ロックダウン時代の心理学

2020年4月7日『ニューヨークタイムズ』
On Coronavirus Lockdown? Look for Meaning, Not Happiness

ナチスの強制収容所体験をもち『夜と霧――ドイツ強制収容所の体験記録』などの著作で有名な医師、ヴィクトール・フランクルの心理学が有名です。心理学者ではありませんが、ソ連の小説家アレクサンドル・ソルジェニーツィンの『イワン・デニーソヴィチの一日』もソ連労働収容所ラーゲリでの生活を描いて参考になります。

日本の精神医学でも刑務所に入ると拘禁反応が現れることが知られています。ロックダウンは元々、刑務所の暴動で囚人を檻に閉じ込めることが語源です。

1986年「拘禁状況における精神病理」
遠藤 辰雄
『社会心理学研究』1986 年 1 巻 2 号 p. 12-18

新型コロナウイルス感染症は医学的事件であるだけでなく、社会心理学的事件です。社会心理学はまさに「ウワサによるパニック」「デマ」「流言」「買い占め行動」などを分析してきた学問分野です。

1985年「買溜めパニックにおける消費者の意思決定モデル」
広瀬 幸雄
『社会心理学研究』1985 年 1 巻 1 号 p. 45-53

社会心理学的には、ロックダウン状態となると自分の気に入った情報だけをSNSをみることになり、エコー・チャンバー現象やフィルター・バブルといわれる現象が強くなると予測されています。自分の気に入った情報しか入らないため、自分の信念だけが強化されます。

心理学的には、まず恐怖があります。東洋医学では「恐れれば気下る」であり、うつになります。恐鬱です。西洋医学の心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、医療関係者あるいは本人や親族が感染した場合、発生することが予測されます。また、恐れは腎を傷つけます。

2020年4月2日『フューチャー』
「コロナウイルスへの恐怖はわれわれの心理を変えている」
The fear of coronavirus is changing our psychology

恐怖は嫌悪反応につながります。特に疫病の流行時には、部外者への恐怖、差別といった反応が過剰となります。社会学者、アーヴィング・ゴフマンのとなえる社会的スティグマ烙印です。人間は精神病やHIV感染者、ハンセン氏病患者を差別してきた歴史があります。

また、不安があります。西洋医学の不安症もあります。東洋医学では「驚けば気乱れる」があり、心胆気虚では「恐れやすく、驚きやすく、ビクビクした状態」になります。

不安は反すう思考が特徴的で、思考が反復します。個人的考えでは、恐怖や不安は脳の前頭前野、前帯状皮質、島、扁桃体などと関連しており、鍼灸やマッサージ、気功などでフィジカルに脳の状態を変えるのが一番効率が良いと思います。東洋医学の知恵はいちばん役に立ちます。

また、西洋科学の分野では危険な領域ではありますが、社会心理学やウォルター・リップマン著、『世論〈上〉』の「擬似環境」や「ステレオタイプ」という考え方からはじまるコミュニケーション研究を研究することをお勧めします。

1938年にラジオ調査プロジェクトがオーソン・ウェルズのナレーションでHGウェルズの『火星人襲来』を放送し、1939年に1939年コロンビア大学の応用社会調査局のポール・ラザースフェルドが「麻酔的逆機能」を提唱しました。これは、過剰な情報を流すと人間は判断機能を失うということを研究で明らかにしたものです。ラザースフェルドの同僚のロバート・K・マートンは「予言の自己成就」を提唱しました。たとえ根拠のない予言(=噂や思い込み)であっても、人々がその予言を信じて行動することによって、結果として予言通りの現実がつくられるという現象のことです。 例えば、ある銀行が危ないという噂を聞いて、人々が預金を下ろすという行動をとることで本当に銀行が倒産してしまいます。

ラザースフェルドやロバート・K・マートンの名前は社会学や社会心理学の分野では必ず、学びます。ラジオ調査プロジェクトや 応用社会調査局のような社会心理学研究からすでに80年が経過しています。これらの知識は、社会心理学専門家以外には知られていないため、一般の方は情報操作に非常に脆弱となっています。

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