ME/CFS(慢性疲労症候群)と頸性神経筋症候群と頸原性頭痛

以下、引用。
 
筋痛性脳脊髄炎(ME)/慢性疲労症候群(CFS)は原因・病態が未解明で、有効な治療法が確立されていない。東京脳神経センター(理事長=松井孝嘉氏)と松井病院(香川県)の研究グループは、ME/CFS患者に対する頸部への局所物理療法の有効性を検討。治療効果に影響する因子の解析から、ME/CFSの病態には、頸部筋群の中を通っている自律神経(副交感神経)が深く関わっていると発表した。
 
研究グループは、ME/CFSの病態解明と治療法の確立を目指し臨床研究を続ける中で、ME/CFS患者の多くが変形性頸椎症、椎間板ヘルニア、頸椎捻挫(むち打ち症)などの頸部疾患や頸部の凝りを合併していることに注目。2012年に「頸性神経筋症候群」という疾患概念を提唱した(Neurol Med Chir 2012; 52: 75-80)。難治性むち打ち症については、頸部への局所的物理療法(低周波電気刺激療法+遠赤外線照射)により、全身の不定症状が80%以上回復することを報告している(関連記事「難治性むち打ち症の原因療法確立へ突破口」)。
 
 
 
2012年「頸性神経筋症候群:頸部の筋の異常で起こる新しい病気群の発掘」
Cervical Neuro-Muscular Syndrome: Discovery of a New Disease Group Caused by Abnormalities in the Cervical Muscles
松井考嘉(まつい・たかよし)
Neurologia medico-chirurgica Vol. 52 (2012) No. 2 P 75-80
 
 
 
むちうち損傷や頭痛、肩こり、めまいの臨床研究をしていると、触れずにはいられないのが頸原性頭痛です。頸部が原因で頭痛となります。もともとは2003年の国際頭痛分類にも分類されていましたが、緊張型頭痛の概念と混同されがちでした。
 
しかし、例えば交通事故のむちうち損傷など外傷が原因で頭痛が起こるのは緊張型頭痛の概念にはあてはまりません。1940年代は外傷後頭痛と呼ばれていました。
 
1950年代から西洋医学では大後頭神経三叉神経症候群という病気の存在が知られていました。これは後頭部痛と一緒に三叉神経第1枝の前額部から眼のあたりが痛むという症状が特徴です。これは後頭部の皮膚感覚を支配する大後頭神経と顔面の皮膚感覚を支配する三叉神経が延髄の核において収束することから起こると考えられ、日本頭痛学会などでも、この目の痛みが頸椎など後頭部・後頚部を治療することで改善されるという症例が報告されはじめました。
 
 
エポックメーキングなのは、1992年のオーストラリア、ニューキャッスル大学ニコライ・ボクダク教授の「頚原性頭痛の解剖学的基礎(The anatomical basis for cervicogenic headache)」という論文です。ニコライ・ボクダク教授は、むちうち損傷の研究から頚原性頭痛の概念を研究しています。
 
 
1992年「頚原性頭痛の解剖学的基礎 」
The anatomical basis for cervicogenic headache.
Bogduk N. J Manipulative Physiol Ther. 1992 Jan;15(1):67-70.
 
 
ニコライ・ボクダク教授が2009年の『ランセット神経学』に発表した「頚原性頭痛:臨床診断、侵襲検査、治療のエビデンスの評価」という論文は、もっとも解剖学と生理学の基礎に基づいた総説論文になっています。特に頚神経と三叉神経のリンクの図や関連痛パターンの図などは理解に役に立ちます。
 
 
2009年『ランセット神経学』
「頚原性頭痛:臨床診断、侵襲検査、治療のエビデンスの評価」
Cervicogenic headache: an assessment of the evidence on clinical diagnosis, invasive tests, and treatment.
Bogduk N1, Govind J.
Lancet Neurol. 2009 Oct;8(10):959-68.
 
 
以下、引用。
 
頚原性頭痛に薬物療法は効果的でない。
 
 
 
 
2007年にクロアチアのグルジンという医師が書いた『頸原性頭痛:疾病原因、特徴、診断、治療』という論文の定義は優れています。
 
 
以下、引用。
 
頸原性頭痛という言葉は、頭部周辺で上位頸椎障害のために起こる頭痛を意味している。臨床研究によれば、慢性頭痛の患者の15-20パーセントは頸部が原因の頭痛である。頸原性頭痛はC1-C3の頸神経、C0-C3の椎間関節、C2-C3の椎間板、C2-C3の筋肉、靱帯、骨構造、硬膜、椎骨動脈の痛み病巣から引き起こされる障害である。
神経解剖学と神経生理学の研究は、頸椎のC1-C3からの侵害受容求心性神経と三叉神経からの侵害受容性求心性神経が三叉神経核で収束することを証明した。
 
 
 
 
『頸原性頭痛:疾病原因、特徴、診断、治療』
Cervicogenic headache: etiopathogenesis, characteristics, diagnosis, differential diagnosis and therapy
 
 
2012年に脳外科医の松井考嘉先生が「頚性神経筋症候群」の論文を発表されています。松井考嘉先生は、後頚部の筋肉の問題が頭痛、めまい、うつ、慢性疲労を引き起こすことを提唱しました。これは鍼灸師が昔から経験的にみている病態です。
 
 
 
2021年「ME / CFS患者の頸部筋肉における自律神経系の関与の可能性」
Possible involvement of the autonomic nervous system in cervical muscles of patients with myalgic encephalomyelitis / chronic fatigue syndrome (ME/CFS)
Takayoshi Matsui et al. BMC Musculoskelet Disord. 2021.
 
 
 
 

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