中国の耳介迷走神経刺激と耳鍼の中医学鍼灸弁証論治

 耳介迷走神経刺激 と耳鍼の中医学鍼灸弁証論治 】
2014年「耳針迷走神経刺激による『うつ』の中医学の弁証型による治療の研究」
耳针(迷走神经刺激)治疗抑郁的中医证型分布与探讨
马迎歌 《北京中医药大学》 2014年
http://cdmd.cnki.com.cn/Article/CDMD-10026-1014242646.htm


これは88例の抑鬱症の不眠に対して44例の心脾両虚の患者には耳穴の「心」と「脾」を配穴しました。残りの対照群は以下の弁証でした。


忧郁伤神17例19.31%,
气郁化火16例18.18%,
肝气郁结7例7.95%,
阴虚火旺4例4.55%


対照群の患者には耳穴として「耳舟」にある「肩」「肘」を配穴しました。結果として、「心」「脾」を使用した心脾両虚のほうが効果的であったという論文です。
 

更年期の女性で動悸・不眠・不安があって、食欲不振で下痢しやすく、めまいがある帰脾湯が奏功するような心脾両虚証はたくさんおられます。心脾両虚証は精密な臨床観察からうまれた証であり、漢方・鍼灸は効果があると思います。 耳穴「心」と「脾」も迷走神経刺激になるので不眠に効果があっても不思議ではありません。しかし、心脾両虚は脾気虚プラス心血虚です。 耳穴「心」と耳穴「脾」を刺激して脾気が増えたり心血が増えるのでしょうか。

改めて耳穴の「脾」について調べてみました。

まず、中国とフランスでWHOの標準化会議で合意できていない耳穴の一つです。ラファエル・ノジェ先生のフランス式耳穴マップには「脾」は存在しません。

趙吉平先生の『耳針療法』(東洋学術出版社)では腹脹、下痢、便秘、食欲不振、機能性子宮出血、帯下過多、めまいを主治としています。つまり、中国の耳穴の「脾」はまさに脾気虚のツボでした。1972年の人民解放軍・南京部隊の『耳針』にも「脾」の耳穴はあり、胃の横に配置されていたので脾胃という東洋医学の位置づけだと思います。

耳穴の「心」もWHO標準化会議で合意できていないツボの一つです。趙吉平先生の『耳針療法』では頻脈、不整脈、狭心痛、脈なし病、神経衰弱、ヒステリー、口内炎と、これも東洋医学の五藏六腑の「心臓」でした。このロジックから演繹されるのは、耳穴の「心」と耳穴の「脾」で心脾両虚が治療できるという理論になります。しかし、反射療法で臓腑病や虚証は治るのでしょうか。

心胆気虚の不眠症も気になったので、耳穴「胆」を調べると、正確には「膵胆」という耳穴でした。これも1972年の人民解放軍・南京部隊の『耳針』にも耳穴「胰胆」がありました。趙吉平先生の『耳針療法』では、耳穴「胰胆」の主治として胆道疾患・胆嚢炎・胆道回虫症・片頭痛・帯状泡疹・中耳炎・耳鳴・聴力減退・急性膵炎となっていますが、主治に勇気が強くなったり、不眠症が治るとは書いていないです。

ちなみにポール・ノジェ先生の文献をみると、右耳に「肝臓」と「胆囊」は大きく反映され、左耳に「膵臓」と「脾臓」が反映されています。このポール・ノジェ先生の「膵臓」「胆囊」は西洋医学のものだと思います。ラファエル・ノジェ先生はWHO標準化会議に従い、膵臓と胆囊を同じ位置に修正されているようです。耳穴「膵胆」も迷走神経・副交感神経刺激になるので心胆気虚の不眠症が治っても不思議ではないです。胆気が増えて勇気や決断力がアップしたら、本当に中医学の弁証、心胆気虚も治ったと言えるかも知れません。

この調査を通じて、ラファエル・ノジェ先生の耳穴マップと、ポール・ノジェ先生の耳穴マップが微妙に違うことに気づいてしまいました。

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