新型コロナウイルス:鐘南山先生の警戒と上陰下陽現象

2020年2月26日『新藍網』
「広州で13人が退院して再び陽性化した?鐘南山:警戒してください!」
广州13个出院病例复阳?钟南山:警惕!

これは日本で「再感染」と報道されている問題であり、西洋医学の最前線です。四川省・成都で退院した患者がいったんPCR核酸検査で陰性であったのに、自宅で10日間の経過観察の後、再検査すると再びPCR核酸検査が陽性となりました。

さらに、広州で2月23日に武漢から広州にきて14日間隔離されていた人が、さらに14日間の合計28日間隔離されてPCR核酸検査をすると陽性となりました。

広州の疾病予防センターは退院した患者の14%にPCR核酸検査「陰性」診断による退院後の「再度の陽性」という現象がみられることを報告しました。

これらの 「再度の陽性」患者から他の人への感染を調べたところ、感染した事例はないというで「再感染」は誤訳と思われますが、鐘南山先生は「警戒をおこたるな!」と警告されています。

以下、引用。

(広州第8人民医院ICU主任医師である)李粤平は、新型コロナウイルスの病人は退院後も継続して隔離する必要があると述べた。現在、すでに疾病予防センターは退院後にさらなる14日間隔離を行っている。咽頭ぬぐいスワブ標本と肛門からの標本の両方が連続2回陰性になるまで家に帰ることはできない。新型コロナウイルスが腸管や下気道にある期間については誰も知らないため、警戒する必要がある。

鐘南山先生も「われわれの新型コロナウイルス理解はまだ初歩の段階であり、警戒しなければならない」と述べています。

2020年2月22日に鐘南山先生は新型コロナウイルス患者の尿中にウイルスがあることを実験室で確認しました。

2020年2月22日「警告!尿液中の成分に新型コロナウイルスを検出した鐘南山研究チームが回答した」
警惕!尿液中分离出新冠肺炎病毒,钟南山团队回应了
http://news.stcn.com/2020/0222/15655109.shtml

84歳の鐘南山先生は本当に世界の医学研究の最前線にいます。鐘南山先生は新型コロナウイルスの潜伏期間が24日という長期間に及ぶことや、発熱を半数が示さないという驚愕の論文を発表して世界に衝撃を与えましたが、次に問題にしているのは「咽頭ぬぐい液スワブはPCR検査で陰性となったが、肛門ふき取りスワブはPCR検査で陽性となる」という未知の現象や「PCR核酸検査で陰性となり、退院となった人が再び陽性となる」という未知の現象です。特に「咽頭ぬぐい液スワブは陰性で、肛門拭き取りスワブは陽性」となる問題を「上陰下陽現象」と呼んでいます。

2020年2月23日
「一度治療して退院した者が10日後に再び核酸検査で陽性となっている?専門家が解説します」
一治愈者出院10天后却复检出核酸阳性?专家这样解释
https://www.sohu.com/a/375144163_162522

以下、引用。

「上陰下陽現象」は注目に値する。

浙江省の一人の男性の痰の咽頭ぬぐい液スワブはPCR核酸検査で陰性であり、糞便のPCR核酸検査は陽性だった。重慶でも咽頭ぬぐい液スワブは陰性で、肛門拭き取りスワブは陽性という症例が多数出現した。

「これらの現象に注意を払うことが重要だ」と北京の呼吸器内科の専門家は述べる。科学研究は新型コロナウイルス肺炎の糞便中に新型コロナウイルスを分離しており、糞口経路と呼吸感染の可能性を提示している。上陰下陽現象が出現してもおかしくない。呼吸器にウイルスがいなくなり、その後に腸管で消失するという順序がみられるからである。

中国科学アカデミー会員の院士である鐘南山が率いるチームは2月22日に、新型コロナウイルス肺炎患者の尿液中から新型コロナウイルスを分離しており、近日中に学術雑誌“ The Lancet Gastroenterology & Hepatology”に発表する。同じコロナウイルスであるSARSとМERS中東呼吸器症候群ウイルスは糞便に排出するという証拠があり、新型コロナウイルス肺炎患者の糞便も厳格な予防措置が必要となる。この点を考慮して、専門家はふたたびトイレの水を流す際にはトイレの蓋を閉めてから流すように注意している。

鼻腔、咽頭や気管、肺胞、糞便(腸管)や尿中でのウイルス量が病期により異なっていることを鐘南山先生は分析されているようです。また、鐘南山先生はSARSとの激闘で知られるにも関わらず、その成功体験に引っ張られることなく、むしろSARSと新型コロナウイルスの違いに世界で一番最初に気づき、表現は悪いですが医学の新発見を心の底から楽しんでいるようにさえ見えます。

PCR核酸検査が一度、陰性になってから陽性になるという謎は、
(1)PCR核酸検査の感度が低いこと。
(2)咽頭ぬぐい液スワブのウイルス量が少なくて、核酸検査の濃度に到達しないこと
(3)医療スタッフの検出の技術が未熟であること
(4)検査キットの品質にばらつきがあること
などが考えられています。

広州の医師たちは、PCR核酸検査が陰性となり、条件を満たした退院後も14日間の隔離を行い、 咽頭ぬぐいスワブ標本と肛門からの標本の両方が連続2回、陰性になるまで家に帰さないそうです。合計4回のPCR核酸検査での連続の「陰性」が必要であり、これにCT画像診断と症状が無症状であるという判断なら診断における総合的な感度・特異度はものすごく上がります。

それでも「再度の陽性」 という現象があるため、鐘南山先生は「われわれの新型コロナウイルス理解はまだ初歩の段階であり、警戒しなければならない」と警告し続けています。自然の猛威の前で科学者として「謙虚であり続ける」というのはこういう心持ちなのだと思いました。

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