吸い玉(カッピング)の科学

2019年5月25日『Forbes』
『「カッピング」は疑似科学、米大学教授が警戒を呼び掛け』

アメリカ・ナショナル鍼と東洋医学の認証委員会NCCAOM(National Certified Commision for Acupuncture and Oriental Medicine)の吸い玉の解説ページ


「吸い玉の科学」
The Science of Cupping
https://www.nccaom.org/science-of-cupping/

以下、引用。

現代医学の父といわれるジョン・ホプキンス大学病院の創設者、ウイリアム・オスラーは気管支喘息と急性の脊髄炎に対して吸い玉(カッピング)を1900年代に推奨している。

現代医学の父、ウイリアム・オスラーはジョン・ホプキンス大学の初代医学部教授であり、レジデント(病院住み込み医学生)、ティーチング・ホスピタル(教育病院)など現代アメリカ医学教育制度のほとんどを作りました。オスラーとほぼ同時期にジョン・ホプキンス大学教授だったのがサイモン・フレクスナーで、後にロックフェラー研究所で野口英世とヘビ毒を研究します。ジョン・ホプキンス大学医学部のサイモン・フレクスナー教授の弟である文化人のエイブラハム・フレクスナーはカーネギー財団の依頼で1910年に「フレクスナー報告書」を出版し、ジョン・ホプキンス大学の教育制度がアメリカの医学制度となり、1900年以前にはアメリカで盛んだった代替医療は滅亡寸前まで追い込まれました。しかし、ウイリアム・オスラーが鍼や吸い玉を臨床で使っていたという皮肉な歴史的事実があります。

以下、引用。

カッピング(吸い玉)のメカニズムについてはいくつかの理論がある。皮膚は血液供給が豊富となり、たっぷりと血液が供給されてひっぱられることで循環が増加し、毛細血管が敗れることで毛細血管新生を増加させ、内出血は起こるがリンパの循環を改善させる。また、カッピングは免疫システムを調整し、炎症プロセスをコントロールすることでポジティブな効果をおよぼす。

以下の2013年イラン、2013年エジプト、2015年インドのカッピング研究があります。

2013年イランの研究
「吸い玉(カッピング)の免疫システムにおける役割の研究」
Study of Cupping and its Role on the Immune System
Samadi M.et al.J Relig Health. 2013;1:59–65.
http://jrh.mazums.ac.ir/article-1-23-fa.pdf

2013年エジプトの研究
「カッピング療法の医学的科学的基礎」
Medical and Scientific Bases of Wet Cupping Therapy (Al-hijamah): in Light of Modern Medicine and Prophetic Medicine
El Sayed et al.
Alternative and Integrative Medicine
May 31, 2013

2015年インドの研究
「レビュー文献:吸い玉療法(カッピングセラピー)」
Review article:Cupping therapy: A prudent remedy for a plethora of medical ailments
Piyush Mehta et al.
Journal of Traditional and Complementary Medicine
Volume 5, Issue 3, July 2015, Pages 127–134
http://www.sciencedirect.com/…/article/pii/S2225411014000509

【2010年から2016年までの吸い玉の科学的研究・レビュー論文】

2010年北京中医薬大学の吸い玉のシステマティックレビュー
「中国における吸い玉療法の臨床研究のエビデンス:システマティック文献レビュー」
Clinical research evidence of cupping therapy in China: a systematic literature review.
Cao H et al.
BMC Complement Altern Med. 2010 Nov 16;10:70.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21078197
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3000376/

2012年『プロス・ワン』にオーストラリア、西シドニー大学が発表した研究
「吸い玉療法の効果のレビューのアップデート」
An Updated Review of the Efficacy of Cupping Therapy
Huijuan Cao,PLoS One. 2012; 7(2): e31793.
Published online 2012 ‪Feb 28.‬
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3289625/

2012年ベルリン医科大学病院(Charité University Medical Center)の論文
「変形性膝関節症患者への乾性吸い玉:ランダム化コントロールされた探求的比較試験」
Pulsatile dry cupping in patients with osteoarthritis of the knee – a randomized controlled exploratory trial.
Teut M,et al.
BMC Complement Altern Med. 2012 Oct 12;12:184. doi: 10.1186/1472-6882-12-184.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23057611
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3527288/

2014年北京中医薬大学
「急性と慢性の痛みのマネージメントにおける吸い玉療法:ランダム化比較臨床試験のシステマティックレビュー」
Cupping therapy for acute and chronic pain management: a systematic review of randomized clinical trials
Huijuan Caoa,et al.
Journal of Traditional Chinese Medical Sciences
Volume 1, Issue 1, 1 July 2014, Pages 49–61
http://www.sciencedirect.com/…/art…/pii/S2095754814000040%20

2015年2月西安交通大学
「頚部痛と腰痛への中国伝統医学:システマティックレビューとメタ・アナリシス」
Traditional Chinese medicine for neck pain and low back pain: a systematic review and meta-analysis.
Yuan QL et al.
PLoS One. 2015 Feb 24;10(2):e0117146.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25710765
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4339195/
※「カッピングは、慢性頚部痛や慢性腰痛に短期的に効果があるかも知れない」

2015年イギリス・オックスフォード大学のレビュー論文
「代替医療:カッピング・セラピー吸い玉療法アップデート」
Alternative medicine: an update on cupping therapy.
Chen B, et al.
QJM. 2015.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/25399022/
http://m.qjmed.oxfordjournals.org/content/108/7/523.full.pdf

オックスフォード大学が1907年に創刊した老舗医学雑誌『QJM(Quarterly Journal of Medicine)』は超有名医学雑誌です。

以下、引用。

この3年でランダム化比較臨床試験がデザインされてきた。非合理的なデザインと貧弱な研究の質のため、カッピング吸い玉のエヒデンスのレベルは非常に低い。非常に低いエビデンスは、カッピングは帯状疱疹、顔面麻痺、ニキビ、そして脊椎症への優れた効果を示している。

【注意すべきカッピング・セラピーの有害事象】

貧血、限局性脂肪織炎、ヘルペスウイルス感染が客観的な研究により最も頻繁に起こる有害事象とされている。湿性吸い玉による予測していなかった腰の膿瘍の症例が報告されている。また、カッピングは炎症による色素沈着やケロイドと関連している。カッピングは湿疹には有害かも知れない。

2016年3月17日台湾・慈済大学医学部の論文
「慢性頚部痛と肩痛の解放への吸い玉療法の効果:ランダム化比較試験」
The Effectiveness of Cupping Therapy on Relieving Chronic Neck and Shoulder Pain: A Randomized Controlled Trial.
Chi LM,et al.
Evid Based Complement Alternat Med. 2016;2016:‪7358918‬. doi: 10.1155/2016/7358918. Epub 2016 ‪Mar 17.‬
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27073404
http://www.hindawi.com/journals/ecam/2016/7358918/

2017年以降、カッピング研究は爆発的に増加します。

2018年韓国
Is cupping therapy effective in patients with neck pain? A systematic review and meta-analysis.
Kim S, et al. BMJ Open. 2018
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30397006/

2018年ブラジル
Cupping therapy and chronic back pain: systematic review and meta-analysis.
Moura CC, et al. Rev Lat Am Enfermagem. 2018.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30462793/

2019年サウジアラビア
The medical perspective of cupping therapy: Effects and mechanisms of action.
Review article
Al-Bedah AMN, et al. J Tradit Complement Med. 2019.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30963043/

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