秋の少辛増酸と補肺気と宣肺

たまに日本の薬膳のホームページを読むと、「秋は肺を養うために辛味をとる」と書かれていて驚愕します。これは正反対です。

秋は少辛増酸で辛味を少なくして秋の収斂を助けます。酸味は収斂作用があり、汗を止め、気を降ろします。辛味は発散(宣発)作用があり肺を瀉法します。肺気虚の治則、補肺気と肺失宣粛の宣発と粛降の意味、さらに肺陰虚の治則、養陰清肺の違いがわかっていないのだと思います。

宣発の「宣」は宣伝の宣です。治療院の宣伝ではチラシを街中に撒きます。宣発の「発」は爆発の発です。爆発や発散では外に怒りやストレスを撒き散らします。肺の宣発が強くなると気は外に出ます。呼吸の「呼」です。肺の宣発が強くなると詰まった鼻が通ったり、汗が出ます。ツボで言うと合谷や迎香や大椎などは肺の宣発機能を高めるツボです。

粛降の「粛」は清粛の粛です。粛清とは党内をきれいにすることです。肺の粛が弱くなると気管に痰がたまります。粛降の「降」は気を下に降ろすことです。呼吸の「吸」です。肺の粛降機能が弱くなると痰がたまり、逆気となって咳や喘息となります。肺の粛降機能を高めるツボは尺沢、ダン中(CV17)、曲池などです。

肺は宣発で息を吐き、粛降で息を吸います。

風邪が皮毛に入り、肺の宣発機能が失調する冬の風寒束表証では、例えば辛味で温性で発汗作用のあるネギとショウガのスープを飲んで布団をかぶって発汗します。辛味で温性の食材で辛温解表して発汗すれば風邪は体表から追い出されます。しかし、夏に発汗過多で夏ばて、秋ばての肺気虚となっている半健康人がさらに辛味をとるのは得策ではないと思います。

肺気虚の補肺気の食材の代表は、秋が旬の銀杏です。銀杏は秋にできて白いです。白は五色で肺の色です。四気(四性)では平性または温性であり、味は甘味・渋味・苦味であり、帰経は肺経と腎経に入ります。効能は歛肺定喘、止帯、縮小便です。虚弱児の小児喘息には昔から銀杏が勧められています。『本草綱目』では、「色白属金,故能入肺经,益肺气,定喘嗽,缩小便」「熟热,温肺益气,定喘嗽,缩小便,止白浊。生食,降痰,消毒杀虫。」と温肺益気と定喘が強調されています。小児喘息の虚弱児が白色で肺経に入り、甘味で補気するギンナンを秋に常食するのは補肺気になりますが、風邪もひいていないのに発汗作用のあるものを秋にとって宣肺するのはよくないと思います。これが補肺気と宣肺の違いです。

この季節に出来てくる梨は典型的な肺陰を補う食材で、四性(四気)は寒性、五味は甘味・微酸味、帰経は肺経と胃経、肝経です。『本草綱目』では「潤肺涼心、消痰降火」と書かれ、肺陰を潤し、イライラを取り、渇きを取り、咳を止めます。

柿も肺を潤す食材で、四性(四気)は寒性、五味は甘味・渋味、帰経は肺経と大腸経、胃経です。清代、王士雄著『随食居飲食譜』では「鮮柿甘寒。養肺胃之陰, 宜于火燥津枯之體。」と書かれ、胃熱ののどの渇きを取り、肺陰を養います。梨も柿を多食すると大腸を冷やして下痢になります。陰を補い、気を下に降ろします。

茄子は甘味、寒性、肺経、大腸経、脾経、胃経に帰経します。『本草綱目』で李時珍は「時珍曰︰按︰《生生編》云︰茄性寒利,多食必腹痛下利,女人能傷子宮也」と述べています。「秋茄子は嫁に食わすな」は茄子を食べ過ぎるとお腹を冷やして子宮を損傷するからという思いやりのようです。

ぶどうは四性は平性、五味は甘味・酸味、帰経は腎経・肺経・脾経です。清代、王士雄著『随食居飲食譜』では「甘平。補氣, 滋腎液, 益肝陰, 養胃耐饑, 禦風寒, 強筋骨,通淋逐水, 止渴安胎」と補腎・補気の作用が強いです。

邵先生によると、秋は補肺陰と補腎の要素を入れたほうが良いそうです。ザクロは四性は温性、五味は甘味と酸味、帰経は大腸経と腎経です。『本草綱目』では「止瀉痢,下血,脫肛,崩中帶下」と書かれ、止瀉と収歛作用があります。

秋は酸味で収斂します。秋冬は白い食べ物で補肺気します。銀杏以外には大根、白菜、ネギの白い葱白や玉葱です。葱は五菜で肺の野菜です。下仁田ネギは葱白の部分が寒くなるほど甘くなります。ビタミンB1誘導体のアリシン(アリナミン)が豊富で虚弱な方も強くなります。補肺気です。

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