英国研究 慢性骨盤痛にガバペンチンは効果なし

 
2020年10月12日『メディカルトリビューン』
 
 
以下、引用。
 
慢性骨盤痛の女性患者を対象に、慢性疼痛に対して広く使用されているガバペンチンの安全性と有効性を検討した英国の多施設共同プラセボ対照ランダム化比較試験GaPP2の結果が明らかになった。同試験では、女性の慢性骨盤痛に対するガバペンチンの有効性に両群で有意差は認められず、副作用の発生率はガバペンチン群で高いことが示された。英・University of EdinburghのAndrew W. Horne氏らがLancet(2020; 396: 909-917)に結果を報告した。
 
世界における女性の慢性骨盤痛の有病率は2~24%と推定され、QOLや労働生産性の低下に関連していることが報告されている。慢性骨盤痛には子宮内膜症などなんらかの疾患が関与している場合もあるが、腹腔鏡検査で痛みの原因となりうる所見が認められない女性患者の割合は最大で55%に上るとされ、こうした患者に対しては確立された治療法はないのが現状である。
 
Horne氏らは「この試験は適切な検出力を有していたが、慢性骨盤痛の女性患者にガバペンチンを投与しても疼痛スコアの有意な改善は認められなかった。その一方で、副作用の発生率はプラセボ群と比べてガバペンチン群で高かった」と結論。その上で「ガバペンチン乱用の報告が増えていることやガバペンチンに関連する有害な影響のエビデンスを考慮すると、骨盤内に明らかな病変がない慢性骨盤痛に対してはガバペンチンの適応外使用に代わる治療法を検討することが重要だ」と付言した。
 
 
 
ガパペンチンは抗てんかん薬です。リリカ(プレガバリン)とよく似た薬です。1973年に現在のファイザー製薬が開発し、2006年に日本で販売認可を得ました。
 
2009年にアメリカFDAは ガパペンチンで自殺が増えることを警告しました。2010年にガパペンチンで自殺率が高まることが『アメリカ医師会雑誌(JAMA)』のシステマティックレビューで証明されました。
 
 
2010年「抗けいれん薬と自殺、自殺未遂、または暴力的な死のリスク」
Anticonvulsant medications and the risk of suicide, attempted suicide, or violent death
Elisabetta Patorno
JAMA. 2010 Apr 14;303(14):1401-9.
 
 
2018年にイギリス政府はリリカとガパペンチンを規制薬物として指定しました。
 
英国がプレガバリン(商品名リリカ)とガバペンチン(商品名ガバペン)を規制薬物に指定
 
英国がプレガバリン(国内商品名リリカ)とガバペンチン(国内商品名ガバペン)の乱用による死亡をなくすために、薬物乱用法のクラスC薬物に指定することを決めたとBMJ online 2018年10月16日が伝えている。
 
英国において、プレガバリンやガバペンチンを含む190の薬物が死亡に関連する薬物として登録されている。プレガバリン関連の死亡は2012年の4例から2016年には111例に急増し、ガバペンチン関連死亡は同じ期間で8例から59例に増加した。
 
日本ペインクリニック学会の神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン第2版(2016)(※2)には、神経障害性疼痛への薬物療法の第一選択の1つとしてプレガバリン・ガバペンチンがあげられ「睡眠の質や痛みに伴う抑うつ、不安も改善することが示されており、痛みだけでなくQOLの改善効果がある」として推奨している。ペインクリニックなどにおいてガバペンチンが保険適応外で痛みの緩和などに広く使用されている実態もある。
 
 
 
慢性疼痛の治療にたずさわるものとしては、リリカとガパペンチンについてはEBМに基づく知識を常に収集したほうが良いと思います。おカネに弱いメディアや御用学者からの情報だけでなく、自分で調べるのが望ましいです。それにしても、海外の情報と国内に流通する情報にかなりギャップを感じるのは何故なのでしょうか。特に疼痛関連のガイドラインを読むと、海外と日本では「EBМ」や「ガイドライン」という言葉の定義から違うような印象さえ受けます。
 
 
 
 

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