RICEプロトコルからMEATプロトコルとしての鍼治療へ

 
2020年10月『ザ・スポーツ・ジャーナル』
「『RICEプロトコル』は神話です:レビューとレコメンデーション推奨事項」
Domenic Scialoia & Adam J. Swartzendruber
 
 
以下、引用。
 
1978年、ゲイブ・マーキン医師は『スポーツ医学ブック』の中で「RICE(安静、アイシング、圧迫、挙上)」という造語をして運動障害の治療法として提示した。RICEプロトコルは40年にわたってアカデミックカリキュラムや一般的認識に浸透した。
 
2013年にRICEプロトコルはゲイリー・レインルの本『アイシング:幻想の治療オプション』によって挑戦を受けた。
 
利用できるエビデンスに基づけば、もっともらしい唯一の結論とはRICE技術の使用が回復プロセスを促進するというのは明白な神話だということである。創案者であるマーキン博士が1978年からの彼の立場を公に撤回したときである2015年に、その有効性は明白に危険にさらされた。
 
 
 
私がアイシングなどRICE療法の有効性をEBМの立場から調査したのは2015年になります。
 
以下、引用。
 
局所のアイシング冷却は組織の回復に効果がないことが証明されており、組織治癒を遅らせ、追加ダメージを生じさせることがTsengらの研究で証明されている。
 
いくつかの研究は、アイシングが軟部組織損傷の疼痛マネージメントには効果があることを示唆している。
 
これらの研究の著者たちはアイシング療法が疼痛管理に有効であることを支持しているが、アイシングが腫れを減少させたり、回復プロセスを促進することを証明することはできなかった。
 
圧迫がアイシングと併用されることで急性筋骨格損傷を治療するという明確なエビデンスは存在しない。
 
挙上が効果的であるというハイレベルのエビデンスに基づく研究は存在しない。バイエルたちは、挙上は他のRICEプロトコルと同じく、患者はそれに耐えるけれども、それらが組織損傷の回復を促進するというエビデンスはまったく存在しないと結論している。
 
【より最適なアプローチ:(安静ではなく)アクティブ・リカバリー】
 
早期に運動することは、安静よりも回復プロセスで効果的であるという入手可能な情報は豊富に存在する。
 
МEAT(ムーブメント、エクササイズ、鎮痛、治療)はRICEプロトコルの代替手段として提案されており、RICEプロトコルの矛盾に対応している。
 
МEATプロトコルの最後の局面は治療である。これは個別の損傷を多様な治療アプローチを使うことから構成される広範囲なカテゴリーである。キャンベルらは、ある種のサプリメントや栄養補助食品は炎症を減少し、リハビリとしてはキネシオテープや鍼を使うことを提案している。
 
 
よく考えたら、腰痛に対して安静はエビデンスがなく、ムーブメントとエクササイズがガイドラインでも推奨されているわけです。鍼灸マッサージの提供は、患者さんにとって最適の選択肢だと感じています。
 
イギリスの『ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディスン』の足関節ねんざの臨床ガイドラインのコメント欄に、以下の文章が掲載されています。
 
 
2018年3月17日「足関節ねんざの診断・治療・予防:エビデンスに基づく臨床ガイドライン」
Diagnosis, treatment and prevention of ankle sprains: update of an evidence-based clinical guideline
March 07, 2018
 
以下、引用。
 
治療法としてのRICEと足首の捻挫の治療にRICEを使用しないというガイドラインでの推奨事項についてである。私たちの拡張された文献検索を通じて、報告された有効性に基づいてRICEをそれ自体で治療法としてサポートするには不十分なエビデンスが見つかった。日常の臨床診療、特に急性期の設定で頻繁に使用されているにもかかわらず、個々の側面またはRICEのいずれの有益な効果も見つからなかった。
 
 
スポーツ医学を学ぶ方は『英国スポーツ医学雑誌』の臨床ガイドラインがRICEプロトコルを足関節ねんざに推奨していないという事実を知っていたほうが良いと思います。
 

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