五運六気とCOVID-19

 
 
 
2015年  
顧植山著『疫病鈎沈:運気論と疫病の発生法則』
疫病钩沉-从运气学说论疫病的发生规律(第2版)
顧植山著
中国医薬科技出版社
2015年06月
 
 
 
2020年の最大の驚きは、五運六気の専門家、安徽省の顧植山先生が2019年春に既に2020年の瘟疫の発生を予測していた事実を知ったことです。
 
 
2020年2月20日
『顧植山:五運六気による新型コロナウイルス肺炎の治療の解析』
 
 
以下、引用。
 
梅斯医学(MedSci)編集部の注釈:
これは後付けではありません。2019年春に顧植山は2019年冬至から2020年春節にかけて瘟疫が発生すると予測していました。
 
 
 
顧植山先生のCOVID19の運気論による予測と分析は、院士である王永炎先生が論文化されています。
 
 
2020年2月18日、王永炎先生の論文
「寒疫からの新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染肺炎の分析」
范逸品,王燕平,张华敏,王永炎
《中医杂志》
 
 
以下、引用。
 
2019年7月20日から11月にかけて、武漢は気温が平均よりも高く、武漢はこの40年で最悪の干ばつにおそわれた。2019年11月の武漢の特徴として平均降水量は2割と少なく、乾燥して気温が上下し、天気の変化が大きかった。
 
武漢の11月中旬から下旬の前は長時間、天気は乾燥して、突然に空気は冷たくなり、寒くなった。その後、12月1日に第1例の肺炎患者があらわれた。
 
12月上旬から中旬の天気は暖かく暖冬であるように思えたが、その後、気温が下降して、12月下旬に降雨が増えて、1月の気温は高く湿度が高かった。湿度が高く、寒く、天気は寒く湿気がつよかったので、これが寒湿疫の前提となった。
 
清代の医家、喩昌は『医門法律』で「秋に燥邪に傷つけられると冬に咳嗽になる」と述べている。乾咳は新型コロナウイルス肺炎の最初の徴候である。
 
この他に、中医学の五運六気では「三年化疫」の理論があり、3年前は2017年の丁酉(ひのと・とり)である。丁酉は陽明燥金司天であり、その年の冬の天気は乾燥が著しかった。3年後に伏邪、伏燥として影響し、上述の報道では大部分は痰が少なく乾燥した咳であり、咽喉の乾燥や咽痛などの症状は伏燥と符合している。
 
新型コロナウイルスの病位はまず肺であり、その次は体表の衛気と脾胃である(それで悪心・嘔吐・下痢となる)。これらの症状から、肺は乾燥して脾胃は湿邪があり、この疫毒は温燥と寒湿が同時に存在している。同時に多数の患者が無力感を訴え、これは毒邪が正気が損傷しているためであり、この他、毒邪が閉阻し、気機の昇降に障害があり、血瘀となる。新型コロナウイルス肺炎は寒熱が混じり、燥湿が錯雑し、虚実が同時に並行してみられる病理特性があり、毒・燥・湿・寒・虚・ 瘀 の特徴がある。
 
【伏燥の病因に注意すること】
 
燥邪は複雑であり、清代の医家である呉鞠通は秋燥の気は軽ければ燥であり、重ければ寒となり、化気すれば湿となり、復気すれば火となると論じている。
 
燥邪は六淫の一つであり、秋の季節だが温燥の天気が冬まで続くのは冬温である。現代の医家、羅謙甫は「冬温の本質は秋燥の余気である」と述べている。
 
 
 
上記の 王永炎先生の論文と 顧植山先生の五運六気による2020年瘟疫発生の予測を2020年2月に読んだ時は、あまりの論文のレベルの高さに驚きました。2020年2月はまだ、中国の武漢が都市封鎖されている時です。その時点でCOVID-19を伏燥による毒・燥・湿・寒・虚・ 瘀と弁証している王永炎先生と顧植山の分析には驚愕しました。
 
さらに中国の各省で発表される中医学診療ガイドラインのレベルの高さにも感心しました。それでこの2020年12月に顧植山著、『疫病鈎沈』を購入して読んだのですが、中身は2002年から2003年における中国のSARS大流行を五運六気から分析し、さらに中国歴代医家の五運六気理論を書いたものでした。
 
2002年は壬午(みずのえ・うま)で木運不及、少陰君火司天・陽明燥金在泉。2003年は癸未(みずのと・ひつじ)で 火運不及、太陰湿土司天・太陽寒水在泉でした。そして2003年のSARSの弁証論文も 顧植山先生は伏燥による毒・燥・湿・寒・虚・ 瘀と分析しているのです。
 
私は「2020年2月という早期の時点で五運六気に基づいた精密な分析を出版した」王永炎・ 顧植山の両先生に驚いていたのですが、実は2002年から2003年に同じ新型コロナウイルスであるSARSを徹底分析したものをほとんどそのまま使っていることに『疫病鈎沈』を読んで気づきました。しかも、 顧植山先生は五運六気理論から「疫病が来る」と毎年、予測し、その年の気象変化と疫病発生をつきあわせて徹底研究していることがわかりました。だから COVID-19 の2020年2月論文は、2003年のSARS論文を下敷きにした構成になっています。研究文献を出版し、毎年のように予測論文を書いて、さらに予測が当たったか外れたかを検証し続けて17年間、練りに練った内容であるから、精密で高度な弁証が2020年2月に出てくるわけです。初見ではなく、17年間の蓄積が背景にあるのです。
 
 
 

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