脾胃湿熱証の歴史

2017年『中医雑誌』
「脾胃湿熱証の中医学診療専門家共通意見(2017)」
脾胃湿热证中医诊疗专家共识意见(2017)
张声生 黄恒青 方文怡 李世琪
《中医杂志》 2017年11期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZZYZ201711022.htm
https://www.powertcm.com/pdf/20180522134755
http://www.youcao.cc/baike/pianfang/77869.html


WHO-ICD11に中医学の臓腑弁証が入ったことをきっかけに臓腑弁証の歴史を調べると驚愕の連続です。

中国伝統医学の古典における歴史を調べると、脾胃湿熱証という証に関する記述は存在しません。わずかに金元四大家、朱丹溪の『丹溪治法心要』卷二、 痢に「若脾胃湿热之毒」と初出していますが、これは証ではなく文章中の表現です。


《丹溪治法心要》痢(第二十四)
「若脾胃湿热之毒,熏蒸清道而上,以致胃口闭塞,遂成禁口证。」
http://www.zysj.com.cn/liluns…/danxizhifaxinyao/714-7-6.html

歴史を調べると、なんと1966年に福建省で肝炎の分析で最初に使われた言葉のようです。

1966年「急性の黄疸の無い伝染性肝炎21例の臨床分析」
急性无黄疸型传染性肝炎21例临床分析
吕汉光 刘家骅
《福建中医药》 1966年02期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-FJZY196602009.htm

そして、1987年に趙金鐸先生の編著『中医症候鑑別学』で脾胃湿熱と証として提出され、1992年に福建省が「脾胃湿熱証」の診断基準を提出し、1993年に中国の国家衛生部が「湿熱蘊脾証」の診断基準を発布し、2002年に広州中医薬大学が慢性表層性胃炎の脾胃湿熱証としての診断基準をつくり、2002年に『中薬新薬臨床指導原則(試行)』で「湿熱蘊脾証」診断基準が出版されたという歴史があります。だから西洋医学の肝炎や胃炎の概念そっくりなのです。

 

2017年の「脾胃湿熱証の中医学診療専門家共通意見(2017)」の論文では、脾胃湿熱を
「軽度」「中度」「重度」の3段階に分類しています。これは重要な考え方だと思います。

WHO-ICD11(https://icd.who.int/dev11/l-m/en)では、脾胃湿熱パターンが存在します。

このパターンは腹部脹滿、悪心、嘔吐、食欲不振、四肢の重さ、ゆるく粘滞性の便、裏急後重、尿色は濃く、黄疸、汗をかいても解熱しない微熱、のどの渇き、紅舌、黄苔または膩苔、滑脈または数脈で特徴づけられる。

臓腑弁証の脾胃湿熱証の概念は、西洋医学の肝炎や慢性胃炎の分析に使えると思います。

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