両側性卵管閉塞と卵巣予備能低下の鍼灸治療

2019年9月
「両側性卵管閉塞と減少した卵巣予備能への電気鍼による妊娠の成功:症例報告」
Successful pregnancy in a woman with bilateral fallopian tube obstruction and diminished ovarian reserve treated with electroacupuncture: A case report.
Sun B,et al.
Medicine (Baltimore). 2019 Sep;98(38):e17160. doi: 10.1097/MD.0000000000017160.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31567955
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6756705/


中国中医科学院広安門医院による症例報告です。

39歳の女性は漢方薬(中医学)による治療を何度も受けていましたが妊娠しませんでした。両側性卵管閉塞、卵巣予備能低下と2015年に診断されました(2013年に結婚)。卵巣予備能の指標である抗ミューラー管ホルモン(AMH)は0.18 ng / mLとかなり低いです。

AMHは 卵子の周囲を取り巻く顆粒膜細胞から分泌され、加齢によって変化するマーカーです。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」でも増加します。患者は2016年3月に米国、2016年11月に日本、2017年3月に中国で体外受精(IVF)を受けましたが妊娠できませんでした。2018年6月4日から北京で電気鍼治療を受け始めました。

治療は、Aの配穴:
天枢、子宮、関元。得気感覚を得て天枢ー子宮で2Hz20分間通電する。

Bの配穴:
次髎、中髎で得気して2Hz20分間通電する。

1週間に3回、3カ月の治療を受け、電気鍼治療期間中は他の治療を受けませんでした。患者は2018年10月18日に妊娠8週目であることが確認され、2019年5月に出産しました。

卵管閉塞は中国語で输卵管阻塞であり、鍼灸治療のメタアナリシスやシステマティックレビューがあります。

2018年「卵管閉塞性不妊症への針灸治療のメタアナリシス」
针灸治疗输卵管阻塞性不孕症的Meta分析
胡玉姣 陈昊 夏有兵
《辽宁中医杂志》 2018年12期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-LNZY201812002.htm

2017年「卵管閉塞性不妊症の針灸治療のシステマティックレビュー」
针灸治疗输卵管阻塞性不孕症的系统评价
彭叶建
《浙江中医药大学》 2017年
http://cdmd.cnki.com.cn/Article/CDMD-10344-1017142890.htm

英語文献としては以下は全文無料でしっかりしています。女性の不妊症の3割は卵管病理によるものです。

2015年「卵管:解剖と女性不妊の原因の文献レビュー」
Fallopian tubes–literature review of anatomy and etiology in female infertility.
Briceag I et al. 
J Med Life. 2015 Apr-Jun;8(2):129-31.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25866566
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4392087/

卵管閉塞の原因として感染症としてクラミジア、淋菌、性器結核、子宮内膜症があります。

卵巣予備能低下は中国語で卵巢储备功能下降であり、多くの鍼灸研究があります。

2015年「卵巣予備能低下(DOR)の針灸治療の診療の特徴の分析」
针灸治疗卵巢储备功能下降诊疗特点分析
夏贞茹 王杨 佟喆 刘志顺
《世界中医药》 2015年09期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-SJZA201509032.htm
http://www.sjzyyzz.com/sjzyy/ch/reader/create_pdf.aspx…
(↑全文オープンアクセスPDFファイル)

※中医治疗卵巢储备功能下降(Diminished Ovarian Reverse,DOR)以针灸结合药物为主,本文仅分析总结针灸的诊疗特点。针灸治疗DOR主要以辨证选穴为主,肾虚是主要证型。体穴常用任脉关元、足太阴脾经三阴交、足太阳膀胱经肾俞,耳穴以内分泌、卵巢、子宫多见。
※常用穴位 在入选的 10篇文献中,出现的体穴包括关元、子宫、中极、气海、天枢、命门、卵巢、肾俞、肝俞、脾俞、膈俞、腰阳关、血海、手三里、足三里、三阴交、阴陵泉、丰隆、地机、太溪、太冲,所有 21个穴位共出现频次 77次,
其中较高的 10个穴位是:
下腹部任脉关元,
下肢部足太阴脾经三阴交 9次,
腰背部足太阳膀胱经肾俞 8次、肝俞 6次、脾俞,
下 腹 部 经 外 奇 穴 卵 巢 、子宫,
腰背部督脉命门,脐旁足阳明胃经天枢,
腰背部督脉腰阳关。
在耳穴贴压治疗DOR的 1篇文献中,选用的耳穴为肾、子宫、卵巢、内分泌、皮质下。

