクティスに関する要素」(※1)より引用。

手洗いとグローブ使用は相互に関連しており、手洗いはグローブを使用している活動ではより少なくなる傾向がある。

※1:「食品産業労働者の手の消毒プラクティスに関する要素」
Factors related to food worker hand hygiene practices.
J Food Prot. 2007 Mar;70(3):661-6.

つまり、EBM衛生学の立場から言えば、何時間もグローブを着用することは感染の可能性を増やすだけの非合理行動なのです。グローブ着用を短時間に留めて、血液を触る可能性などの合理的根拠があり、1つの手技が終わったらすぐにグローブを廃棄するなら合理的行動です。しかし、鍼灸施術で数時間グローブを着用し続ければ同じだと思います。

そして、この『ナーシング・タイムス』の論文は「なぜ医療従事者は長時間グローブをつけつつ手洗いをしないという非合理行動を行うのか」という視点から書かれており、社会化、同調圧力、感情的な嫌悪感、自己防衛の感覚といった背景が原因であると論じています。

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