頚原性頭痛

2018年1月 オランダ
「頭痛における頭蓋から頚部における圧痛しきい値の場所:システマティックレビューとメタ分析」
Pressure pain thresholds over the cranio-cervical region in headache: a systematic review and meta-analysis.
Castien RF et al
J Headache Pain. 2018 Jan 26;19(1):9.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29374331
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5786597/

以下、引用。

異なる頭痛において、もっとも調査され、記録された場所は第7頚椎と肩峰の間の僧帽筋の中間である。

頭痛の場合、最も圧痛点のでる「第7頚椎と肩峰の中間」は僧帽筋の肩井(GB21)穴以外の何ものでもないと思います。

クロアチアのグルジン医師が書いた『頸原性頭痛:疾病原因、特徴、診断、治療』という論文の定義は明確です。

以下、引用。

頸原性頭痛という言葉は、頭部周辺で上位頸椎障害のために起こる頭痛を意味する。臨床研究によれば、慢性頭痛の患者の15-20パーセントは頸部が原因の頭痛である。頸原性頭痛はC1-C3の頸神経、C0-C3の椎間関節、C2-C3の椎間板、C2-C3の筋肉、靱帯、骨構造、硬膜、椎骨動脈の痛み病巣から引き起こされる障害である。

神経解剖学と神経生理学の研究は、頸椎のC1-C3からの侵害受容求心性神経と三叉神経からの侵害受容性求心性神経が三叉神経核で収束することを証明した。

『頸原性頭痛:疾病原因、特徴、診断、治療』
Cervicogenic headache: etiopathogenesis, characteristics, diagnosis, differential diagnosis and therapy
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18018715

緊張型頭痛や肩こりの臨床研究をしていると避けて通れないのが頸原性頭痛です。頸椎が原因で頭痛となります。もともとは2003年の国際頭痛分類にも分類されていましたが、緊張型頭痛の概念と混同されがちでした。しかし、例えば、交通事故のむちうち損傷など外傷が原因で頭痛が起こるのは緊張型頭痛の概念にはあてはまりません。1940年代は外傷後頭痛と呼ばれていました。

1950年代から西洋医学では大後頭神経三叉神経症候群という病気の存在が知られていました。これは後頭部痛と一緒に三叉神経第1枝の前額部から眼のあたりが痛むという症状が特徴です。後頭部の皮膚感覚を支配する大後頭神経と顔面の皮膚感覚を支配する三叉神経が延髄の核において収束することから起こると考えられ、日本頭痛学会などでもこの目の痛みが頸椎など後頭部・後頚部を治療することで改善されるという症例が2000年代後半に報告されはじめました。

さらに実験では、日本医科大学の柴田正義医師が大後頭神経近傍に食塩水を注射したところ、後頭部・頭頂部・前頭部から眼窩に放散痛が起こることを報告しています(柴田正義「肩のいたみの臨床的研究」1972)。大後頭神経と三叉神経がリンクしているという事実は(1)緊張型頭痛などの関連痛の存在、(2)頸原性頭痛による後頚部から目の症状(足太陽膀胱経の流注にそっくり)、(3)天柱穴や百労穴によって緊張型頭痛や頸原性頭痛が改善されること、などの鍼灸臨床で経験する事実をうまく説明できます。

非常に面白いのは、2000年代に入ってから日本の西洋医学の頭痛専門医や脳外科医、整形外科医の中に「鍼灸師の頭痛・肩こり治療に学ぼう」という先生方が出現していることです。代表的なのは、2004年以降、頚性神経筋症候群を提唱している脳外科医の松井考嘉先生です。松井考嘉先生は後頚部の筋肉の問題が、頭痛・めまい・うつ・慢性疲労を引き起こすことを提唱しました。これは率直に言って鍼灸師が昔からみている病態です。

2012年「頸性神経筋症候群:頸部の筋の異常で起こる新しい病気群の発掘」
Cervical Neuro-Muscular Syndrome: Discovery of a New Disease Group Caused by Abnormalities in the Cervical Muscles
松井考嘉(まつい・たかよし)
Neurologia medico-chirurgica Vol. 52 (2012) No. 2 P 75-80
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22362287
https://www.jstage.jst.go.jp/…/n…/52/2/52_2_75/_pdf/-char/en

また、成和神経内科医院の田草川良彦医師は、片頭痛の原因が後頚部の筋肉にあることを提唱しています。

エポックメーキングなのは、1992年のオーストラリア、ニューキャッスル大学ニコライ・ボクダク教授の「頚原性頭痛の解剖学的基礎」という論文です。ニコライ・ボクダク教授はむちうち損傷の研究から頚原性頭痛の概念を研究しています。

1992年「頚原性頭痛の解剖学的基礎 」
The anatomical basis for cervicogenic headache.
Bogduk N. J Manipulative Physiol Ther. 1992 Jan;15(1):67-70.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1740655

ニコライ・ボクダク教授が2009年の『Lancet Neurology』に発表した「頚原性頭痛:臨床診断、侵襲検査、治療のエビデンスの評価」という論文は、もっとも解剖学と生理学の基礎に基づいた総説論文になっています。特に頚神経と三叉神経のリンクの図や関連痛パターンの図などは理解に役に立ちます。

2009年『ランセット神経学』
「頚原性頭痛:臨床診断、侵襲検査、治療のエビデンスの評価」
Cervicogenic headache: an assessment of the evidence on clinical diagnosis, invasive tests, and treatment.
Bogduk N1, Govind J.
Lancet Neurol. 2009 Oct;8(10):959-68.

以下、引用。

頚原性頭痛に薬物療法は効果的でない。

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