花粉症のランダム化比較試験とシステマティックレビュー

 
2021年5月11日
「鍼は花粉症を助けることができますか?」
 
 
以下、引用。
 
いくつかの高品質のランダム化比較試験が、鍼は花粉症の治療に効果があることを示している。
2020年に出版された一つのシステマティックレビューが、鍼は従来の治療に加えるとアレルギー性鼻炎の治療に最も効果的であるとしている。
 
 
2020年成都中医薬大学
「アレルギー性鼻炎への鍼:システマティックレビューとランダム化比較試験のベイジアン・メタアナリシス」
Acupuncture methods for allergic rhinitis: a systematic review and bayesian meta-analysis of randomized controlled trials
Zihan Yin et al.
Chinese Medicine volume 15, Article number: 109 (2020)
 
 
 
【アレルギー性鼻炎の鍼の研究史】
 
2007年、オーストラリアのトップ大学であるモナシュ大学のフランク・ティエン教授は『オーストラリア医学雑誌』で「抵抗性季節性鼻炎の鍼:ランダム化、シャム化比較試験」という論文を発表しました。その際は迎香(LI20)、印堂(奇穴)、風池(GB20)、合谷(LI4)、足三里(ST36)、三陰交(SP6)が用いられています。
 
 
2007年「抵抗性季節性鼻炎の鍼:ランダム化、シャム化比較試験」
Acupuncture for persistent allergic rhinitis: a randomised, sham-controlled trial
Charlie C L Xue, Frank C Thien et al.
Med J Aust 2007; 187 (6): 337-341.
 
 
2010年にフランク・ティエン教授は季節性アレルギー性鼻炎に対する耳穴指圧のシステマティックレビューも書いています。
 
 
 
2010年「アレルギー性鼻炎の耳穴指圧:システマティックレビュー」
Ear-acupressure for allergic rhinitis: a systematic review.
Zhang CS Thien F et al.
Clin Otolaryngol. 2010 Feb;35(1):6-12.
 
 
 
2015年にフランク・ティエン教授は季節性アレルギー性鼻炎のランダム化比較試験を発表しています。4週間の鍼治療はクシャミや鼻水、痒みなどの症状を軽減しました。
 
 
2015年「季節性アレルギー性鼻炎の鍼:ランダム化比較試験」
Acupuncture for seasonal allergic rhinitis: a randomized controlled trial.
Xue CC, Thien FC.et al.
Ann Allergy Asthma Immunol. 2015 Oct;115(4):317-324.e1.
doi: 10.1016/j.anai.2015.05.017. Epub 2015 Jun 11.
 
 
 
2013年からドイツのシャリテ大学病院のベノ・ブリンクハウス教授がアレルギー性鼻炎の鍼の研究を次々と発表していきます。シャリテ大学病院は西洋医学の父、ロベルト・コッホや病理学の父、ルドルフ・ヴィルヒョウ、パウル・エールリッヒや北里柴三郎が留学していたドイツでもっとも歴史ある病院です。近代西洋医学が生まれた病院です。
 
 
2013年「季節性アレルギー性鼻炎の患者の鍼:ランダム化比較試験」
Acupuncture in patients with seasonal allergic rhinitis: a randomized trial.
Brinkhaus B et al.
Ann Intern Med. 2013 Feb 19;158(4):225-34. doi: 10.7326/0003-4819-158-4-201302190-00002.
 
 
ブリンクハウス教授は2014年に『ドイツ鍼雑誌(DZA)』に「アレルギー性鼻炎患者への鍼:『証』によって分類した介入の分析研究」を発表しました。これはドイツの6つの大学診療所と32のプライベートクリニックでの422人の季節性アレルギー性鼻炎のランダム化比較試験の患者を「証」で分析したところ、風寒と風熱と肺気虚を兼ねるものが37%で、合谷(LI4)、曲池(LI11)、迎香(LI20)、印堂、風池(GB20)、太衝(LR3)、足三里(ST36)、列欠(LU7)、三陰交(SP6)が最も使われていたという分析です。
 
 
 
2014年 ベノ・ブリンクハウス
「アレルギー性鼻炎患者への鍼:『証』によって分類した介入の分析研究」
Akupunktur bei Patienten mit allergischer Rhinitis: Analyse der Studienintervention und Syndrommuster der randomisierten Multicenter Studie (ACUSAR)
Deutsche Zeitschrift für Akupunktur
J.Hummelsbergerb .Brinkhaus et al.
Deutsche Zeitschrift für Akupunktur Volume 57, Issue 3, 2014, Pages 6-11
 
 
 
2015年 ベノ・ブリンクハウス
「季節性アレルギー性鼻炎の自律神経機能と鍼:ランダム化比較試験による実験的パイロット研究」
Autonomic Function in Seasonal Allergic Rhinitis and Acupuncture – an Experimental Pilot Study within a Randomized Trial.
Ortiz M, Brinkhaus B et al.Forsch Komplementmed. 2015;22(2):85-92.
 
