耳鍼と腰痛

2016年ブラジル・サンパウロの クルゼイロ・ド・スル大学の研究者による
「1回の耳鍼治療による慢性腰痛の疼痛強度と姿勢コントロールにおける影響:ランダム化比較試験」
Effect of a single session of ear acupuncture on pain intensity and postural control in individuals with chronic low back pain: a randomized controlled trial.
Ushinohama A,et al.
Braz J Phys Ther. 2016 Jul-Aug;20(4):328-35.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5015670/


耳鍼の電気鍼による治療です。「神門」「Back pain point(腰痛ポイント)」「Analgesic point(鎮痛ポイント)」を使っています。

Back pain pointはフランス式耳鍼のLumbar vertebrae(腰椎)ですが、鍼を刺しているのは 中国式耳穴の「殿」になります。私も腰痛をフランス式耳鍼のLumbar vertebrae(腰椎)で治したことがありますが、鍼の角度が難しいです。中国式耳穴の殿も主治は座骨神経痛と殿部の筋膜炎なので腰痛に効果があります。

Analgesic point(鎮痛ポイント) は中国式耳穴の「皮質下(AT4)」にあたります。皮質下の主治は痛症です。また、Analgesic point(鎮痛ポイント)はフランス式耳穴のCingulate gyrus(帯状回)やThalamus(視床)、Amygdaloid body(扁桃)、Hipocampus(海馬)あたりになります。

米空軍の軍医リチャード・ニムツォウが開発した『バトルフィールド・アキュパンクチャー(戦場鍼)』で使用する5つの耳ツボはオメガ2(Omega2)、神門(Shenmen)、ポイントゼロ(Point Zero)、視床(Thalamus)、帯状回(Cingulate Gyrus)であり Cingulate gyrus(帯状回)やThalamus(視床)は鎮痛に重要だと思います。

軍医リチャード・ニムツォウはフランスでノジェの耳鍼を学びました。その後、UCLA医学部のジョゼフ・ヘルムズの鍼灸コースで学び、フランスでダヴィッド・アリミという神経科医にASPという耳鍼用半永久鍼を用いた神経学的なやり方を学んだ直後のことです。2001年、 ニムツォウ はフランスから帰国直後にアメリカにおける耳鍼の権威テリー・オルセン医師に誘われ、韓国人でカルフォルニア大学アーバイン校で研究していた趙長熙(Zang Hee Cho)教授に紹介されました。趙教授はfMRIを用いて鍼の研究を行い、『ニューズウィーク』で取り上げられ、大きな話題になっていた方です。ここで趙教授が「真の鍼と偽の鍼の違いは、fMRIでは帯状回で判別できる」という情報をニムソウ氏に伝えます。そこで、ニムソウはさっそく『帯状回』を用いて劇的な効果を得ました。そこでニムソウが開発したのが金銀という異種金属のASP鍼と、5穴を用いる『戦場鍼(バトルフィールド・アキュパンクチャー)』です。

マウスの研究では、鍼による鎮痛は視床、視床下部、海馬、帯状回などと関連しています。

2019年5月「内臓痛の鍼鎮痛の中枢と末梢のメカニズム:システマティックレビュー」
Central and Peripheral Mechanism of Acupuncture Analgesia on Visceral Pain: A Systematic Review.
Lee IS
Evid Based Complement Alternat Med. 2019 May 2
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6521529/

2019年7月「慢性ストレス誘発性うつと、その中枢神経メカニズムへの鍼の影響」
Effects of Acupuncture on Chronic Stress-Induced Depression-Like Behavior and Its Central Neural Mechanism.
Lee MJ
Front Psychol. 2019 Jul 5;10:1353
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31333523
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6625224/

※「脳の神経活動は、海馬、帯状皮質(帯状回)、運動野、島、視床、視床下部で、鍼のあとで変化がみられた」

テリー・オルセン博士も腰痛の治療に中国式耳穴「殿」「座骨神経」「腰椎」、フランス式耳穴「Lumbar vertebrae(腰椎)」を挙げていますが、さらに「神門」「Thalamus(視床)」「Cingulate gyrus(帯状回)」を挙げています。わたし個人も「Thalamus(視床)」 や「Cingulate gyrus(帯状回)”」を入れたほうが良い印象があります。

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