インド政府の鍼のガイドラインとチャクラ・アキュパンクチャー

2019年3月20日
「インド保健家族福祉省の部門間委員会(IDC)は、鍼治療のガイドラインを作成する」
IDC to develop guidelines for acupuncture therapy

以下、引用。

インド保健・家族福祉省の健康研究部門は新しい治療システムのための部門間委員会(IDC)を構成する。この提案は、鍼を医学システムとして認識したことを受けてIDCで考慮される。

インド政府内でIDCの報告書が考慮され、ドクターV.M.カトチが議長をつとめる鍼に関する頂上委員会が鍼のヘルスケアと治療システムに関するガイドラインを作成する。

同委員会はヘルスケア治療システムとしての鍼の規制や推進ガイドラインの細部を組み立て、鍼の支払いも同じようにガイドラインを作成する。また、頂上委員会は鍼のガイドラインの実装の政府部門を専有する。

頂上委員会は3カ月以内に最終報告書を提出する。鍼に関する件は、鍼の頂上委員会が提出する報告書に基づいて行われる予定である。

2019年2月、インド政府は鍼を独立した医学システムとして認めました。もともとインドの鍼は法律上、医師と医学士のみに許されていました。

2014年、モディ政権の誕生でインド政府保健・家族福祉省にあった代替医療の管理部門はAYUSH省として独立しました。AYUSHとは「アーユルヴェーダ(Ayurveda)」=インド伝統医学」「ヨーガ(Yoga)とナチュロパシー」「ユーナニ(Unani)=イスラム伝統医学」「シッダ医学(Siddha)」「ホメオパシー(Homoeopathy)」の略です。

2017年5月25日、インド政府とドイツ政府が伝統医学に関する二国間協定を結びました(※1)。

2017年11月9日 、インド政府とUAE(アラブ首長国連邦)政府は 伝統医学に関する二国間協定を結びました(※2)。

2017年12月19日、インド政府とイラン政府は 伝統医学に関する二国間協定を結びました(※3)。

2018年1月3日、インド政府とスリランカ政府は 伝統医学に関する二国間協定を結びました(※4)。

2018年1月10日、インド政府とマレーシア政府は 伝統医学に関する二国間協定を結びました(※5)。

2018年1月16日、インド政府とイスラエル政府は伝統医学に関する二国間協定を結びました(※6)。

2018年3月13日、インド政府と世界保健機構WHOはインド伝統医学を推進するアグリーメントを結びました(※7)。

2018年4月18日、インド政府のモディ首相とイギリスのチャールズ皇太子はロンドンにインド伝統医学エクセレンス・センターを開きました(※8)。

モディ政権は現在、伝統医学に大変力を入れてアーユルヴェーダをWHO世界保健機構に承認させ、インド伝統医学を世界中に普及し、輸出しています。

さらに2019年2月には鍼を独立医学システムと認め、2019年3月には鍼に関するガイドライン作成に着手しました。伝統医学・代替医学に関する政策はものすごいスピード感です。BRICsを構成するブラジル、インド、中国が代替医療・補完医療・統合医療に舵を切っているのは歴史的です。

UAEのドバイの高級マンションはほとんどインド人が住んでおり、「ドバイは世界で一番美しいインド人の街」と言われています。人口240万人のうち75パーセントがインド人です。カタールの人口180万人のうち、カタール国籍者は27万人でインド国籍者が54万人と約2倍です。

インド移民は現在、中東への移民が最も多いです。インド・パキスタンから中東は文化が連続しています。インドは民族と言語が多様であり、自分の文化の言語プラス英語とヒンディー語が話せるような、3言語以上の複数言語教育を普通に学校で受けています。

インドは16世紀からムガル帝国のイスラム世界であり、イスラム教を通じて中東イスラム圏につながっていますし、インド国内にイスラム伝統ユーナニ医学の学校もあります。イギリス植民地だったので英語も堪能ですが、ボンディシェリのようなフランス旧植民地やゴアのようなポルトガル旧植民地も抱えてヨーロッパとのつながりも強いです。さらにアラビア語世界である中東にも現在、大量のインド人移民が移住しています。さらに、東南アジアのシンガポールとマレーシアの公用語の一つが南インドのタミル語であり、東南アジアにも印僑文化が根付いています。

インドは英語を共通語として多言語・異文化を尊重する民主主義の価値観をもっており、IT教育も進んでいます。共産主義一党独裁で中国語と中国文化を世界にひろめようとしている中国共産党政府とはかなり価値観が違います。

国連の予測でインドの人口は2100年には中国の1.5倍となります。

2017年6月22日『日本経済新聞』
「2100年の世界人口は112億人、インドが首位に 国連予測 」
※2100年のインド人口は15億1700万人(1位)、中国は10億2100万人(2位)、日本は8,500万人(29位:現在は1億2,000万人で11位)
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM21H5H_R20C17A6FF2000/

スタンダード・チャータード銀行の予測では、2030年にインド経済はアメリカ経済よりも大きくなります。

2019年1月9日『エコノミック・タイムス』
「インドは2030年には、アメリカを上回り世界第2の経済規模となる」
India likely to surpass U.S to be world’s second largest economy by 2030
https://economictimes.indiatimes.com/…/article…/67448036.cms

