アスリート女性の三主徴

 
2019年
「女性アスリートに求められるコンディショニング: 女性医学的問題と鍼灸治療の事例」
室伏 由佳
『全日本鍼灸学会雑誌』2019 年 69 巻 3 号 p. 166-175
 
 
摂食障害を研究していると、繰り返し出てくるのが「女性アスリートの三主徴」という言葉です。「摂食障害」「月経不順」「骨粗鬆症」の三徴候です。特に無月経は結構、深刻な問題のようです。
 
 
 
2011年
「鍼はトップアスリートにおける無月経の改善に貢献したかもしれない」
Acupuncture might have contributed to improving amenorrhoea in a top athlete
Nozomi Donoyama et al.
Acupunct Med. 2011 Dec;29(4):304-6.
 
 
女性の思春期の発達です。
 
 
2015年「女性の思春期の発達の異常」
Abnormalities of Female Pubertal Development
Mamie McLean, M.D
Update: August 19, 2015.
 
 
当然、骨と筋肉の成長には成長ホルモンが不可欠なのですが、女性ホルモンであるエストロゲンも骨の成長と関連します。女性は卵巣からのエストロゲン分泌により、骨端線が閉鎖されます。
 
女性アスリートは激しい運動と食事制限のため、思春期(月経)の開始が遅れることが多く、高身長となる傾向があります。卵巣からエストロゲンが出なくなると骨がもろくなり、更年期に骨粗鬆症になりやすいです。女性アスリートでは疲労骨折がおこりやすくなります。非常に興味深いのは以下の記述です。
 
 
以下、2015年論文より引用。
 
【医原性の性的早熟】
思春期前の子どもが外因としてエストロゲンにさらされると、思春期早発症(8歳未満の月経)となる。
 
エストロゲンが含まれる製品は、自然サプリメントや整髪料、整髪クリームのような商品である。
 
エストロゲンを含む肉の摂取も物議をかもしているが、それが思春期早発の原因になることはめったにない。
 
 
また、科学的には否定されていますが、牛乳に含まれるインシュリン様成長因子(IGFー1)も議論を呼んでいます。アメリカでは乳牛に牛成長ホルモンが与えられ、乳中にインシュリン様成長因子が含まれています。
 
IGFー1は加齢を促進します。血中IGF-1の量は乳癌の発生率と関連しており、耳鍼のポール・ノジェ博士の子息であるラファエル・ノジェ先生は、乳製品大国フランスで『女性を脅かすミルク(Ce lait qui menace les femmes)』という文献を出版し、乳製品摂取と乳がんの関係について警告されています。
 

 
 
2019年に出版された思春期遅発症の論文は面白かったです。
 
 
2019年『内分泌レビュー』
「思春期遅発症—表現型の多様性、分子遺伝学的メカニズム、および最近の発見 」
Delayed Puberty—Phenotypic Diversity, Molecular Genetic Mechanisms, and Recent Discoveries
Sasha R Howard, Leo Dunkel
Endocrine Reviews, Volume 40, Issue 5, October 2019, Pages 1285–1317,
 
 
以下、引用。
 
脂肪量と思春期のタイミングとの関係は、少なくとも部分的には白色脂肪組織から生成される体重の重要な調節因子である代謝ホルモンであるレプチンの許容作用によって媒介される。血清レプチン濃度は思春期初期の女性で上昇し、正常な生殖に必要である。」
 
 
胃で分泌されて食欲を増すグレリンも成長と関連しています。グレリンは成長ホルモン放出ペプチドを語源にしています。レプチンは神経性やせ症とも関連しています。女性アスリート三徴は、まさに絡み合っているわけです。
 
 
 

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