イタリアの耳穴マップ「セクトグラム」

2010年「子宮鏡検査前後の耳穴検出:外耳の『子宮穴』の出現の明確化は可能なのか?」
Ear acupoint detection before and after hysteroscopy: is it possible to clarify the representation of the uterus on the outer ear?
Romoli M,et al.
Acupunct Med. 2010 Dec;28(4):169-73. doi: 10.1136/aim.2009.002196. Epub 2010 Oct 5.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20923940


イタリアのマルコ・ロモーリ先生の素晴らしい論文です。

フランス式耳穴の子宮は中国式耳穴の内生殖器=子宮穴と全く違う場所にあります。

中国式耳穴の内生殖器は三角窩にあります。外生殖器は耳輪に存在し、対耳輪下脚の延長線にあります。この中国の耳穴、外生殖器はフランス式耳穴の子宮と重なります。

イタリアのマルコ・ロモーリ先生は78人の患者さんの子宮鏡検査前後、耳穴を圧痛と電気探索でポイントを検出し、イタリア耳穴マップ、セクトグラムで分析したところ、下図のピンクの部分が浮かび上がりました。

まさに中国式耳穴内生殖器=子宮穴とフランス式耳穴の子宮が重なるところです。これこそ患者の体に聞いて結果・データから検証するという帰納的推論です。

帰納は考えてみれば当たり前の人間の思考法です。科学哲学の発展により、現代の医学はベイジアン推定から帰納法的確率論に到達しました。AIを使ったビッグ・データ・サイエンスも帰納法的確率論を採用しています。

帰納はフランシス・ベーコンやジョン・ロック、ジョン・ステュワート・ミルなどのイギリス経験論哲学として発展します。イギリス経験論哲学の極北、デビッド・ヒュームは徹底的懐疑論によって帰納と因果関係を徹底的に批判しました。「毎日、太陽が昇るからといって、明日の朝、太陽が昇るとは絶対にいいきれない」「『カラスは黒い』と100万回観察しても、『全てのカラスが黒い』と証明できない(ヘンペルのカラス)」「いままで見た白鳥は全て白いといっても『全ての白鳥は白い』とは黒い白鳥の発見までしか言えない」のです。

一方でフランス合理論の医学者クロード・ベルナールは『実験医学序説(1865年出版)』で実験医学という医学における科学的方法論を確立します。ベルナール自身は演繹と帰納の双方を重視していましたが、信奉者によって演繹の側面を強めて普及されました。そして、実験医学と演繹による思考法の支配が150年以上続きましたが、ついにEBM革命により帰納法的確率論の世界観に到達した歴史があります。

現代のEBM医学は科学哲学の発展と関連していますが、医学博士’でさえ哲学に興味がない日本ではあまり解説されていないと感じます。経験論・帰納法の立場である東洋医学者にとっては重要なことだと思うのですが。

イタリアのマルコ・ロモーリ先生が遺してくれた耳穴マップ、セクトグラムは臨床家にとって貴重だと思います。

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