鍼と炎症

 
2021年1月『ハーバードマガジン』
「いかにして鍼は炎症を緩和するのか?」
 
 
以下、引用。
 
研究は、鍼刺激がマウスのサイトカインストームのような全身性炎症を減少させることを明らかにした。サイトカインストームとは身体が過剰な炎症たんぱく質を放出するという極端な免疫反応によるものである。(Covid-19や死に至る敗血症のような場合がそれである)
 
治療のタイミング、鍼をする場所、鍼刺激の強度の三要素は炎症の調節でまったく異なる結果を導くことを研究者たちは発見した。
 
予防的にマウスを治療すると、特にサイトカインストームの前が正しいのだが、治療していないマウスよりも炎症を減少させ、生存率は20パーセントから80パーセントまで改善された。「しかし、サイトカインストームがすでにピークに達した時、強い強度の鍼は炎症を悪化させる」とQiufu Maは警告する。この発見は、臨床において重要であると彼は記している。なぜなら、患者はしばしば悪化してから鍼治療を受けようとするからである。
 
「これは本当に特筆すべきことだ」とQiufu Maは結果を主張する。このタイプの鍼はサイトカインを全範囲で減少させた。興味深いことに、迷走神経ー副腎パスウェイは足の鍼でのみ興奮し、腹部刺激では興奮しない。Qiufu Maによると、鍼で刺激する場所が異なることで明確に異なる生物学的効果を導く神経ネットワークが身体にあることを示している。
 
サイトカインストームのマウスは低強度の鍼刺激の方が、高強度の鍼刺激よりも炎症を緩和した。高強度の刺激は炎症をむしろ悪化させた。 「この事実が示唆するのはサイトカインストームの治療では下肢に低強度の鍼刺激は高強度の鍼刺激よりも安全であり、刺激の強さが問題になる」とQiufu Maは言う。
 
 
 
敗血症やサイトカインストームほど重篤ではなくても、カゼの鍼治療は難しいです。治療のタイミング(六経や衛気営血などの段階)、鍼をする場所(イコール経穴の選択)、鍼刺激の強度が重要というのは、臨床家の実感と重なると思います。
 
 
2020年8月12日 Qiufu Ma先生の論文
Somatotopic Organization and Intensity Dependence in Driving Distinct NPY-Expressing Sympathetic Pathways by Electroacupuncture
Qiufu Ma et al.
Neuron
Published:August 12, 2020
 
 
 
 

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