安定狭心症の補助療法に鍼治療

2019年8月21日『メディカルトリビューン』
『安定狭心症の補助療法に「鍼治療」』

以下、引用。

安定狭心症では薬物治療を行うのが一般的だが、中国・Chengdu UniversityのLing Zhao氏らは今回、安定狭心症の補助療法として鍼治療を施行。その結果、狭心症の発作が抑制されることが示された、JAMA Intern Med(2019年7月29日オンライン版)に発表した。

【安定狭心症患者398例を4群に分け検討】

安定狭心症は心血管疾患や突然死のリスクになりうる。ガイドラインでは薬物療法が推奨されているが中国では医療資源の確保が難しかったり、経皮的冠動脈インターベンションによる改善が得られなかったりするケースもある。

そこでZhao氏らは今回、安定狭心症に対する薬物治療の補助療法として、鍼治療の有効性を検討した。35~80歳の安定狭心症患者398例を①心臓のつぼとされる部位に鍼治療を行う群②心臓以外のつぼに鍼治療を行う群③つぼではない部位に鍼治療を行う群④鍼治療を行わない群―の4群に分けた。全群に16週間の薬物治療を行い、①~③群には補助的に週3回の鍼治療を4週間実施。狭心症発作の記録を16週間付けてもらい、治療による発作の変化を4週ごとに評価した。

【心臓のつぼへの鍼治療により狭心症の発作頻度に有意差】

その結果、心臓のつぼとされる部位に鍼治療を行う群では、心臓以外のつぼに鍼治療を行う群に比べて、狭心症の発作頻度が有意に低かった(P<0.001)。つぼではない部位に鍼治療を行う群、鍼治療を行わない群と比べても同様に、心臓のつぼに鍼治療を行った群は、狭心症の発作頻度が有意に低かった(いずれもP<0.001)。Zhao氏らは「この効果は、つぼの特異性に関連しているのではないか」と推察している。

さらに同氏らは、今回の研究の限界として①症例数が少ない②患者登録の時点で心筋梗塞や心不全の既往歴がある患者を除外したため、今回得られた知見がそれらの既往歴を持つ人に当てはまらない可能性がある③16週以降の長期的な有効性は不明―などを挙げた。その上で、「心臓のつぼとされる部位への鍼治療は、安定狭心症の補助治療として有効性が示された。狭心症の補助治療においては、選択肢の1つとして鍼治療が考慮されるべきだ」と結論している。

まず、四川省の成都大学ではなく、成都中医薬大学の梁繁荣先生による安定型狭心症の研究です。

2019年7月29日『JAMA内科学』
「安定狭心症への付加的治療としての鍼:ランダム化比較試験」
Acupuncture as Adjunctive Therapy for Chronic Stable Angina
A Randomized Clinical Trial
Ling Zhao, et al.
JAMA Intern Med. Published online July 29, 2019.
doi:10.1001/jamainternmed.2019.2407

原著を読むと「病気の影響を受けた経絡」から内関(PC6)、通里(HT5)を選穴し、「影響を受けていない経絡から、孔最(LU6)と太淵(LU9)を選穴しています。

2019年8月20日『中国中医薬報』
「针刺可减少患者心绞痛发作次数」
循经取穴组针刺内关、通里,他经取穴组针刺孔最、太渊

404名を16週間治療しました。
以下のディスカッションを読むと、だいぶニュアンスが違う気がします。

【ディスカッション】

病気の影響を受けた経絡の鍼は影響を受けていない経絡や偽鍼、あるいは鍼を受けていないグループ』よりも、狭心症の頻度や痛みの強度を減らしており優れていることをわれわれは発見した。

つまり、この『JAMA内科学』の論文は、安定型狭心症に対して肺経の太淵(脈会!)や孔最よりも心包経の内関(PC6)や心経の通里(HT5)が効くという主張であり、日本語翻訳記事とはかなりニュアンスが異なる印象があります。

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