肺炎1号:用薬は用兵の如し

2020年2月14日
「湖北省中医院薬方『肺炎1号』が正式に公布された」
湖北省中医院药方“肺炎1号”正式公布

湖北省中医院は新型コロナウイルス感染症の「疑い例(擬似)」やCT画像のみの「臨床診断」及びPCR核酸検査による「確定診断」に用いる「肺炎1号」を発表しました。

「和解少陽、化湿解毒」を目標に、柴胡陥胸湯・達原飲をベースにつくられています。達原飲は最初のガイドラインから初期症状に使われていましたから、より洗練されている印象です。

“和解少阳,化湿解毒”。基础方剂为:柴胡陷胸汤、达原饮等。柴胡20g,黄芩10g, 法半夏10g,党参15g,全瓜萎10g,槟榔10g,草果15g,厚朴15g,知母10g,芍药10g,生甘草10g,陈皮10g,虎杖10go,服法:日1剂,水煎服,日3次,早中晚各一次,饭前服用。

同時に濃厚接触者には藿香正気散を使うのも方針が一貫しています。

つまり、湖北省の中医の先生たちは新型コロナウイルス感染症の「疑い例」「臨床診断」「確定診断」の軽症例、「濃厚接触者」の治療こそがポイントだと考えて、戦略的にその部分に治療の重点を置いているのが読み取れます。しかもすごいスピードでフィードバックされて武器や闘い方が洗練されていきます。これはリアルタイムで見ないとその凄さは伝わらないです。

柴胡陥胸湯(さいこかんきょうとう)は『傷寒論』の「小柴胡湯」と「小陥胸湯」の合方です。出典は金元四大家の時代で、日本の尾台榕堂先生や浅田宗伯先生の愛用の処方です。

柴陥湯① 古典的解説
茨城大学人文字部教授 真柳 誠
『日病薬誌』Vol.33, No.5, p.594-595(1997)
http://square.umin.ac.jp/mayanagi/paper03/radio8.html

達原飲(たつげんいん)は『温疫論』の温病学の処方であり、少陽三焦の膜原を通します。『傷寒論』と温病学の処方の合方が「肺炎1号」であり、まさに中国伝統医学の歴史が背景にあります。「用薬は用兵の如し」という名言を思い出しました。

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