パンデミックと情報操作と社会的距離のエビデンス

2020年3月11日『朝日新聞グローブ』
『ミリタリーレポート: 新型コロナ、封じ込めの「最大の敵」は情報操作だ スペインかぜの教訓』

アメリカのCDC疾病予防管理センターには悪名高い、軍とのつながりをもつ情報機関であるCDCエピデミック・インテリジェンス・サービスがあります。

EIS:Epidemic Intelligence Service
https://www.cdc.gov/eis/index.html


公衆衛生学の歴史を真摯に研究したことがある方なら、CDCはインテリジェンス情報機関を持ち、アメリカ軍情報部と深いつながりがあり、アメリカの生物兵器戦争を担う軍事的な重要機関であることを知っています。

ジョン・ホプキンス大学が行った公衆衛生シミュレーション演習は最初の3回は全てバイオテロの軍事演習であり、国家安全保障と関係していました。

今回の新型コロナウイルスでも公式にハイブリッド戦ドクトリンを持つロシアはフェイクニュース攻撃を仕掛けていることが確認されています。

中国政府は以前から中国版ハイブリッド戦である「超限戦」を仕掛けており、同じくフェイクニュース攻撃を西側諸国に仕掛けています。

以下、引用。

米軍関係者や感染症対策専門家たちが取り上げる「1918-インフルエンザ・パンデミック」は第1次世界大戦末期の1918年春にアメリカやヨーロッパで流行し、引き続き1918年秋には世界中で流行、さらに1919年春以降にも世界中で流行した3波に渡る世界規模でのインフルエンザ大流行を指す。

この1918-インフルエンザはスペインインフルエンザ、またはスペインかぜとも呼ばれ、世界中での感染者数は5億人前後と推定され、死亡者数は4000万~1億人とも見積もられている。記録が確かな範囲での人類史上最大のインフルエンザによるパンデミックとされている。

スペインインフルエンザの感染は、以下に述べるように第1次世界大戦に参戦したアメリカ軍と密接な関わりを持っていたため、現在も米軍内部ではインフルエンザ対策には重大な関心と努力が払われている。そのため今回の新型コロナウイルスに関しても当初から米軍情報関係者たちは深刻な危惧を抱き、トランプ政権のスローテンポな対策に強く警鐘を鳴らしたのだった。

【隠蔽されたインフルエンザの流行】

その主たる原因は当時の主要政府・軍機関による情報隠蔽・情報操作にあったと指摘する声は少なくない(John M. Barry著「The Great Influenza: The Story of the Deadliest Pandemic in History」参照)。

発生源がどこであったにせよ、第1次世界大戦の主戦場だったヨーロッパと第1次世界大戦に参戦しヨーロッパの戦場に将兵を送り出し始めていたアメリカでは、将兵の間でも民間人の間でもインフルエンザが猛威を振るい、莫大な数の感染者と死亡者が出た。

しかしながら戦場となっていたヨーロッパでは、連合国側・同盟国側いずれの政府とも戦争を遂行するために高度な情報統制を敷いていた。そのうえ、大量の将兵が病気に感染している情報が敵方に知れると戦局が不利になるため、大感染に関する情報はイギリスでもフランスでもドイツでも敵味方を問わず、ひた隠しに隠したのだった。

【アメリカにおける情報統制】

一方、アメリカでもウッドロー・ウィルソン政権は第1次世界大戦への参戦に際し、米国内の情報を統制し米国民の士気を高揚させるために、プロパガンダ機関としてのCommittee on Public Information(広報委員会)を創設するとともに、Sedition Act of 1918(1918年の扇動罪)を制定した。

これらの諸施策によって、政府への忠誠を欠いたり、不敬、中傷的であったり、無礼な表現や論調、戦争遂行努力を妨害するようなあらゆる行為を犯罪として取り締まることになった。

そのため、アメリカ軍や連合国軍内でのインフルエンザの大流行も隠蔽されたのだった。実際の戦場とはならなかったアメリカ国内での大流行を公表することすら米軍や連合国軍の士気を低下させ、敵を利する行為となりかねないとして、正しい情報が政府機関やメディアによって公表されることはなかった。

とはいっても、数多くの人が苦しんで死に至る状況や、棺の数が不足して死体が収容しきれなくなってしまう状況を政府の情報隠蔽や情報操作だけでごまかし通すことはできなかった。

【最大の教訓】

スペインインフルエンザ・パンデミックから100年経過した現在、ウイルス研究や感染症対策をはじめとする医療技術や公衆衛生対策は飛躍的に進化している。ただし、感染症対策や軍事史の専門家たちは次のように指摘している。

スペインインフルエンザ・パンデミックから現在にもそのまま適用可能な(適用されるべき)最大の教訓は「パンデミックを押さえ込むには絶対に事実の隠蔽や歪曲を避け、真実をありのままに語る」ことである。

なぜ、こんなことを引用するかというと、アメリカやイギリスなどの英語圏で「社会的距離」という隔離政策に科学的根拠があるという記事が爆発的に増えており、いずれも「スペイン風邪」の1910年代をエビデンスとして取り上げているからです。もちろん根拠になっている論文のことは知っていますが、新型インフルや鳥インフル、エボラ、ジカ熱等、最近のアウトブレイクの研究のエビデンスがたくさんあるのに、なぜ100年前のスペイン風邪なのでしょうか。スペイン風邪のデータは「いじられている」と知っている人は知っています。今回のインフォデミックは各国政府による国家安全保障の絡んだプロパガンダ情報操作の要素が事態を複雑化させているように感じます。

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