不妊症と鍼

2019年10月17日 インドネシア大学医学部
「電気鍼はIVF(体外受精)における成熟卵母細胞と妊娠率を高める」
Electroacupuncture Enhances Number of Mature Oocytes and Fertility Rates for In Vitro Fertilization.
Kusuma AC,et al.
Med Acupunct. 2019 Oct 1;31(5):289-297.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31624528
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6795274/


2018年9月から11月にかけてのインドネシア・ジャカルタの病院での臨床研究です。30~39歳の24人の女性を12人と12人の2グループにわけ、週2回のペースで鍼治療しました。

刺したツボは百会(GV20)、内分泌(耳穴:endcline)、関元(CV4)、中極(CV3)、子宮(奇穴:EX-CA1)、足三里(ST36)、承山(BL57)、三陰交(SP6)、太溪(KI3)です。中極(CV3)、関元(CV4)、子宮(奇穴)は30分間2Hzで通電しました。

以下、引用。

【結論】
電気鍼は成熟卵母細胞の成熟と妊娠率を高め、体外受精における顆粒膜細胞アポトーシスを減らした。

最小限のリスクのある治療法として鍼は深刻な副作用がなく、近年は広く体外受精補完療法として用いられている。

鍼は体外受精をおこなっている患者のインシュリン様成長因子(IGFー1)を増加させ、血管内皮増殖因子(VEGF)を増加させることが知られている。

これらの因子はろ胞性アポトーシスを減少させる役割があるサバイバル・ファクターである。

付け加えると、鍼はまた生殖器官の血流を増加させることが知られている。しかし、鍼の研究で顆粒膜細胞や成熟卵母細胞についての影響は限定されている。

2016年『針刺研究』での広州医科大学の研究では、120匹のマウスの関元(CV4)・中極(CV3)と三陰交(SP6)への電気鍼は インシュリン様成長因子(IGFー1)を増加させ、体外受精における妊娠率を改善しました。

Impacts on thepregnancy outcome in the mice of controlled ovarian hyperstimulation treated with acupuncture at different time points.
Zhongguo Zhen Jiu. 2016 Nov 12;36(11):1181-1185
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29231304
电针结合克罗米芬对多囊卵巢综合征大鼠子宫内膜胰岛素受体和胰岛素受体底物1蛋白表达及胚泡着床的影响
赖毛华 马红霞 宋兴华
《针刺研究》 2016年05期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTotal-XCYJ201605013.htm

2017年の血管内皮増殖因子(VEGF)に関する研究は、足三里(ST36)・三陰交(SP6)・太衝(LR3)でマウスの妊娠率を高め、子宮内膜での血管新生を促したという動物実験の証拠となりました。

Effect of Acupuncture on Endometrial Angiogenesis and Uterus Dendritic Cells in COH Rats during Peri-Implantation Period.
Evid Based Complement Alternat Med. 2017;2017:3647080.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28588637
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5446881/

鍼が生殖器の血流を増加させるというのはスウェーデンのエリザベス・シュテルナー・ヴィクトリン先生の研究です。

1996年「電気鍼治療を受けた不妊女性の子宮動脈における血流インピーダンスの減少」
Reduction of blood flow impedance in the uterine arteries of infertile women with electro-acupuncture.
Stener-Victorin E et al.
Hum Reprod. 1996 Jun;11(6):1314-7.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8671446

この論文のディスカッションは視床下部ー脳下垂体ー卵巣と自律神経機能の調節を鍼による不妊症治療の機序メカニズムとして提案しています。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする