抗うつ薬

2021年1月20日『サイエンスデイリー』
「抗うつ薬は腰痛と変形性関節症にほとんど効果が無い」
Antidepressants largely ineffective for back pain and osteoarthritis

以下、引用。

ほとんどの臨床ガイドラインは慢性腰痛、股関節痛、変形性ひざ関節症に抗うつ薬を推奨しているが、エビデンスが抗うつ薬使用を支持しているかは不明瞭であった。

結果はSNRIが3カ月間腰痛を減少させたがその効果は小さく、プラセボと比較して平均5.3ポイントであり、ほとんどの患者には臨床的に重要とは言えなかった。

変形性関節症ではSNRIは3カ月間で9.7ポイントとわずかにマシだが、意味ある効果であると結論は出来なかった。

三環系抗うつ薬は腰痛に全く効果が無いという低い確度のエビデンスが示している。

三環系抗うつ薬とSNRIは坐骨神経痛を減らすかも知れないが、エビデンスはいかなる確かな結論も導くことは出来なかった。

2021年1月20日『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル英国医師会雑誌』
「腰痛と変形性関節症治療における抗うつ薬の効果と安全性:システマティックレビューとメタアナリシス』
Efficacy and safety of antidepressants for the treatment of back pain and osteoarthritis: systematic review and meta-analysis
BMJ 2021; 372 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.m4825 (Published 20 January 2021)

『腰痛診療ガイドライン2012』で既に「2008年のコクラン・レビューではエビデンスが不十分とされた」と書かれているにも関わらず推奨され、『腰痛診療ガイドライン2019』では慢性腰痛に対する推奨薬としてSNRIセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬は推奨度2、エビデンスの強さAでした。

日本で、医学者やジャーナリストがこの情報を社会に伝える可能性は少ないと判断しています。

抗うつ薬のデュロキセチン(サインバルタ)は2016年に日本で「慢性腰痛症に伴う疼痛」の適応拡大が承認されました。サインバルタはアメリカのイーライ・リリー社が開発し、塩野義製薬が販売しているセロトニン・ノルアドレナリン選択再取り込み阻害薬(SNRI)で、2010年から抗うつ剤として日本で販売されています。

イーライ・リリー社は最初のSSRI抗うつ薬、プロザック(フルオキセチン)を開発した会社です。1987年にアメリカFDAが認可したプロザックは精神病治療の世界を変えました。

サインバルタは日本でうつ病の他に糖尿病性神経障害、線維筋痛症、慢性腰痛症、変形性関節症などの慢性痛に適応を認められています。

※参考論文
2008年「『デュロキセチン』と自殺企図:可能な関係」
Duloxetine and suicide attempts: a possible relation
Bilal A Salem et al.
Clin Pract Epidemiol Ment Health. 2008 Jun 11;4:18.
【ディスカッション】
いずれのケースにおいても、明らかに自殺傾向の無い患者がデュロキセチンの投薬や増加をすると自殺企図という緊急事態が起こることがわかっている。

2010年にイェール大学が発表した論文
「他者への暴力が報告される処方薬」
Prescription Drugs Associated with Reports of Violence Towards Others
Thomas J. Moore, et al.
PLoS ONE 5(12): e15337. doi:10.1371/journal.pone.0015337

原著論文には、慢性腰痛に適応のサインバルタも攻撃性や暴力を誘発する薬剤としてランクインしていました。

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