尾骨痛

2014年「尾骨痛：解剖・病因・尾骨痛の治療のオーバービュー」
Coccydynia: An Overview of the Anatomy, Etiology, and Treatment of Coccyx Pain
Lesley Smallwood Lirette, MD　et al.
Ochsner J. 2014 Spring; 14(1): 84–87.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3963058/

日本語では、以下の論文が簡潔でわかりやすかったです。

「尾骨痛」
松本淳(福島県立医科大学整形外科学教室)
醫學のあゆみ 147(14): 1156-1157, 1988.

上記分類では
(１)骨性尾骨痛(外傷による骨折)
(２)尾骨領域の神経機能障害
(３)尾骨周辺部の病的過程による尾骨痛
を挙げています。

尾骨痛は尾骨局所の疼痛が症状です。90パーセントの症例で保存療法が奏功しており、医学的治療なしにも治ります。ドーナツ・クッション、非ステロイド系鎮痛剤(オピオイドは推奨されない、徒手マニュピュレーションとマッサージは筋緊張と靭帯痛を緩和します。

トリガーポイント鍼療法の観点から、肛門挙筋の関連痛が考えられます。

Coccygeus Trigger Point Diagram

灸法では会陽が報告されていました。ちょうど肛門挙筋の上です。

2006年「会陽(BL35)穴への温針灸による尾骨痛の治療」
温针灸会阳穴治疗尾骨痛
刘锦丽
《中国针灸》 2006年10期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTotal-ZGZE200610006.htm

中医学では百会穴が思い浮かびます。

2008年「百会穴への針刺による尾底骨痛56例の治療」
针刺百会穴治疗尾骶骨痛56例
许春田杰高淑红
《陕西中医》 2008年05期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-SXZY200805070.htm

中国語の「尾骶骨痛」は腎虚・督脈虚損であり、腎陽虚として八味丸などが使われるようです。

尾骶骨痛
https://www.wiki8.com/weidigutong_950/
脊椎下段尾骶骨部位作痛之证。见《中国医学大辞典》。或因肾脏精气亏耗，督脉受损，或寒湿侵袭，或血瘀气滞所致。疼痛常连及腰部，难以挺直。肾阳虚喜暖怕冷者，治宜温肾、补督脉，用温肾散、桂附八味丸；肾水不足者，用六味丸、左归丸等；寒湿侵袭者，治宜祛寒化湿；瘀血停滞者，宜活血化瘀。见于坐骨神经痛、腰椎肥大等疾患。

中国では後頂が報告されています。

2002年「後頂(GV19)穴への針刺による尾骨痛46例の治療」
针刺后顶穴治疗尾骨痛46例
张地芬《中国针灸》 2002年10期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTotal-ZGZE200210035.htm

2003年「後頂(GV19)穴への針刺による尾骨痛38例の治療」
针刺后顶穴治疗尾骨痛38例报告
袁富祥《西藏医药杂志》 2003年03期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-XZYY200303044.htm

山東大学の張穎清先生の「第2掌骨側鍼法」では、腰穴と下腹穴の間を使うようです。

2010年「第2掌骨側ホログラフィー穴による尾骨痛の治療」
第2掌骨侧全息穴治疗尾骨痛
韩扬《中国针灸》 2010年11期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZGZE201011025.htm
http://xuewen.cnki.net/CJFD-ZGZE201011025.html

※治疗方法在第2掌骨桡侧缘腰穴与下腹穴之间(见图1),以第2掌骨长轴为轴由掌背向掌心方向旋转约30°角度、略带揉的动作指压探查确定敏感点,选用直径0.25～0.30mm、长25～40mm针灸针,紧贴第2掌骨桡侧缘,垂直于拇、示二指所构成的平面进针,针尖向手掌小指侧刺入20～30mm,得气后留针30～45min,每隔5～10min略做捻转或提插,每次针刺一侧穴位,左右图交1替第,每2日掌骨1侧次全。

日本では、和田清吉先生が手針による尾底骨痛の治療を報告されています。

「手鍼法」
和田清吉『日本鍼灸良導絡医学会誌』1973 年 2 巻 4 号 p. 15-16
https://www.jstage.jst.go.jp/…/ryo…/2/4/2_4_15/_pdf/-char/ja

後渓ー申脈のあとに落枕から腰腿点への透刺です。

手法配合平衡针治疗创伤性尾骨痛的临床研究
郑景陆陈世忠苏健
《中医临床研究》 2019年10期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZYLY201910015.htm

上記は「平衡鍼による尾骨痛」治療のようですが、治療穴が書かれていません。平衡鍼の王文遠先生は腰痛穴、昇堤穴、胸痛穴を尾骨痛に使われるようです。

さらに水溝も尾痛症に使われています。

2010年「水溝(GV26)穴への針刺による尾底骨疼痛の治療」
针刺水沟穴治疗骶尾部疼痛
徐敏旌《中国针灸》 2010年03期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZGZE201003046.htm

2014年「水溝(GV26)穴への針刺と拮抗動作の組み合わせによる尾痛症26例の治療」
针刺水沟穴结合拮抗动作治疗尾痛症26例
孙颖哲孙远征《中国针灸》 2014年07期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZGZE201407043.htm

「女性の骨盤痛に対する対角線上の穴の鍼治療」
佐野敬夫『心身医学』2018 年 58 巻 8 号 p. 703-707
https://www.jstage.jst.go.jp/…/jj…/58/8/58_703/_pdf/-char/ja

上記の陰陽太極療法では、百会のやや前方を治療穴としています。

「会陰痛を主訴とする仙骨神経障害の病態の解明に向けて─仙骨神経障害症候群─」
高野正博
『日本腰痛学会雑誌』2005 年 11 巻 1 号 p. 186-192
https://www.jstage.jst.go.jp/…/…/11/1/11_1_186/_pdf/-char/ja

上記の「仙骨の左右で陰部神経に沿って圧痛ある硬結」があるという記述は参考になりました。

骨盤帯痛、慢性骨盤痛症候群、鼠径部痛症候群、骨盤内うっ血症候群、これらは学際領域であり、西洋医学にとっても東洋医学にとっても未知の次元です。

【参考文献：骨盤痛、前立腺疾患】

『骨盤・股関節・鼠径部のスポーツ疾患治療の科学的基礎 (Sports Physical Therapy Seminarシリーズ)』
福林徹 NAP　Limited2013年

「慢性骨盤痛症候群による会陰部不快感に対する陰部神経鍼通電療法Visual Analogue Scaleを用いた検討」
杉本佳史et al.
『全日本鍼灸学会雑誌』Vol. 55 (2005) No. 4 P 584-593

「間質性膀胱炎／慢性骨盤痛症候群に対し漢方併用療法が効果的であった4例」
関口由紀et al.『日本東洋医学雑誌』Vol. 65 (2014) No. 4 p. 268-272

2017年5月12日発表の「『慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群（The chronic prostatitis/chronic pelvic pain syndrome (CP/CPPS)）』に対する、長い鍼による白環兪(BL30)と会陽(BL35)の刺鍼：ランダム化比較試験」
The effectiveness of long-needle acupuncture at acupoints BL30 and BL35 for CP/CPPS: a randomized controlled pilot study.
Zhou M　et al.BMC Complement Altern Med. 2017 May 12;17(1):263.

0.4×100mmの鍼を用いて75－90mmの深さで刺鍼した実験です。

以下、引用。