スウェーデンとインドの集団免疫の謎

 
2021年7月12日『ロイター通信』
「スウェーデンはデルタ変異株の心配が増しているにも関わらず、パンデミック規制を緩めている」
 
以下、引用。
いくつかの制限はすでに緩和されており、スウェーデンは7月15日に電車などの長距離輸送の乗客数と店舗で許可される買い物客の数の制限を撤廃するように設定されている。
徐々に、われわれは社会から規制を撤廃する方向に動いている。
 
 
 
世界中からロシアン・ルーレットとか狂気の沙汰と非難されてきたのが、「ロックダウンしない」「大規模集会の開催やレストランの人数制限以上の規制をしない」、ゆるゆるのスウェーデンの対コロナ戦略です。
 
スウェーデンの名門、ルンド大学とカロリンスカ研究所は2021年7月7日、以下の論文を発表しました。
 
 
2021年7月7日『MedRixiv』
「ストックホルムがSARS-CoV-2のいくつかの変異株に対して、限られた制限によって集団免疫に達したという兆候」
Indications that Stockholm has reached herd immunity, given limited restrictions, against several variants of SARS-CoV-2Marcus Carlsson, Cecilia Söderberg-Nauclér
 
 
以下、引用。
このモデルが正しければ、(スウェーデンの)ストックホルムは限られた制限の下で実質的に集団免疫に達し、推奨事項と行動が大幅に変更されない限り、これ以上の大発生アウトブレイクは予想されない。
 
 
2021年8月2日『ポリティファクト』
「スウェーデンは低いワクチン接種率、緩んだロックダウン・ルール、低いマスク遵守にも関わらず、7月のCOVID死亡はほとんどなかった」
Sweden had few COVID deaths in July, despite low vaccination rates, relaxed lockdown rules and low mask compliance.
 
 
ファクト・チェックのサイトを調べても、本当のようです。ただし、ここに至るまでスウェーデンの対コロナ戦略は、ものすごい数の高齢者の死亡という犠牲を払いました。スウェーデンの国王もその戦略を批判し、科学雑誌『ネーチャー』やスウェーデンの科学者・医学者も批判の大合唱でした。これはスウェーデン・バイキングのアッテスチューパと揶揄される価値観であり、日本人には絶対に真似できない異質な思想ですし、日本に応用するのは非現実的です。
 
 
しかも今後、どのような変異株が発生し、どのぐらいの期間、集団免疫が維持されるかはすでに議論となっています。
 
 
2021年7月14日『ニュース・メディカル・ライフサイエンス』
「集団免疫はスウェーデンのCOVID19のコントロールによるものではないと研究者は述べる」
“Herd immunity” not responsible for Sweden’s control of COVID-19, say researchers
 
 
スウェーデンは数理モデルで想定されているよりもはるかに低い抗体の率で集団免疫を達成したかのように見えるため、それは集団免疫ではないという指摘です。
 
 
2021年7月20日 
「スウェーデンは全ての年齢グループでCovide19の抗体を増やしている」
Sweden reports increasing antibodies to COVID-19 in all age groups
 
分析によると、65〜95歳のグループの85%が抗体を持っていたのに対し、20〜64歳のグループでは52%、0〜19歳のグループでは28%だった。平均して、グループ全体で52パーセントの抗体があった。
 
スウェーデン公衆衛生当局の発表です。つまり、スウェーデンの現状に関しても激論があり、真実が判明するのはかなり先の話だと思います。
 
 
また、インドは世界でもっとも過酷で問題のあるロックダウンで、ものすごい数の犠牲者を出し、しかもデルタ変異株に襲われました。
 
 
2021年7月26日ドイツ公営放送『ドイチェ・ヴェレ(ドイツの波)』
「インド:集団免疫はどれくらい信頼できるのか」
India: How reliable are herd immunity claims?
 
 
以下、引用。
研究に参加した成人のうち67.6%が血清陽性であり、成人の62%以上がワクチン未接種だった。
 
この研究はまた、7,252人の医療従事者を調査し、85%が抗体を持っており、10人に1人がワクチン接種を受けていないことを発見した。
 
それにもかかわらず、調査はインドの14億人のうち約4億人が抗体を欠いていることを示した。
 
 
ハードなロックダウンをしたにも関わらず、デルタ変異株の猛威で集団免疫に達したかのように見えるインドと、世界中から非難されたゆるゆる制限ルールと最小限のワクチンで、一応の集団免疫を獲得したかのように見えるスウェーデンの現状と、これからの推移は重要だと思います。
 
これは、政治的な意見をいったん横に置いて、冷静に眺める必要を感じます。時間の経過とともにいずれ真実は判明します。
 
 
2021年8月15日の大きなニュースは、イギリス・オックスフォード大学のワクチン担当の科学者であるアンドリュー・ポラード教授が「ワクチンによる集団免疫の獲得は神話である」と述べたことでした。
 
イスラエル、イギリス、アメリカはワクチン2回接種をワープ・スピードで達成したことでロックダウンなど規制を緩め、ようやくコロナ禍の出口が見えてきたところで、デルタ変異株によって再びの激増に見舞われました。
 
 
冷静に情報を整理する必要性を感じました。
 
世界中の国家もサイエンティストも、はじめての事態で同じように一長一短の間違いを犯したのは明らかなようです。おそらく完全な正解など存在せず、試行錯誤で小さなエラーを修正しながら相対的な、次善の策を運良く採用できれば御の字という気がします。
 
 
 

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