 
 
2018年 ベノ・ブリンクハウス
「季節性アレルギー性鼻炎患者における抗ヒスタミン剤使用へのインパクト:ランダム化比較試験の結果の2次分析」
Impact of acupuncture on antihistamine use in patients suffering seasonal allergic rhinitis: secondary analysis of results from a randomised controlled trial.
Adam D, Brinkhaus B et al.
Acupunct Med. 2018 Jun;36(3):139-145. doi: 10.1136/acupmed-2017-011382. Epub 2018 Feb 10.
 
※『アレルギー性鼻炎の臨床ガイドライン』は強く抗ヒスタミン剤を推奨しているが、鍼も非薬物療法に興味を持つ患者の選択枝の代替補完手段としてリストアップされている(2015年『AAO-HNSF臨床ガイドライン・アレルギー性鼻炎』)。その結果は臨床ガイドラインにおける鍼の選択枝の必要性を考慮する際に勇気づけられるものである。ただ、経済的観点からは鍼は季節性アレルギー性鼻炎のコスト・エフェクティブな治療とはいえないようである。
 
 
 
2013年にオーストラリア、グリフィス大学医学部のジョン・マクドナルド教授がアレルギー性鼻炎に対する鍼の効果のメカニズムに関する論文を書いています。
 
 
2013年
「アレルギー性鼻炎に関連した鍼の抗炎症効果:ナラティブ・レビューと提案モデル」
The Anti-Inflammatory Effects of Acupuncture and Their Relevance to Allergic Rhinitis: A Narrative Review and Proposed Model
John L. McDonald et al.
Evid Based Complement Alternat Med. 2013; 2013: 591796.
Published online 2013 Feb 14. doi: 10.1155/2013/591796
 
 
CGRP、サブスタンスP、TRPV1、Th1/Th2細胞のバランスなどが指摘されていました。2015年にオーストラリア、グリフィス大学医学部のジョン・マクドナルド教授は、2013年の理論モデルをアップデートしました。
 
 
 
2015年
「鍼治療の抗炎症作用および抗痛覚過敏作用におけるメディエーター、受容体、およびシグナル伝達経路」
Mediators, Receptors, and Signalling Pathways in the Anti-Inflammatory and Antihyperalgesic Effects of Acupuncture
John L. McDonald et al.
Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine
 
 
TRPV1とオピオイド受容体の関係が論じられています。
2016年にオーストラリア、グリフィス大学医学部のジョン・マクドナルド教授は2013年の理論モデルをアップデートしました。
 
 
2016年
「持続性アレルギー性鼻炎におけるハウスダストダニ特異的IgE、サブスタンスP、および症状に対する鍼治療の効果」
Effect of acupuncture on house dust mite specific IgE, substance P, and symptoms in persistent allergic rhinitis
John Leslie McDonald et al.
Ann Allergy Asthma Immunol. 2016 Jun;116(6):497-505. doi: 10.1016/j.anai.2016.04.002. Epub 2016 May 4.
 
 
TRPV1のダウンレギュレーションが示唆されています。
 
 
2015年2月にアメリカ耳鼻科および頭頸部外科アカデミーから『AAO-HNSF臨床ガイドライン・アレルギー性鼻炎』が出版され、「(5)臨床医は、非薬物療法に興味をもっているアレルギー性鼻炎患者に鍼を提案したり、鍼のできる臨床医を紹介する」と鍼が推奨されていました。
 
 
そして、2020年に中国、成都中医薬大学からシステマティックレビューが出版されたというのが一連の流れです。
 
 
2020年 成都中医薬大学
「アレルギー性鼻炎への鍼:システマティックレビューとランダム化比較試験のベイジアン・メタアナリシス」
Acupuncture methods for allergic rhinitis: a systematic review and bayesian meta-analysis of randomized controlled trials
Zihan Yin et al.
Chinese Medicine volume 15, Article number: 109 (2020)
 
 
中国では2015年に「エビデンス・ベースド鍼灸臨床ガイドライン:アレルギー性鼻炎」が出版されています。
 
 
循证针灸临床实践指南:过敏性鼻炎
中国针灸学会 著 中国中医药出版社2015-07-01
 
 
 
2021年には北京中医薬大学が英語で「アレルギー性鼻炎の鍼灸臨床ガイドライン」を出版しました。
 
 
Clinical Practice Guideline for Allergic Rhinitis Treatment with Acupuncture
Sheng Chen et al.
Chin J Integr Med. 2021 Feb;27(2):83-90.
 
 
 
 
 

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