私は21世紀の世界は「中国化」ではなく「インド化」すると思います。現在のグーグル、マイクロソフト、アドビなどアメリカIT企業のCEOや経営幹部はインドで教育を受けた人がほとんどです。

雑誌『メディカルアキュパンクチャー』に掲載されたアメリカのヴァーモント医科大学の医師、クリストファー・チェイス先生が書いた「インドのチャクラシステムと中国の五行理論を統合した鍼システム」の論文には驚きました。

2018年8月
「感情の幾何学:チャクラ・アキュパンクチャーと五行学説を使って、パーソナリティー・アーケタイプを描写する」
The Geometry of Emotions: Using Chakra Acupuncture and 5-Phase Theory to Describe Personality Archetypes for Clinical Use.
Chase CR.
Med Acupunct. 2018 Aug 1;30(4):167-178. doi: 10.1089/acu.2018.1288.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30147818
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6106753/

クリストファー・チェイス先生は2013年に日本の松本岐子先生の「キーコ・スタイル」の論文も発表されています。

2013年「慢性手術後の愁訴の患者のマツモトキーコ・スタイルの鍼:観察研究」
Treatment of Patients with Chronic Postoperative Complaints with Kiiko Matsumoto Style Acupuncture: An Observational Study
Christopher R. Chase
Medical Acupuncture Vol. 25, No. 5 Published Online: 16 Oct 2013
https://www.liebertpub.com/doi/abs/10.1089/acu.2013.0981

インドのチャクラ学説と中国の五行説を混ぜて日本式鍼で治療するという西洋麻酔科医、チェイス先生のやり方は、まさに何でも混ぜ合わせる多神教のインド的混淆主義シンクレティズムです。

今、日本は自信を喪失している反動としての排外主義に染められていますが、本当の日本は伝統的には多神教の混淆主義です。インド人の友人は京都で神社やお寺に行ったら、サラスヴァティー(弁財天)、ガネーシャ(歓喜天・聖天)、ブラフマー(梵天)、ラクシュミー(吉祥天)、ダーキニー(稲荷)とインドの神様だらけで「ここはインドかと思った」と言っていました。京都、奈良の神社仏閣は日本の伝統文化なので、日本人本来の姿である多文化共存の多神教・混淆主義なのです。

江戸時代の日本には多様な鍼灸流派が存在していました。明治時代から現代まで日本鍼灸は多様な流派が同時に存在してお互いに混ざり合っていました。それが標準化された中国の中医学鍼灸とは大きく違う特徴だと思います。

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※1 :2017年5月25日『ヒンドゥスタンタイムズ』
「インドとドイツは、伝統医学の研究でコラボレーションする」
India and Germany to collaborate for research in traditional medicine
http://www.hindustantimes.com/…/story-jHIuTlBSI2Hp1rhMihvZl…

以下、引用。

代替医療を促進するためにドイツとインドは重要な2国間協定に調印した。共同研究、トレーニング、科学的な代替医療分野の構築はアーユルヴェーダ、ヨガ、ナチュロパシー、ユーナニ、シッダ医学とホメオパシーの分野で行われる。

※2:2017年11月9日「アラブ首長国連邦(UAE)は代替医療を促進する『ハブ』となる」
UAE to be hub for promoting alternative medicines
http://gulfnews.com/…/uae-to-be-hub-for-promoting-alternati…

以下、引用。

アラブ首長国連邦政府とインドは最初の国際的AYUSH会議で議論をした。彼らはAYUSHを促進し、UAEでホメオパシーの大学と研究所を作り、そこにAYUSHを確固としたものにする二国間協定について調印したと発表した。

※3:2017年12月19日イラン国営放送『パールス・トゥデイ』
「イランと中国の間で、保健や伝統医学に関する協力合意書が調印」
http://parstoday.com/ja/news/iran-i37969

※4:2018年1月3日「インド政府とスリランカ政府は、伝統医学を促進するアグリーメントにサインした」
India, Sri Lanka to sign agreement to promote traditional medicines
https://www.biospectrumindia.com/…/india-sri-lanka-to-sign-…

※5:2018年1月10日『ユナイテッド・ニュース・オブ・インディア』
「第5回インド=マレーシアの伝統医学協力における二国間ミーティング」
5th India-Malaysia bilateral meeting on cooperation in Traditional Medicine
http://www.uniindia.com/5th-india-malaysia-b…/…/1101884.html

※6:2018年1月16日「インドとイスラエルはホメオパシー研究を後押しする『二国間覚書(MOU:Memorandum Of Understanding)』に調印した」
India, Israel ink MoU to boost research in homoeopathy
http://www.moneycontrol.com/…/india-israel-ink-mou-to-boost…

※7:2018年3月13日『ビジネススタンダード』
「インド政府はWHO世界保健機構と伝統医学を推進する沢山のアグリーメントにサインした」
Government Signed many Agreements with WHO for Promoting Traditional Medicine
http://www.business-standard.com/…/government-signed-many-a…

※8:2018年4月18日イギリスの新聞『エクスプレス』
「チャールズ皇太子は、インド伝統医学・エクセレンス・センターを除幕した」
Prince Charles unveils plaque for Indian traditional medicine centre of excellence
https://www.express.co.uk/…/prince-charles-science-museum-p…

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