心身症としての緊張型頭痛

心身症診断・治療ガイドライン〈2006〉』では、鍼灸の臨床でひんぱんに出会う疾患がいかに心身に関連しているかを学ぶことができます。

緊張型頭痛の中には一定程度のうつ病も混じっています。これは希死念慮などで鑑別し、専門医への受診を促します。『心身症診断・治療ガイドライン〈2006〉』では「ストレスとなる大きな出来事(失業、家族の死、破産、結婚)」と「日常のストレス」を心身症型の緊張型頭痛の診断フローチャートに入れています。英語表現の「I have a headache」です。

コクラン・システマティックレビューでも、鍼は緊張型頭痛について中程度のエビデンスがあると結論されています。

2016年『緊張型頭痛に対する鍼治療』
結論:利用可能なエビデンスにより、6回以上の治療セッションで構成される鍼治療コースは高頻度の緊張型頭痛患者に対し有益な治療選択肢になりうることが示されている。
https://www.cochrane.org/…/SYMPT_jin-zhang-xing-tou-tong-ni…
(日本語)

2008年「人間の精神と頭痛:緊張型頭痛」
Human Psyche and Headache: Tension-Type Headache
Paola Torelli et al. Neurol Sci. 2008 May.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18545906/
※As regards behaviour and personality traits, subjects with TTH had significantly higher scores than healthy controls on measures of automatic thoughts and alexithymia, and lower scores on assertiveness

緊張型頭痛(TTH)では、心理学的特徴として自動思考とアレキシサイミアが顕著にハイスコアで、アサーティブネスが低いスコアでした。自動思考は自動化された反応であり、認知行動療法はこの自動思考を検討することを目標にします。うつ病などでは自動ネガティブ思考が見られます。アレキシサイミアは自らの感情を認知しにくいことで心身症の特徴でもあります。アサーティブネスは自己表現スキルのことです。

緊張型頭痛は東洋医学の気鬱の概念がよく当てはまります。緊張型頭痛に関しては、局所の阿是穴は効果的ですし、肝鬱気滞とみなして肝経や胆経から取穴するのも効果があります。

心身医学の領域では、認知行動療法や漸進的リラクゼーションと呼ばれるジェイコブソン式リラクゼーションが使われます。

漸進的リラクゼーションは1929年にエドムンド・ジェイコブソンが開発したリラクゼーションです。

実感としては、緊張型頭痛には局所の阿是穴への鍼が最も効果的です。漸進的リラクゼーションは長期的にフィジカルな効果もあり、自己コントロールの感覚をつくれると思います。

認知行動療法は、コストは高いですが効果が出るまでに時間がかかりますし、臨床的ではない印象があります。心が原因の心身症的な緊張型頭痛こそフィジカルに鍼で痛みを取り、フィジカルな変化が起これば自動的にストレス・リダクションとなります。精神医学の歴史を調べると、フロイトもライヒもマッサージを使っており、フィジカルな変化によって心身を癒していました。現在の認知行動療法やカウンセリングはEBMの視点から調査すると「ほとんどプラセボ」であり、鍼灸やマッサージの方がはるかに臨床的だと感じています。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする