【新型コロナウイルス】渡航制限のエビデンス

2020年2月4日『フォーブス』
「渡航制限では新型コロナウイルスの感染拡大を防げない理由」
https://forbesjapan.com/articles/detail/32141

以下、引用。

新型コロナウイルスへの対応で、厳しい入国制限や強制隔離を課すという米政府の決定は、公衆衛生に関する従来の勧告と相いれないものだ。たとえば、ジョンズ・ホプキンス大学の健康安全保障センターなどは最近、感染症のパンデミックに備えて「イベント201」というシミュレーションを実施しているが、そこで勧められた対策と今回の措置はまったく逆行している。

昨年10月に開催されたイベント201はじつに啓発的だった。そこで国際的な専門家チームが訴えたメッセージでは、渡航禁止は逆効果であり、経済に甚大な打撃を与える恐れがあることを明確に指摘していた。また、エイズやエボラ出血熱などの流行でみられた通り、感染者への懲罰的な対応は感染を隠そうとする動きにつながり、かえって感染症の流行に拍車を掛けてしまうものなのだ。

公衆衛生学の学問的最高峰であるジョンホプキンス大学がマイクロソフト創業者のビル&メリンダ・ゲイツ財団の資金を受けて開催した歴史的な公衆衛生学の「イベント201 グローバル・パンデミック演習」は2019年10月に開催され、渡航禁止や旅行制限に科学的根拠は無く、逆に流行に拍車をかけることを勧告しています。

Public-private cooperation for pandemic preparedness and response

「国家、国際組織、グローバル企業は、ともに旅行と貿易を深刻なパンデミックの間でさえ維持すべきである。」
「イベント201」ホームページより引用。

入国制限や隔離、渡航制限にウイルス拡大を防ぐエビデンスは存在しません。公衆衛生学の国際的常識なのです。WHOも公式に「渡航制限には科学的根拠が無い」と何度も声明を出しています。

以下、引用。

(アメリカ政府が対応したのは)右派の外国人嫌悪だったように思える。

トランプ政権を支える「錆びついたラストベルト」の人種差別主義者の外国人嫌悪や反知性主義が渡航制限や隔離政策の背景にあります。反知性主義者とはデータやエビデンスよりも肉体感覚やプリミティブな感情を基準に物事を判断する人と定義されています。

『WIRED』の記事も明確です。

2020年2月7日『WIRED』
『渡航禁止と隔離ではもはや新型コロナウイルスの勢いは止められない』

以下、引用。

WHOや専門家からは「何らの移動や交易の制限」の効果に疑問の声が上がっている。感染拡大を止める効果がほとんどなく、むしろデメリットのほうが多いと考えられているからだ。

新型コロナウイルスの感染拡大を防ごうと国家規模の計画が進められている。これによって国際貿易には亀裂が生まれ、人権が侵害され、地方自治体や州の公衆衛生部門では業務がパンクするかもしれない。この計画がウイルスの拡散を抑えられないことはほぼ確実だろう。

渡航禁止令と隔離は疾患の拡大防止策として数世紀の歴史をもつ。しかし、これらはまさに世界保健機関(WHO)が各国に実施しないよう求めている対策でもある。

「他国の国民に対する渡航禁止令は非生産的かつ非人道的で国際法に反している。ホットゾーン(感染拡大の中心地)以外の中国本土を訪れた人物がウイルスに晒される可能性を示す根拠は少なく、これよりずっと制約の少ない手段も使うことができる」とジョージタウン大学で公衆衛生法を専門とする教授のローレンス・ゴスティンは語る。「渡航禁止令はずいぶん行き過ぎたやり方だと思う。それに政府の態度が独善からパニック、過剰反応へと次々に傾いていくのではないかと心配だ」。

渡航禁止令と隔離は近年の他のアウトブレイク(集団感染)を封じ込める上でも役には立たなかった。「渡航禁止令にそもそも効果があるという説得力のある証拠は出ていないと思う。このような呼吸器系ウイルスには効果を発揮する可能性が低い。そういうウイルスはあまりに素早く移動してしまうから」とジョンズホプキンス大学ヘルスセキュリティセンターの疫学者のジェニファー・ヌッツォは語る。

「これは効果がなかっただけでなく、パンデミックを拡大させた可能性さえある」とヌッツォは指摘する。なにしろ、病気になっているかもしれない人々と同じところに閉じ込められるのは、自分も病気になりやすい環境でもある。家に閉じこもり、ウイルスをもらってきた子どもの面倒を見る親に聞けば、誰もがそのことを知っている。しかも呼吸器系ウイルスは、こうした院内感染で拡大しやすい。

欧州と米国の理論モデル研究者たちによって2011年に発表されたある研究によると、H1N1ウイルスに対する渡航禁止令によってメキシコに行き来する飛行機移動は40パーセント減少した(そして経済面で莫大な影響をもたらした)。ところが、インフルエンザの拡大はまったく抑えられていなかったという。

英国では14年にインフルエンザのアウトブレイクに対する渡航制限の効果について、23件の異なる研究結果に基づいてメタ解析が実施された。この解析によると、感染拡大の速度を遅らせる効果はわずか3パーセント未満だったと結論づけられている。その効果はアウトブレイク後期になってから制限がかけられた場合や大都市で実施された場合にはさらに低かったという。

また、14年に西アフリカで起きたエボラ出血熱のアウトブレイクを調査した国際研究チームもほぼ同じことを見出した。渡航制限に何らかの効果があったとしても、それは他国への感染拡大をわずか数週間遅らせたにすぎないものだったという。

こうした禁止令は他の面からも国際的な保健事情をめちゃくちゃにしてしまうリスクがある。「進んで発症例を報告しようとしている国々に、(禁止令によって)不当なペナルティを与えている。しかも経済的、政治的にです。米国以外の国々にとってコロナウイルスを探すことや、他国に対してそれを発表することが一番の利益にならないかもしれない──そんなメッセージを禁止令は送っているも同然だ」とヌッツォは話す。

ジョンホプキンス大学とビル・ゲイツは公衆衛生学の大規模イベントで「渡航制限や隔離には科学的根拠は無い」とアピールし、WHOも何度も同じ内容を声明していますが、結果は医療従事者も含めて恐怖にかられた人々がパニックを起こし、反科学、反知性主義に向かっているわけです。

最初の1分だけでも見て欲しい、ジョンホプキンス大学とビル・ゲイツ財団の「イベント201パンデミック演習」の動画です。2019年10月に新型コロナウイルスが南米で発生し、世界中で渡航制限と貿易制限、株式市場暴落からの金融危機を引き起こすというシミュレーションを行っています。

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