2015年に北京中医薬大学の研究は、まさに 中国中医科学院広安門医院の劉志順先生の卵巣予備能低下の 中髎、天枢、子宮、関元の電気鍼についての論文となっています。この論文は多くの示唆に富みます。電気鍼はFSHやFSH/LH比に影響を与えます。また、週3回、4週間の電気鍼では変化は出ませんが、週3回、8週間の電気鍼で変化が出ました。また、月経量を増やしました。

個人的意見ですが、鍼灸は「視床下部ー脳下垂体ー卵巣・軸」など視床下部を通して、間接的な影響を与えている傍証となると思います。

2015年「電気鍼による卵巣予備能の改善の治療効果観察」
电针改善卵巢储备功能疗效观察
夏贞茹 《北京中医药大学》 2015年
http://cdmd.cnki.com.cn/Article/CDMD-10026-1015390222.htm
※刘志顺主任治疗DOR的临床经验,选穴中髎、天枢、子宫、关元,每次治疗20分钟,前4周内每周治疗5次,以后每周3次,隔日一次,治疗8-12周。

2016年の北京中医薬大学のフェルナンド先生の修士論文も、鍼はFSHやFSH/LH比に影響を与えると一致しています。

2016年「卵巣予備能低下の針灸治療の臨床観察」
针灸治疗卵巢储备功能下降的临床观察
费尔南多 《北京中医药大学》 2016年
http://cdmd.cnki.com.cn/Article/CDMD-10026-1016069084.htm
※卵巢储备功能下降的患者30例,完成研究29例。对患者神庭、本神(双)、百会、中脘,关元、大赫(双)、天枢(双)、足三里(双)、三阴交(双)、太溪(双)、太冲(双)、次修(双),肾俞(双),十七椎进行针刺治疗,每周三次,周一、周五针刺头部、腹部、下肢,周三针刺腰骶部,平补平泻,每次留针25分钟。艾灸的穴位共10个,包括腹部的3个穴位,关元和子宫(双);下肢部的4个穴位,足三里(双)和三阴交(双);腰骶部的3个穴位,肾俞(双)和十七椎。每次针刺后进行艾灸。

2017年「卵巣予備能低下に対する鍼の月経調整による妊娠促進治療の前向き症例検討研究」
针刺调经促孕治疗卵巢储备功能下降的前瞻性病例序列研究
李晓彤 许焕芳 房繄恭 尚洁 杨会生 周雪琳 张明龙
《中国针灸》 2017年10期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZGZE201710014.htm
取穴:(1)百会、神庭、关元及双侧本神、肓俞、大赫、卵巢、足三里、三阴交、太溪、太冲穴;(2)双侧肾俞、次髎穴。两穴组交替使用,隔日1次,每周治疗3次,12次为一疗程,共治疗3个疗程。

百会(GV20)・神庭(GV24)・本神(GB13)が入っているのは、鍼灸による卵巣予備能低下の治療メカニズムが脳(視床下部)を介したものであることが明らかになってきたからだと推測します。

2017年「卵巣予備能低下(DOR)に対する月経調整による妊娠促進鍼法の影響と臨床の探索的研究」
调经促孕针刺法对卵巢储备功能下降影响的临床探索性研究
李晓彤
《中国中医科学院》 2017年
http://cdmd.cnki.com.cn/Article/CDMD-84502-1017234539.htm

※中医学には卵巣予備能低下という病名はなく、閉経、老化による月経停止、血枯、不妊などの疾病表現があるだけである。

※卵巣予備能低下は腎精虚が根本原因であり、衝脈任脈の失調が病機のキーポイントであり、情志失調が病気の発生と関連して下り、調経促孕針刺法は腎精を補い、衝脈任脈を調整し、情志をのびやかにして神志を安定させる。

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